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【金ロー】いま見逃せない『風の谷のナウシカ』の巨神兵。『エヴァ』を読み解くカギに?

マグミクス / 2020年12月24日 19時10分

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■宮崎アニメ最強ヒロインが聖夜に降臨

 アニメ史上最強の美少女ヒロインが、クリスマスの夜に地上波テレビに降臨します。2020年12月25日(金)の「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)は、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』(1984年)がオンエアされます。21時~23時24分のノーカット放映となります。

 宮崎監督は、1978年にTVアニメシリーズ『未来少年コナン』(NHK総合)で監督デビューし、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)で劇場監督デビューを果たしました。『未来少年コナン』は米国の児童文学、『ルパン三世』はモンキー・パンチ氏の青年コミックと、それぞれ原作がありました。『風の谷のナウシカ』は宮崎監督自身が1982年~1994年に「アニメージュ」(徳間書店)で連載した同名コミックが原作となっています。宮崎監督にとって、初のオリジナル長編アニメでした。

 母性愛を感じさせる美少女ヒロインの活躍、爽快感あふれる飛行シーン、自然と文明社会との対立、作曲家・久石譲氏とのタッグ結成……。宮崎駿ワールドの完成形となった作品です。日本テレビ系での放送は、すでに19回目。ストーリーはすでに知っていても、歌舞伎やオペラのような感覚で名場面の数々を反芻する楽しみがあります。

■清純な少女・ナウシカと対照的な大人の女性・クシャナ

 SFアニメの世界では今やすっかり定番となっていますが、ナウシカは「闘う美少女ヒロイン」の先駆的存在です。「火の七日間」と呼ばれる最終戦争後の荒廃した世界を舞台に、風の谷の族長の娘・ナウシカ(CV:島本須美)は、圧倒的な軍事力で自然も人心をも押さえ込もうとする権力者に勇敢に立ち向かいます。

 腐海で暮らす巨大生物・王蟲に襲われる旅人・ユパ(CV:納谷悟朗)を救うシーンから、物語は始まります。グライダーを思わせる飛行機「メーヴェ」に乗ったナウシカが、暴走する王蟲を鎮めてみせる鮮やかなアクションシーンです。軽やかに空を舞うナウシカとの対比で、王蟲の巨大さもよく分かります。

 ユパが連れていた野生のキツネリスに、ナウシカは「テト」と名付けます。人間には本来なつくことのないキツネリスですが、テトはナウシカとすっかり仲良くなります。誰もが恐れる王蟲とさえ、ナウシカは心の声で対話しようとします。虫や動物にとても優しいナウシカですが、風の谷を治める父親に刃を向ける軍事国家・トルメキアの兵士には容赦しません。杖を武器代わりに、クロトワ(CV:家弓家長)の部下たちを撲殺してしまいます。

 冷静さを取り戻したナウシカは、自分のなかに潜む凶暴性に恐れおののきます。自分の感情や力をうまく制御できないことに悩みます。それでもナウシカは族長の継承者として、風の谷を守るためにシビアな状況に向き合わざるをえません。一方、武装兵団を率いるトルメキア王国の皇女・クシャナ(CV:榊原良子)はとてもクールな現実主義者で、ナウシカとは対照的なキャラクターとなっています。

■原作にはない巨神兵と王蟲との対決シーン

ナウシカと対象的なキャラクターとして描かれるクシャナは、作中で巨神兵の力を手に入れようとする

 過去に王蟲に襲われ、クシャナは片腕を失っています。旧文明の呪われた遺物である「巨神兵」を蘇らせることが、クシャナの目的でした。かつて人類を滅亡にまで追い込んだ巨神兵の火力を使って、王蟲たちの住みかである腐海をすべて焼き払おうと考えていたのです。クシャナの怒りが、より大きな怒りを呼び寄せます。王蟲たちの大群が迫り、風の谷は風前の灯でした。復活して間もないドロドロ状態の巨神兵が、王蟲と対峙することになります。王蟲の大群と巨神兵との対決は、原作コミックにはないアニメ版だけの見せ場となっています。

 アニメ版では巨神兵登場シーンは非常に短いのですが、このシーンの原画を担当したのが若き日の庵野秀明監督だったことは有名です。大阪から上京してきた無名時代の庵野青年に、宮崎監督はクライマックスシーンを託したのです。まさに天才は天才を知る。宮崎監督の慧眼ぶりに驚きを覚えます。

 比類なき強さと底なしの弱さを同居させた巨神兵の異様さに、思わず目を惹きつけられます。強烈なインパクトを放つ巨神兵の登場シーンを改めて見ることで、1995年からTV放送が始まった庵野監督のブレイク作『新世紀エヴァンゲリオン』 (テレビ東京系)を連想した人も少なくないはずです。

 生体兵器である巨神兵と、汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンは、とてもよく似ています。宮崎監督の『ナウシカ』で新人アニメーターだった庵野監督が巨神兵シーンを担当したことが、『エヴァ』誕生の胚芽となったといっても過言ではないでしょう。

■『ナウシカ』続編の可能性は?

 アニメ版『ナウシカ』は、ナウシカが捨て身で風の谷を守ろうとするシーンで終わりを迎えますが、原作コミックはその後も物語が続きます。全7巻ある原作コミックの第2巻の中盤までに相当する内容しか、アニメ版は描いていません。その後のナウシカは、クシャナ、クロトワたちとともに、トルメキアともうひとつの大国である土鬼(ドルク)諸侯連合との大戦に巻き込まれていきます。さらには、新しい仲間との出会いと愛するものとの別れ、この世ではない異界への旅立ち、人間の心の闇、世界が生まれ変わるまでが描かれることになります。

 原作コミック『ナウシカ』を全巻読むと、庵野監督は巨神兵のビジュアルだけでなく、『ナウシカ』の世界観や物語性にも強く影響を受けていることがうかがえます。それもあって、もし『ナウシカ』の続編が作られるとすれば、庵野監督が手がけることになるのではないか……ファンの間では、そんな声も囁かれています。

 はたしてアニメ版『ナウシカ』の続編は、実現するのでしょうか。もし、実現するならば、壮大なスケールの作品になることは間違いありません。また、宮崎監督の『ナウシカ』と庵野監督の『エヴァ』は、いろんな面でリンクしています。宮崎監督の意向が絶対であるのはもちろんですが、2021年1月23日(土)に公開される庵野監督の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』がどのような結末を迎えるかも大きく左右するのではないでしょうか。『エヴァ』の“おわり”を見届ける前に、エヴァ神話の“はじまり”となった『ナウシカ』もぜひチェックしてみてください。

(C) 1984 Studio Ghibli・H

(長野辰次)

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