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『九龍ジェネリックロマンス』の、贅沢すぎるマンガ体験。物語の飛躍に「え、マジで」

マグミクス / 2021年1月8日 17時10分

『九龍ジェネリックロマンス』の、贅沢すぎるマンガ体験。物語の飛躍に「え、マジで」

■ロマンスも、SFも。贅沢なマンガ体験を味わえる作品

 2020年12月に発表された、『このマンガがすごい!2021』(宝島社)オトコ編の3位に輝いた、『九龍ジェネリックロマンス』(眉月じゅん先生)。懐かしさと人間臭さあふれるロマンス、その裏の驚く展開。あらゆるワクワク感を引き立てる1巻に、多くの読者が惹きつけられました。

 前作『恋は雨上がりのように』で、爽やかだけど胸をきゅっと締め付けるようなストーリーで読者を魅了した、眉月じゅん先生。今作『九龍ジェネリックロマンス』は、香港・九龍に実在した「九龍城砦」をモチーフとしたスラム街が舞台です。

 第二次大戦後、城塞から巨大なスラム街と化し、「東洋の魔窟」と呼ばれた九龍城砦は、現実世界では住人の退去後、1994年までに取り壊されました。そんな現実には存在しない街から生まれた、雑多な街・クーロン。コロコロと住人は変われど、常に人であふれている取り壊し寸前の街で、鯨井(くじらい)と工藤(くどう)の2人は生きています。

 不動産屋勤務で、がさつでぶっきらぼうな工藤。先輩である彼に振り回されながら、密かな恋心を抱く鯨井。下町の喧騒が絶えない街の情景に、どこか「懐かしさ」を覚えるのは、コロナ禍で人が交わる機会をあまり見なくなったせいなのでしょうか。もしくは、学生時代に旅行した台湾の夜市を思い出させるのかもしれません(眉月先生は、クーロンを描くのに台湾の雰囲気を反映させているそうです)。

 汚らしいオフィスで、人懐っこい人びとに囲まれた鯨井の生活。彼女の仕草や物思いに耽るシーンがとても叙情的で、ページをめくるたびにドキドキさせられてしまいます。そんな彼女が、工藤の言動ひとつひとつに一喜一憂して。その度に彼との距離が、近づいたり離れたり。心情の変化をニヤニヤしながら、ページをめくってしまいます。

 知り合いの女友達に、そんな恋心を指摘されて、自分でも「この人が好きだ」と再認識する鯨井。タイトルの「ジェネリック(日本語で「一般的な」の意味)」の言葉のごとく、それはきっとクーロンの街で起こる、ありふれた恋物語のひとつなのでしょう。

 そんな他人の日常を垣間見る楽しさに浸っているなか、迎えた第8話の衝撃たるや……単行本第1巻でこの展開を目にした時、思わず「え、マジで」と声に出ていた自分がいました。そこから、もう一度1話から話を読み返します。そうすると、最初には気付かなかったストーリー中の違和感が、ひとつふたつと見つかるではありませんか。

 衝撃展開から一転。2巻、3巻と続くにつれ、ストーリーの速度感はどんどん増していきます。これは彼らふたりだけに起きている、クーロンの異変なのか? それとも、この街全体が、彼らと同じ現象に襲われているのか…? 作中の言動すべて、コマごとの描写すべてに「裏」があるんじゃないかと、今では第1話よりはるかに前のめりになりながら、ページをめくっています。

 一方で、鯨井と工藤の恋にも目が離せません。『九龍ジェネリックロマンス』は、読み込むべきこと、考えるべきことがたくさんあって、それが贅沢なマンガ体験をもたらしてくれます。早くこの先の展開を、目にしたくて仕方ありません。

(サトートモロー)

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