「ポストシャア」と目されたライバルキャラ3人の末路。やればできるのに結果は…
マグミクス / 2021年1月3日 15時30分
■ライバルとして認められなかったが、ファンは共感した「ギジェ」
『機動戦士ガンダム』(1979年)のヒットで、そのあとに続く人気作品を思われる作品を、ファンは期待を込めて「ポストガンダム」と呼びます。もちろん富野由悠季監督による作品はそう呼ばれていましたが、同時に『ガンダム』での好敵手であるシャアの人気も高かったことから、主人公のライバルを「ポストシャア」と呼んでいました。
そこで今回は、「シャアの系譜」と言われていた、ロボットアニメの3人のキャラクターに注目したいと思います。
最初は『伝説巨神イデオン』(1980年)に登場したギジェ・ザラルです。『ガンダム』直後の作品だったことで当時のファンの期待値も高く、有能な軍人として描かれていたことで番組開始直後から人気がありました。
しかし、ライバルゆえに連敗するという展開は仕方なかったのですが、どこか情けない印象を与える場面が多くて、シャアほどの盛り上がりは起きません。
シャアと同じく左遷され、戻ってきたときにイメチェンしますが、そこが更なる転落の一歩でした。味方に見捨てられたギジェは敵であるソロシップに潜り込むと、最終的に寝返ります。「破廉恥」と自分を卑下し、自嘲して涙を見せ、傷をなめあうようにソロシップのフォルモッサ・シェリルと男女の関係となるなど、男として情けない姿を次々とさらしました。
こういった弱い部分がファンの共感を呼び、人間的には感情移入できることからキャラとしての人気は高かったのですが「ポストシャア」というライバルキャラとしての地位は確立できなかったのです。
続いては『戦闘メカザブングル』(1982年)に登場したキッド・ホーラ。当初は主人公側の母艦となるアイアン・ギアーで雇われブレーカー(パイロットのようなもの)のリーダーで、エンディングではキャラたちの中心にいたことから活躍が期待されました。
アイアン・ギアーを追い出され、敵であるイノセント配下になってからが本領発揮……とファンの誰もが思っていたのですが、あまり目立った活躍がないまま最終回を迎えてしまいます。
作品的に擁護すると、暗躍してブレーカーにアイアン・ギアーを襲わせるという役割でしたから、目立った活躍がないのは当然かもしれません。
一番の理由は主人公の仇であるティンプ・シャローンがいたことです。このティンプにあらゆる場面で見せ場を持っていかれ、最後の戦いもティンプが務めていました。そのせいで、ホーラは目立たないことが個性にされてしまいます。
■落ちぶれても最後に意地を見せた、バーン・バニングス
「聖戦士ダンバイン Blu-ray BOXⅠ」(バンダイビジュアル)。バーン・バニングスがインナージャケットの左側に描かれる
最後のひとりは『聖戦士ダンバイン』(1983年)のバーン・バニングスです。敵となるドレイク軍の騎士団長で、当初は主人公のショウ・ザマとの戦いも有利に進めるなど、ライバルキャラとしての強者ぶりを発揮していました。
その理由のひとつは、ショウと前線で戦って負け続ける役割をになったトッド・ギネスというキャラがいたからです。ショウと同じく地上から召喚されたライバル的な立ち位置でしたが、トッドは途中で戦死する予定の、いわばセミレギュラー的な存在でした。
ところが、このトッドの人気が徐々に高まり、死ぬ予定の話で「負傷による退場」という形に変更されます。
その後のバーンはショウとの戦いに負け続け、徐々に立場を失っていきました。そして数話ほどの退場劇を経て、仮面をつけた「黒騎士」というキャラにイメチェンします。
この仮面姿を見た当時のファンのなかには、シャアを思い起こす人も少なくありませんでした。しかし黒騎士としても負け続け、仮面キャラとしては異例の素顔をさらして涙する姿を見せます。
一方で戦線に復帰したトッドは、バーンとは逆にドレイク軍での地位を徐々に固めていきました。さらにファンだけでなくスタッフ内部にも人気が高かったトッドは、後期オープニングに登場します。当時のアニメ雑誌での扱いも多くなっていきました。こうしてトッドの存在が作品中だけでなく、その外側でもバーンの地位を脅かしていったわけです。
前番組『ザブングル』でライバル的なキャラがホーラとティンプというふたりだったように、『ダンバイン』でもバーンとトッドがライバルの地位を分け合う形になりました。
後の『機動戦士Zガンダム』(1985年)のジェリド・メサとパプティマス・シロッコの関係に発展していくのかもしれません。
しかし、最後の最後でバーンはライバルキャラとしての意地を見せました。最終回に主人公と戦うというラスボスとしての役目です。それを果たせただけで、前述のギジェやホーラに比べて恵まれているのかもしれません。
ちなみにこの後番組である『重戦機エルガイム』(1984年)のギャブレット・ギャブレーというライバルキャラも登場しますが、前述の3人とは違って失敗して姿を消す展開もなく、むしろ順調に出世しています。
さらに最終回では主人公と一緒にラスボスを倒し、最終的には主人公側になっているという一風変わったキャラになりました。
(加々美利治)
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