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【金ロー】『エヴァ新劇場版』3週連続放送。押さえておきたい「ATフィールド」の意味は?

マグミクス / 2021年1月14日 19時10分

【金ロー】『エヴァ新劇場版』3週連続放送。押さえておきたい「ATフィールド」の意味は?

■何度も見た人もそうでない人も…「エヴァ」神話のプロローグ

 あまりにも衝撃的だったTVシリーズの最終回が放映された1996年3月から、足掛け25年。庵野秀明監督の最新作にしてシリーズ完結編となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、2021年1月23日の公開予定が延期となりましたが、「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)では3週連続でこれまで公開された『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版』がオンエアされます。

 1月15日(金)に放映されるのは、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007年)。14歳になる中学生・碇シンジは、汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオン初号機に乗り、人類を襲う謎の敵・使徒と戦うことになります。まだ見たことがない人だけでなく、TVシリーズや旧劇場版を見ている人もおさらいしておきたい、エヴァ神話のプロローグとなる物語です。

 難解と思われがちな『エヴァ』の世界ですが、重要なキーワードとなる「ATフィールド」を押さえておくと、意外とシンプルな物語であることが分かります。「ATフィールド」の正体について探ります。

■エヴァとシンクロするシンジの心の葛藤

 ATフィールドとは、『エヴァ』の世界に登場する架空のバリアの名称です。シンジ(CV:緒方恵美)たちが暮らす第三新東京市をたびたび襲う使徒、そして使徒と戦うエヴァンゲリオンのみが使うことができるものです。正式名称は「Absolute Terror FIELD(絶対恐怖領域)」。人類が持つ通常兵器では歯が立たない、とんでもない硬度を誇っています。

 父・碇ゲンドウ(CV:立木文彦)が開発したエヴァンゲリオン初号機に嫌々ながら乗り込んだシンジは、恐ろしい使徒との過酷な戦いを強いられます。また戦いの合間には、シンジの日常生活が描かれます。繊細な心を持つシンジは、自分の心が傷つくことを何よりも恐れています。

 他者との衝突を避けようと、父・ゲンドウや特務機関「ネルフ」に所属することになるシンジの上官・葛城ミサト(CV:三石琴乃)の指示に素直に従います。そこにはシンジ自身の意思はありません。言ってみれば、シンジは自分の心を閉ざし、いつもATフィールドを張った状態で日々を過ごしています。

 エヴァと使徒との命懸けの戦いが繰り広げられる一方、シンジと周囲の大人たちや転校先のクラスメイトとの間にも軋轢が生じます。未知なる敵から人類を守るための大規模な戦闘と思春期の少年の心の葛藤がシンクロするように、物語が展開されていきます。

 エヴァがATフィールドを張るだけでは使徒には勝てないように、シンジも心を閉ざすだけでは日々の生活を乗り切ることはできません。シンジが自分で築いた「心の壁」を、戦場と日常生活を行き来するなかでどう乗り越えていくのかを描いたのが、『エヴァ』の基本的なストーリーとなっています。自分が傷つくのも、誰かを傷つけるのも嫌。でも心を閉ざしたままでは、何も始まらない。『エヴァ』が内包する、そんな普遍的なテーマに共感を覚えた人は少なくないようです。

■綾波レイが心を開く名エピソード「ヤシマ作戦」

数あるエヴァ用語のなかでも広く知られる「ATフィールド」は、グッズにもなっている。画像は「A.T.FIELD エヴァンゲリオン初号機CLEAR_C スマホケース」(コギト)

 庵野監督が『エヴァ』の物語を再構築した第1弾『新劇場版:序』のクライマックスとなるのは、葛城ミサトが指揮する「ヤシマ作戦」です。これまで以上に手強い第6使徒が現れ、箱根にある第三新東京市は窮地に陥ります。強力なATフィールドを張る第6使徒を倒すため、エヴァ零号機に乗る綾波レイ(CV:林原めぐみ)と初号機のシンジは協力して「ヤシマ作戦」を遂行します。

 TVシリーズ、旧劇場版をご覧になっている方はご存知のとおり、綾波レイは普通の女の子ではありません。見た目は14歳の美少女ですが、感情面は未発達です。「心の壁」を築く以前に、まだ自我が確立していない状態です。そんな綾波レイですが、作戦のパートナーであるシンジを守るために懸命に体を張ります。また、初号機が託された陽電子砲には、日本中から寄せられた膨大な量の電力が注がれていました。多くの人たちの想いを背負い、シンジは第6使徒との決戦に挑みます。

 戦いのなかの一瞬ではあるものの、シンジは多くの人たちと心がつながることになります。それまで表情の乏しかった綾波レイも、この戦いがきっかけで表情に変化が現れるようになっていきます。TVシリーズの第6話「決戦、第3新東京市」で描かれた「ヤシマ作戦」は、『エヴァ』人気を決定づけた名エピソードとなりました。庵野監督もお気に入りの作戦なのでしょう。実写映画『シン・ゴジラ』(2016年)でも、「ヤシマ作戦」を彷彿させる「ヤシオリ作戦」が立案されます。

■ATフィールドは人間なら誰もが持っている?

 クールな美少年ぶりで人気を呼んだキャラクター・渚カヲル(CV:石田彰)は、『新劇場版:序』から早くも登場します。TVシリーズの第24話「最後のシ者」では、カヲルくんは「ATフィールドは、人間なら誰もが持っている心の壁」と説明していました。人間は「心の壁」があるがゆえに、その人個人でいられるということです。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「ソーシャル・ディスタンス」や「リモートワーク」という言葉が広まりました。新しい生活様式に戸惑う人がいる一方、余計な人づきあいが減ったことに逆に安堵感を覚えた人もいるのではないでしょうか。

「ソーシャル・ディスタンス」という言葉は、人と社会とのつながりまで断たなくてはいけないという誤解を招きかねないことから、「フィジカル・ディスタンス」に言い換えようという動きもあります。感染症が広まらないよう物理的距離には気をつけながらも、心は孤立させないようにしようというのが「ソーシャル・ディスタンス」の本来の意味合いです。『エヴァ』もコロナ禍を生きる現代人も、心の壁=ATフィールドにどう対処するのかが重要なテーマになっていると言えそうです。

(長野辰次)

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