アニメ『呪術廻戦』 今の“ご時世”だから…心をえぐられる名言4選

■『呪術廻戦』の名セリフは…今の“ご時世”だからこそ心にぶっ刺さる！

「きっと重油まみれのカモメに火をつけたりするんだわ」

　こちらはTVアニメ『呪術廻戦』（原作：芥見下々）の第4話、虎杖悠仁（CV：榎木淳弥）と伏黒恵（CV：内田雄馬）が釘崎野薔薇（CV:瀬戸麻沙美）と出会うシーンで、釘崎が伏黒の第一印象を評した時の言葉です。こんなセリフがさらりと登場するアニメが名作でないはずがありません。

　実際、原作コミックスは累計発行部数1200万部を突破。2020年10月にアニメ第1期の放送が開始されるとその人気はさらに拍車がかかり、公式オープニング映像は2000万回近く再生され、映像配信サービス「dTV」では年末年始の作品視聴ランキングで1位を獲得しています。

　そんな『呪術廻戦』の人気を支えている要素のひとつこそ、冒頭でも紹介した魅力あふれるキャラクターたちから放たれる数々の名セリフでしょう。アニメの第1期前半クールだけでも胸に深々と突き刺さる名言が数多く登場しました。そこで本稿では閉塞感漂うこの“ご時世”だからこそ味わいたいアニメ『呪術廻戦』の名言を4つピックアップしてご紹介します。

※作品の内容について触れている箇所がありますので原作・アニメを未読（未視聴）の方はご注意ください。

●「俺は不平等に人を助ける」

　第5話で宿儺と対峙した時、伏黒が放ったこちらのセリフは『呪術廻戦』アニメ第1期を代表するものいって過言ではないでしょう。『呪術廻戦』はバトルファンタジーでありますが「死」という絶対的に避けられぬものといかに向き合い、どう折り合いをつけるか、そうした登場人物たちの葛藤が物語の軸となります。「不平等な現実のみが平等に与えられている」……この諦念に満ちた人生観から一歩踏み出した瞬間に飛び出したのこのセリフ。伏黒の並々ならぬ覚悟を感じ取ることができます。伏黒に限らず登場人物の「呪霊」との向き合い方がそのまま「死」との向き合い方となっている点は『呪術廻戦』の注目すべき特徴です。

●「俺はヒーローじゃない、呪術師なんだ」

　同じく第5話で、伏黒が宿儺から戻った虎杖に呟いたセリフ。現実と理想の乖離を受け入れ自らの“手の届く”範囲を悟った瞬間、伏黒は呪術師として成長を遂げます。不可能な理想を掲げ絶望するより、手の届く範囲で最善を尽くす……この境地は「呪術師」という特殊な職業だけでなく、私たちのあらゆる仕事に求められる姿勢ではないでしょうか。さらにこのセリフに対して虎杖の「お前の真実は正しいと思う。でも俺が間違っているとも思わん」というセリフもまた、虎杖の分け隔てない正義観を端的に表しており『呪術廻戦』の主題がこの短いやりとりのなかに凝縮されています。

●「同じクソならより適性のある方を」

　脱サラ呪術師のナナミンこと七海建人（CV:津田健次郎）が第9話で放ったこの言葉も多くの視聴者の胸を打ちました。なぜ脱サラしてまで呪術師になったのかという虎杖の素朴な疑問に対する完璧（？）な回答です。呪術高卒業後に一般金融系企業に就職したナナミンがたどり着いたある意味では人生の真理。伏黒同様、現実がいかにままならぬものか熟知した上での言葉ですから、より重みを感じます。また同じく9話は「私には君を自分より優先する義務があります」とこれまた多くの視聴者を“ナナミン沼”に引きずり込んだセリフが登場します。『呪術廻戦』に登場する“大人”たちが魅力的なのは、能力の差に関係なく「大人である」ことを全うしようとしているからであり、“手の届く範囲”で死力を尽くしてくれるからではないでしょうか。もちろん、伊地知さん（CV：岩田光央）も。

●「若人から青春を取り上げるなんて許されていないんだよ」

『呪術廻戦』の大人たちの魅力は“最強”五条悟（CV:中村悠一）の第6話でのこの言葉に集約されるかもしれません。「許されていない」とは誰から許されていないのでしょうか。もちろん呪術師の戒律でも法律でもありません。最強であるはずの五条先生をも許してないのは他ならぬ五条先生の「良心」です。これもまたさらりと登場するセリフではありますが、どこか“ご時世”と重なり、心をえぐられる思いです。

＊　＊　＊

　今回ピックアップしたものは全て私たちを取り巻くこのままならぬ現実を生き抜くためのヒントとなり得るものばかりです。単なるセリフを超えた言霊として、すでに体に取り込まれている、そんな気がします。そんな『呪術廻戦』アニメ第1期後半クール「京都姉妹校交流会編」は2021年1月15日(金)スタートです。

（片野）