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『鬼滅』炭治郎の「刀投げ」は実際に当たる? リアル「忍者」に聞いて分かった意外な事実

マグミクス / 2020年12月30日 8時30分

『鬼滅』炭治郎の「刀投げ」は実際に当たる? リアル「忍者」に聞いて分かった意外な事実

■なにはともあれ、実際に刀を投げてみた

 ファンタジー作品やゲームなどでは、剣を投げて敵に命中させるシーンがたびたび描かれています。「ファイナルファンタジー」シリーズに登場する「忍者」は、手裏剣のみならず、剣などあらゆる武器を「なげる」能力が特徴ですし、最近では『鬼滅の刃』主人公の炭治郎が、作中でたびたび刀を敵に命中させ、ファンの間でも話題になっています。

 ですが、実際に刀や剣を投げて命中させられるものなのでしょうか……? マグミクス編集部はこの素朴な疑問に答えてくれる方を探し当てました。現代に生きる「忍者」のひとりで、伝統的で本格的な忍者修行ができる「NINJA SAMURAI DOJO」(東京・浅草)の師範をつとめる「ぶどう」さんを訪ねました。聞き手は、フリーライターの忍者増田さんです。

* * *

忍者増田(以下、増田) 本日はよろしくお願いします。早速ですが、『鬼滅の刃』の炭治郎が作中でやっているような、「刀を投げて敵に当てる」は現実に可能なのでしょうか?

ぶどう これまで忍者についての研究で分かっている範囲で、できるだけお話したいと思います。ですが、いろいろ話す前にまず実際にやってみましょう。

増田 本当ですか! ぜひ拝見したいです!

ぶどうさんが考える、日本刀を投げる場合に「比較的投げやすい」持ち方

ぶどう 道場で使っている模造刀(刃がついていないもの)を投げてみますね。炭治郎は刃が上向きになるように持って投げていると思いますが、刀の重心が刃の中ほどにありますから、まっすぐ飛ばすためには、刃の部分に手を添えた方が比較的投げやすいと思います。

 それでは、投げてみましょう!

(ガタン! と刀先が的にまっすぐ当たるものの、刃がついていないので刀は落下)

ぶどう この刀に刃がついていれば、刺さると思います。ただ、相当うまく投げないとまっすぐ飛ばず、刺さらないでしょうね。

増田 難しそうだけど、意外と練習すれば当たるような気がしてきました!

ぶどう ただ、当たり前ですが、主要な武器を自分の手から離すのはリスクは高いですし、投げて当たる確率も高くないです。練習すれば当てられないことはないが、あえて実践してもメリットがない……というのが現実的な結論でしょうか。気持ちとしてはファンタジーを否定したくはないのですが(笑)。

■忍者がよく使っていたのは「棒手裏剣」

ぶどうさんが手にしている「棒手裏剣」。とっさの場合は五寸釘や火鉢などを代用することもあったという

増田 なるほど……でも忍者といえば「手裏剣」という、投げるのに適した武器がありますよね。

ぶどう 実際は、手裏剣もあまり投げていなかったようです。投げて致命傷を与えるのは難しいですし、戦いの最中はアドレナリンが出るので、手裏剣が1か所刺さったぐらいでは敵は止まってくれません。手裏剣は、投げて使う場合は相手を一瞬ひるませたスキに間合いを詰めて攻撃したり、あるいは逃げたり……といった使い方をしていたようです。

増田 車手裏剣は回転して飛んでいくから、刀を投げるよりは当てやすそうです。

ぶどう 確かに当てやすいのですが、車手裏剣などは製造コストが高く、実際には1~2個を携帯して、投げれば回収するなど、大切に使われていました。実際によく投げていたのは「棒手裏剣」です。こちらは低コストでたくさん用意できますし携帯もしやすいです。

増田さんが棒手裏剣を体験。最初は箸を使って練習を繰り返してから、棒手裏剣を使って実践

増田 「棒手裏剣」の投げ方でコツはありますか?

ぶどう 重要なのは、腕を振るう時に手首を返さないで、手首を曲げたまま大きな円を描くように腕を振り下ろしながら、体重を前に移動させていきます。手が額の前に来たところで、手裏剣を押さえている親指の力を抜くと、手裏剣がすっぽ抜けて前に飛んでいきます。

 この道場でも、これまで多くの観光客に体験してもらっています。増田さんもぜひ体験していって下さい。

増田 以前に取材で一度体験させてもらっていますが、やはり難しいですね……ありがとうございます。

■『鬼滅の刃』にも忍者「宇髄天元」が登場…実際の忍者の戦いは?

忍者の鎖分銅は「宇髄天元」の武器に近い?

増田 ところで話は変わりますが、「鬼滅の刃」には忍者の「宇髄天元」(鬼殺隊の「柱」のひとり)という人物が登場します。ぶどうさんから見て、天元は「忍者らしい」と感じますか?

ぶどう 宇髄さんの、2本の刀を鎖でつないだ武器は、鎖分銅(くさりふんどう)に近い使い方だと思います。鎖の部分を持って両端を振り回すのは実際にはリスクが高いのですが、逆に分銅を両手で持って、鎖の部分で相手の顔や手首を打ったり、相手の武器をからめ取ったり……といった、比較的トリッキーで多彩な使い方ができるので、宇髄さんの武器は忍者としてはかなり活用できると思います。

増田 そうなんですね! 宇髄天元は作中では忍者らしからぬ派手な戦い方ですが、意外と忍者らしさも……?

ぶどう 「忍者」と聞くと、影に隠れて活動するイメージを持たれていると思いますが、忍術の書のなかには「陽忍」という存在も記されています。あえて自分の姿をさらけ出して、必要な情報を引き出したり、相手の注意を引きつけて罠にはめたり……といった戦い方をしたようです。

 忍者はあくまでスパイ。達成したい目的にあわせて、隠密に行動するか、派手な手段を採用するか、あるいはどんな武器を使うのか……といったことを的確に判断するのが「忍術」といえるでしょう。

聞き手の忍者増田さん(左)と、お話を伺った、ぶどうさん(右)

増田 手裏剣などを「投げる」のも、手段のひとつだった、と考えたほうが良さそうですね。

ぶどう 「忍者」イコール「投げる」に特化した者、というわけではないですね。忍者は生きのびるためにいろんな技や考え方、体の使い方を学んでいます。ただ、「投げる」というなかでも多様な手段を持っていたといえそうです。ファンタジー作品では「投げる」表現が盛り上がるので、取り上げられやすいということでしょう。

増田 目的を遂行するために、無数の「手段」を駆使して生き残る……かっこいいです。しかも、現代を生きる我々にとっても勉強になりそうですね。

ぶどう 忍者はサバイバルのエキスパートです。現代の日常においても、「予期せぬリスクにどう対応するか」「今の人間関係をどううまく活用するか」といった、さまざまなサバイバル要素がある。忍者の考え方や忍術は、きっと役に立つと思いますよ。

●ぶどう 忍びの者
東京・浅草「NINJA SAMURAI DOJO」師範。第十回伊賀流手裏剣打大会全国6位。滝行や断食などの修行も行う。趣味としてアニメ鑑賞やアニソンカラオケ、最近はキャンプにもハマり、火起こしは火打ち石で行うのがマイブーム。Twitter:@budou_sinobi

(マグミクス編集部)

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