【漫画】下手なマンガの連載が続く秘密 新人アシスタントが見た“真実”に戦慄！

■答え合わせが楽しい！　予想を裏切るストーリー

　主人公の朝清水は、絵もストーリーも企画もキャラも驚くほど稚拙で、読者アンケートは毎回最下位の漫画家。それなのに、なぜか単行本が100巻近くも発行されるほど連載が続いています。アシスタントに応募した遠山トオ子は、初めて会った朝清水を「成功者には見えない」と思うほど。そしてトオ子は、朝清水の“信者”の存在を知ります……。

　断罪社さん（@B6h6ad6d_cat）が、創作マンガ『史上最大の信者』をTwitterで公開しました。タイトルの“信者”には“ファン”とフリガナが付けられています。また、“断罪社”はTwitterやpixivでの活動で用いられているペンネームで、マンガ雑誌に投稿する際の名前は“金枝上圭佑”さんです。今回の作品に、読者からは「すごいなあ。よく考え付くものだ」「そういう意味だったとは」「面白かった！！　これぞマンガ」などの感想が寄せられています。

　作者の断罪社さんに、お話を聞きました。

ーー断罪社さんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

　子供の頃に、兄が描いてるのを真似して描き始めました。最初は好きなマンガのまんまパクリの落書きをして満足してましたが、徐々にオリジナルも描くようになりました。自分の描いたマンガを読んだ兄や友人が笑ってくれるのがうれしくて、下手なりに描いてましたね。

ーー『史上最大の信者』のお話は、どのようにして生まれましたか？

　もともとはギャグマンガを週刊誌やTwitterに投稿していたのですが、何か急に「俺はギャグ以外も描けるぞ」って気分になって、描いてやろうと思い制作し始めました。幼少の頃から星新一や小松左京のショートショートを好んで読んでおり、今作のようなTVドラマの「世にも奇妙な物語」風のストーリーができあがりました。主人公たちが権力を超えたどうにもならない強大な力に悩み翻弄される、SF的な不条理感が出せていたなら良かったと思います。

ーー作品に対する反応で、特に印象に残った読者の声があれば教えて下さい。

「“世にも奇妙な物語”を思い出した」「星新一のようだ」と皆さんが感想をくれて、自分の描きたかったことを描けたんだなと満足です。そのほか「この“信者”を倒してほしい」と言ってる人がひとりいたのは興味深かったです。自分のなかでこの“信者”は、人の力ではどうすることもできない不条理が形になったものなので、“倒す”という発想自体がなかったです。倒せたら確かにハッピーエンドかもしれないですけど、それだと少年マンガ的SFアクションになってしまいますね。俺には描くの難しいかも。

代理人を通じて法外な原稿料で漫画家を養う（断罪社さん提供）

ーー今回の作品は、漫画家の“ファン”を題材にしたものでした。断罪社さんにとっては、“ファン”はどのような存在で、ご自身は“ファン”との関係をどのようなものととらえていますか？

　ありがたいことに、こんなマイナー絵描きの自分にも応援してくれてるファンのようなフォロワーさんたちがいます。その方たちからの、新しく公開したマンガへの感想や、マンガ賞を受賞した時の祝いの声、気分が沈んでる時の激励の言葉がありがたく、自分のメンタルの救世主のような存在です。

　個人的な考えとしては、ファンとの関係は、お互いに入れ込みすぎないのが一番じゃないでしょうか。ファンが過激派と化して、“界隈”に問題を起こす例を見たことがありますし、また逆に作者もファンの反応のみを糧にして頼りきっては、潰れてしまうような気がします。自分も相手もエンジョイできる適切な距離感が大事かと。

　まあ、今回のマンガに登場するファンは、厄介の極北のような存在でしたが、幸い自分の身近にはそのような人はいません。もしいたら、作中の朝清水のように破滅してしまいます。

ーー今後、Twitterで発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか？

　現在は、週刊マンガ雑誌での掲載を狙って作品を制作をしてる最中です。なので、Twitterで公開する作品は、基本的には選考から落ちたものやボツのものなのですよね。でも、今回ある雑誌の賞から外れて仕方なくTwitterで公開した『史上最大の信者』が、思っていたよりも反応をもらえて驚きました。

　今後も落ちてしまった作品などの供養の場としてTwitterを使うことになるかと思いますが、できたらゆくゆくは、受賞や掲載などの喜ばしいニュースを皆さんに報告したり、その作品を掲載して読んでいただきたいですね。

（マグミクス編集部）