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『ガンダム』12月31日は「一年戦争」が終わった日 破滅的な大戦争を振り返る

マグミクス / 2020年12月31日 7時10分

『ガンダム』12月31日は「一年戦争」が終わった日 破滅的な大戦争を振り返る

■1週間で55億人が死亡した「一年戦争」

 TVアニメ『機動戦士ガンダム』(以下、ガンダム)で繰り広げられた戦いが「一年戦争」と呼ばれていることを知ったのは、『ガンダム』の再放送のループが途切れてから何年も経ってからのことでした。一年戦争という言葉が設定されたのは続編の『機動戦士Zガンダム』のときであり、筆者がガンダムを無邪気に応援していた時期にはまだ存在していなかったのです。

 さらには、一年戦争自体の設定が固まったのも、放送終了後から約10年が経過してから出版された書籍「ENTERTAINMENT BIBLE」シリーズです。それ以前にもムック『ガンダムセンチュリー』などで一部の日程や作戦が設定されたことはありましたが、書籍ごとに微妙に日程が異なるなど統一されたものではありませんでした。

 一年戦争が始まったのは、宇宙世紀0079年1月3日午前7時20分。ジオン公国による地球連邦政府に対する宣戦布告がすべての始まりとなりました。まず奇襲により地球連邦軍の部隊を撃破し、月面都市グラナダを制圧したジオン軍はさらに地球連邦側に付いたサイド1、2、4を襲撃し、コロニーを質量兵器として転用するために住民を虐殺します。このとき作戦に参加していた『機動戦士ガンダム0083』の登場人物であるシーマ・ガラハウ中佐は「毒ガスなんて知らなかったんだよ!」と叫んでおり、現場の将兵には毒ガスの使用は知らされていなかったことが伺えます。

 翌1月4日には南米ジャブローに存在する地球連邦軍総司令部に対し対しサイド2の8番コロニー「アイランド・イフィッシュ」を落下させる「ブリティッシュ作戦」が開始されますが、これは地球連邦軍の必死の迎撃により阻止されます。しかし、3つに分断されたコロニーは1月10日にひとつがオーストラリアのシドニーに落下、これが『ガンダム』冒頭のコロニー落下シーンに当たります。このときジオン軍のモビルスーツや艦隊はコロニーを護衛するという作戦の性質上自由に動けずに甚大な被害を受け、戦争前から十分な訓練を積んでいた貴重な将兵を失ってしまい、後の作戦に支障をきたしていきます。

 この時点で地球の総人口110億人のうち55億人が死亡していますが、戦いはまだ序盤にすぎなかったのです。

■TVアニメ『機動戦士ガンダム』1話は9月18日の出来事

 1月15日、ジオン軍は再度ジャブローめがけてコロニーを落とすべく、サイド5のルウムへと移動を開始。連邦軍も再度のコロニー落としを阻止しようと戦力をかきあつめ、「ルウム戦役」が勃発します。この戦いでジオン軍のモビルスーツ部隊は連邦軍の戦闘機中心の部隊を圧倒し、シャア・アズナブルは5隻の戦闘艦艇を撃沈、黒い三連星が地球連邦軍の最高指揮官であるレビル将軍を捕らえるなどの活躍を見せ、ジオン軍が勝利します。しかし受けた損害もまた甚大であり、戦力不足は一層深刻化していくのです。

 1月31日には戦時条約である南極条約が締結され、一旦戦闘は途切れますが3月1日にはジオン軍は地球降下作戦を開始、速やかな制圧を目論みますが連邦軍の抵抗に遭い膠着状態に。

 そして9月18日、シャア・アズナブル少佐がサイド7で極秘裏に進行していた連邦軍のモビルスーツ開発計画の情報をつかんで潜入作戦を行い、TVアニメ初代『ガンダム』の物語は遂に始まりを迎えるのです。

 北米、オデッサ、ジャブロー、ソロモン、ア・バオア・クー。数々の激戦を潜り抜けたアムロ・レイとホワイトベースのクルーたちがランチでア・バオア・クーを脱出したのが宇宙世紀0079年の12月31日、翌0080年1月1日にはグラナダで終戦協定が結ばれ、ジオンと連邦の戦いは終わりを迎えます。

 初代『ガンダム』以外にも一年戦争を取り扱った作品は数多く、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』では一年戦争末期にジオン軍が「ガンダムNT-1」の奪取・破壊を目的として実行した「ルビコン作戦」が描かれています。OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』では陸戦型ガンダムをはじめとする本格的な地上戦が登場。『機動戦士ガンダム MS IGLOO』では一年戦争のさまざまな局面が新たな解釈を盛り込みながら描かれました。

 さらには一年戦争の3年後を扱った『機動戦士ガンダム0083』、0087年を舞台とした『機動戦士Zガンダム』、その翌年の『機動戦士ガンダムZZ』、0093年の第二次ネオ・ジオン抗争こと「シャアの反乱」と、一年戦争がもたらした時代の変化が次々と戦いを巻き起こしていきます。

 そして0096年を舞台とした『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』では一年戦争時代のジオンのモビルスーツが登場し、横浜には等身大の動くガンダムが鎮座、ガンプラは飛ぶように売れ続けるなど、一年戦争は今なお創作にもリアルにも影響を与え続けています。おそらくこれからも一年戦争はさまざまな形で私たちの目の前に姿を現してくれるでしょう。どこまで追いかけられるかは分かりませんが、可能な限り、追い続けていきたいと思います。

(ライター 早川清一朗)

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