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理想の女性ヒーロー『ワンダーウーマン1984』は、「弱さ」も丁寧に描く物語だった

マグミクス / 2021年1月16日 17時10分

理想の女性ヒーロー『ワンダーウーマン1984』は、「弱さ」も丁寧に描く物語だった

■舞台が「1984年」になった理由とは…?

 数度の公開延期を経て、日本では2020年12月18日から公開されている映画『ワンダーウーマン1984』は、スーパーマンやバットマンなどで知られるDCコミックスを原作とした映画化作品です。アメリカではクリスマスの12月25日に劇場公開されました。

 2017年にガル・ガドット主演で公開された『ワンダーウーマン』の続編である今作は、前作に引き続き女性監督であるパティ・ジェンキンスがメガホンをとり、主演のガル・ガドットも続投しています。

 1984年の世界を舞台に、全人類の欲望の暴走と立ち向かうという設定で、景気拡大まっただ中のアメリカでヒーロー活動をするダイアナことワンダーウーマンが描かれています。欲望を操る伝説の石“ドリームストーン”の力で驚異的な能力を得た実業家「マックスウェル・ロード」(マックス)と、原作でも宿敵として長年ワンダーウーマンと敵対し、時には力を貸すヴィラン「チーター」も本作を盛り上げています。

 また、今作では「孤独」を抱えたワンダーウーマンの内面が丁寧に描かれています。超人的なパワーを持つ女性ヒーローのイメージが濃く出ていた前作よりも女性らしさが強調され、ダイアナという人間の人生がわかるシーンが目立っていました。愛する人がいても相手だけ年を重ねていってしまうことから、人と距離を置いている……という事情もわかりやすく表現されています。

 そして、「1984年」という設定も見事で、核を抑止力としていた米ソ関係や、中東の石油政策、80年代ファッションなど、同時代の社会情勢が物語に幾度となく関わってきます。

 監督は1984年を舞台に選んだ理由を「歴史上、最高で最低な時期だったから」と語り、最も極端だった時代にワンダーウーマンを登場させる構想を実現させたかったと話しています。人の欲望が世界を巻き込んでいくストーリー展開は、この時代設定に非常にマッチしているといえるでしょう。

※次ページの内容はストーリーの核心に触れる内容が含まれますので、映画を未鑑賞の方はご注意下さい。

■もう一度観たくなる!『ワンダーウーマン1984』の名シーン

前作で亡くなったダイアナの恋人、スティーブ・トレバー。今作での再登場は注目ポイントのひとつ

『ワンダーウーマン1984』には、非常に心に響くシーンがたくさんありました。

 ペドロ・パスカル演じる実業家マックスは、時折見せる人間臭く、悪役とも言い切れないような人間性を見せました。隠された心の傷や息子に対する愛情をヴィランという立場で表現するペドロの演技力に驚かされます。人間としての深みをたたえたマックスは『ワンダーウーマン1984』のもうひとりの主人公と言っていいでしょう。

 もうひとつが飛行機でエジプトに向かうシーン。スティーブと一緒に乗る飛行機を透明化してしまいますが、これは原作コミックや70年代のドラマでも登場したインビジブルジェットというもの。文字通り透明な飛行機でダイアナが空中で椅子に座ったような姿勢なのが特徴です。機体はもともとアフロディーテからの贈りもので、アマゾン族の技術が搭載され、計器やミサイルまで透明……という設定でしたが、それを映画で実現させたシーンはファンを驚かせました。

 個人的に最も印象に残ったのが、前作で亡くなったダイアナの恋人スティーブとの最後のシーンです。石の力で偶発的にスティーブを現代に蘇らせてしまったダイアナは、失っていた心の支えを取り戻しましたが、代償としてワンダーウーマンとしての能力を失います。

 世界中に問題が発生するなかで、ダイアナは願いを取り消し能力を取り戻すことを選択しますが、それでも愛をつらぬきたいとするダイアナは、スーパーヒーローというよりも、ひとりの女性なのだということを改めて認識させられました。

 ヒーローの強さをアクションシーンで表すことは多いと思いますが、本作では「強さ」だけではない「はかなさ」や「弱さ」が丁寧に描かれています。ヒューマンドラマであり、デートムービーかつヒーロー映画というふり幅は、ワンダーウーマンに相応しい構成といえるでしょう。

 もし今後続編が作られるとしたら、ワンダーウーマンのサイドキックであるワンダーガールの登場に期待したいところです。ドラマ『タイタンズ』ではコナー・レスリー演じるワンダーガール(ドナ・トロイ)が活躍していたので、登場の可能性は十分にあるのではないでしょうか?

(C) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

(大野なおと)

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