12月28日は藤田淑子さんの命日。『ダイの大冒険』に「ムーミンの歌」、大人の女性役も
マグミクス / 2020年12月28日 7時10分
■声優としてだけでなく、あのアニソンの名曲も歌った実力派歌手の一面
12月28日は声優の藤田淑子さんがお亡くなりになった日です。今年は奇しくも『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(1991年)、『デジモンアドベンチャー』(1999年)という、藤田さんが主演を務めた作品がリメイクされました。そのようなご縁に思いを馳せながら、藤田さんの演じてきたキャラクターたちを思い出していこうと思います。
藤田さんは幼いころから芸能界で子役として活躍してきました。女優としての活躍も少なくなくありません。
その藤田さんが声優として活動を始めたのが1965年のこと。この年に放送開始した『遊星少年パピィ』(1965年)では、途中からですが主役のパピィを演じています。その後番組『遊星仮面』(1966年)でも主人公のピーターこと遊星仮面を演じていましたが、当時の年齢はまだ若干15歳でした。
また『キングコング』(1967年)では、キングコングと仲良しの少年ボビーという主演を務めています。そして、この作品では主題歌も担当していました。
そう、多彩な才能を持つ藤田さんは歌手としても実力を発揮しているのです。ご自分が作品に出演していない『どろろ』(1969年)の主題歌「どろろの歌」、『ムーミン』(1969年)の主題歌「ムーミンのテーマ」(1972年版は「ねぇ!ムーミン」)はファンだけでなく、幅広い層でも知られるアニメソングの名曲でした。ちなみに『ムーミン』の主題歌は藤田さんが歌うこと前提で曲が作られたそうです。
この後、本格的に声優活動を行ったのは『一休さん』(1975年~)の一休さんを演じたころでした。この『一休さん』も近年にリメイクの動きがあったので、筆者としては今年に何らかの発表があれば藤田さん主演作品が3作も同時にリメイクするかも? と期待していたものです。
藤田さんの特徴と言えば、元気な男の子役、特に主演が多いことでしょうか。この時代で言うと、『がんばれ元気』(1980年)の堀口元気、『愛の学校クオレ物語』(1981年)のエンリコなどです。
しかし、この時期にひとつの転機となるキャラも演じていました。劇場版『銀河鉄道999 (The Galaxy Express 999)』(1979年)のシャドーです。それまでにあまり演じてなかった大人の女性役でした。この役をきっかけにしたのか、この後からそれまで得意としてきた男の子役だけでなく、大人の女性を演じることが増えていきます。
■絶妙な演技力を発揮していた『パタリロ!』のマライヒ
藤田淑子さんが声を務めた『パタリロ!』のマライヒ(右上)が描かれる、「パタリロ!DVD-BOX 2」(ハピネット・ピクチャーズ)
大人の女性役について語る前に、藤田さんの代表的キャラである『パタリロ!』(1982年)のマライヒを忘れてはいけません。
マライヒは美少年でありながら、作品的な立ち位置はヒロイン扱いでした。設定をくわしく知らない人の中にはマライヒを女性だと思っている人も多いかもしれません。藤田さんがマライヒを演じている声を聴くと、あくまでもベースは男の子の声なんだけど、艶があって可愛いと思わせる絶妙な演技力を感じ取れます。例えて言うなら、宝塚の男性役のような雰囲気。藤田さんの技量があるからこそ演じることができたキャラだとは思いませんか?
そして藤田さんの代表的な大人の女性キャラとなるのが、『キャッツ・アイ』(1983年)の来生泪。3姉妹の長女という、もっとも大人の魅力あふれる女性を演じています。当時、『スペースコブラ』(1982年)で演じていたジェーンと同じ3姉妹という共通点を指摘するファンもいました。
前述したように、この時期以降は大人の女性役としても定番となっていきます。『ふたり鷹』(1984年)の沢渡緋沙子、『北斗の拳』(1985年~)のマミヤ、『サイレントメビウス』(1991年)のラリー・シャイアン、『ガラスの仮面』(2005年)の月影千草など、一度その声を聴いたら忘れることができない印象深いキャラばかりでした。クールなイメージのある魅力的な女性役が多いです。
もちろん、元気のいい男の子役が多いことも忘れてはいけません。
中でもロングランとなった『キテレツ大百科』(1988年~)のキテレツこと木手英一は、一般的な知名度がもっとも高いキャラだと思います。ほかにも『新ビックリマン』(1989年)のピア・マルコ、『ロミオの青い空』(1995年)のアルフレド・マルティーニ、『地獄先生ぬ~べ~』(1996年)の立野広など、耳に残るキャラは大勢います。
しかし、最初に挙げた『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』のダイと、『デジモンアドベンチャー』の八神太一の2役は、今年2020年にリメイクされたほどの人気作品。ファンにはもっともなじみ深いキャラかもしれません。
今でも藤田さんが命を吹き込んだキャラの数々は、私たちの心の中でいきいきと動いていることでしょう。こうして御命日に思い出すことで、その功績を後世にも伝えたいと思います。
(加々美利治)
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