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「このマンガがすごい!」を席巻する「和山やま」作品。繰り返し味わえる“旨み”とは?

マグミクス / 2021年1月2日 13時50分

「このマンガがすごい!」を席巻する「和山やま」作品。繰り返し味わえる“旨み”とは?

■マンガ好きの心をつかんだ、初単行本『夢中さ、きみに。』

 各界のマンガ好きによる投票で選出されるランキング「このマンガがすごい! 2021」(宝島社)が発表されましたが、<オンナ編>の1位と5位に同じ作家の作品が選ばれ、ランキングを席巻しています。その作家とは、和山やま氏。その軌跡と作品について、少女マンガに詳しい芸人の別冊なかむらりょうこさんが解説します。

* * *

 現在、少女マンガ界は、和山やま旋風が止まりません。2016年にデビューした和山先生がその存在を台頭させたのは、2019年のこと。「コミティア127」にて同人誌で頒布していた『夢中さ、きみに。』が、2019年8月にKADOKAWAから自身初の単行本として発売されました。発売直後から話題を呼び、どこもかしこも売り切れが続出しました。

 同作は、第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、第24回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。「このマンガがすごい! 2020 」<オンナ編>の2位にも輝き、2021年1月7日から毎日放送にてドラマの放映も決定しました。

 そしてその勢いのまま、和山先生の初連載作品『女の園の星』が「このマンガがすごい! 2021 」<オンナ編>1位、また同人誌として「コミティア129」で頒布していた作品で、現在コミックビームにて不定期連載中の『カラオケ行こ!』が同5位にランクインしました。

 その年のマンガの注目度と売り上げに大きな影響を与える「このマンガがすごい!」に、同一作品が2年連続で上位に入ることはありますが、同じ作者の作品が2年連続で、しかも複数が同時入賞することはそうそうあるものではありません。マンガ好きたちの心をわしづかみにしている和山やま作品とは、いったいどういうものなのでしょうか。

■衝撃の初単行本『夢中さ、きみに。』

 和山先生が描く男の子像はとにかく「追いたく」なる魅力があります。『夢中さ、きみに。』は、オムニバス形式で描かれており、中高一貫の男子校に通う「かわいい」林くんを中心とした4編と、中学生時代モテ過ぎたことがトラウマで平穏な日常を求め、逆・高校デビューをした高校2年生の二階堂くんを中心に描かれた4編で構成されています。

 第1話タイトル「かわいい人」は、林くんから「僕かわいい?」とことあるごとに絡まれる同じクラスの男子高校生の話。古屋兎丸先生との出会いから変わったというその端正な写実的タッチで描かれる男子高校生たちは、一見「かわいい」から離れたところにいるようで、最後にこのふたりのやりとりに誰もが「かわいい…」と落ちてしまいます。

「男子校 x 少女漫画」ということは、そこから繰り広げられるは、恋愛模様……といったことはなく、2話目以降ではまた違った角度の林くんの姿が描かれます。

 後半の二階堂くんシリーズを含め、男子高校生たちの些細な日常を大袈裟な描写にするのではなく、小さく深く描写していく力で笑いを誘発していきます。

 ああこれが、「エモさ」か……を体得でき、登場人物たちのその後の人生を考えてやまない作品です。

■「取りに行かない」コメディの開拓

「このマンガがすごい! 2021」<オンナ編>1位の『女の園の星』第1巻(祥伝社)

 そして、物語の進行を無くし、より些細な日常をコメディへと昇華させた作品が、初の連載作品『女の園の星』です。

 同作の舞台はとある女子校、2年4組。そこで担任をつとめるのが主人公・星先生。生徒たちが学級日誌で繰り広げる絵しりとりに翻弄され、教室で犬のお世話をし、漫画家志望の生徒にアドバイス。時には同僚と飲みに行く。
これが第1巻の中で行われている出来事の全てです。

 こんなにもなんでもない日常が、笑えて笑えて仕方がない。

 例えば、先生が職員室でサンドイッチを食べる姿を見て、「この人ごはん食べるんだ」と思った……という女子高生の描写。当たり前だろ!と思う反面、追憶の学生時代の私が「私もそれ思ったことある!」と共感しているのを感じます。

 女子高校生像をひとくくりに描くことなく、また教師をあくまでも普通の人間として描く和山先生の表現に、凝り固まっていた人間像が融解されていきます。ローテンションのなかで続く笑いが心地よく、「こうだろ!笑とはこうだろ!面白いだろ!」という押し付けがありません。

 非日常的な設定もいらない。奇抜なキャラクターもいらない。
 
 もしかしたら和山先生の手にかかれば、奇抜なキャラクター像も「あーいるいる(笑)」と、身近に感じられるのかもしれません。

 みんなちょっと面白い。生きるのにちょっとダルそうなのに、なんか面白い。そんな登場人物たちが掛け合わさると、今まで味わったことのない和山ワールドを体験できます。

 精密な背景や、それ自体が人間を語ってくれる小道具など、読み返しては、クスリと笑えるポイントをいくらでも採掘できる、旨(うま)みあふれる和山やま作品。これからも、和山先生に目が離せません。

(別冊なかむらりょうこ)

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