『仮面ライダークウガ』放送終了から20年。令和まで続くシリーズの基礎を築いた功績
マグミクス / 2021年1月16日 8時30分
■特撮に興味がない大人も熱中した『仮面ライダー』
今や子供から大人まで幅広い層に愛される「仮面ライダー」シリーズですが、2000年に放送開始し、ちょうど20年前の2021年1月に最終回を迎えた『仮面ライダークウガ』は、平成に蘇った最初の仮面ライダーとしてさまざまな新機軸を生み出し、令和まで続く偉大なシリーズの基礎を築き上げていました。
西暦2000年には社会人となっていた筆者は、仮面ライダーの新作が放送されているという話を聞いても、心は特に動きませんでした。子供のころは「ウルトラマン」や「仮面ライダー」、「スーパー戦隊」を始めとするさまざまな特撮番組をTVにかじりついて見ていたのですが、特撮番組はある程度の年齢になったら卒業するものだ……というのが当時の風潮で、中学校を卒業して以降は『鳥人戦隊ジェットマン』や『激走戦隊カーレンジャー』といった特別な面白さを持つ作品以外、ほとんど見なくなっていたのです。
そんなある日、大学時代の先輩から「新しい仮面ライダーがものすごく面白いからみんなで見ようぜ」と連絡があったのです。正直興味は無かったのですが、久々に友人同士で集まれるということもあり、参加することにしたのです。果たして先輩がわざわざ皆を集めてまで見せたがる『仮面ライダークウガ』とはどんな作品なのだろうか。そんな疑問を持った筆者の目に飛び込んできたのは、今まで見たことがないほどドラマのレベルが高い「仮面ライダー」でした。
自分が知っている特撮と言えば、悪の組織の首領と幹部が悪だくみをして怪人が暴れ、それをヒーローが必殺技やロボットで倒す……という形式が当たり前でした。厳密に言えば『クウガ』も同様の形式を踏襲してはいるのですが、設定の密度とリアリティはそれまでの特撮作品とは比べものにならないほど洗練されており、自分たちの日常生活のなかに突然怪人が現れたらどうなるのかが、事細かく描写されていたのです。
特撮作品ではしばしば怪物の脅威に対して自衛隊が登場しますが、本作では警察が対応しており、刑事ドラマとしての一面が色濃く出ています。特に怪人による殺人は野生動物の管轄とされており、殺人課ではなく警備部が前面に押し出されているのが大きな特徴と言えるでしょう。オダギリジョー氏演じる五代雄介とともに、ダブル主人公と言える位置づけで登場する葛山信吾氏が演じた一条薫の配属が警備部になっているのも、上記の理由があるからなのです。
■怪人もライダーも「改造人間」ではない理由
『小説仮面ライダークウガ』(講談社)は、グロンギ族と戦った五代雄介が姿を消してから13年後の物語を描く
また怪人が改造人間ではなく、「グロンギ族」と呼ばれる謎の怪人集団であり、彼らはさまざまなルールのもとで人間を襲う「ゲゲル」という行為を繰り返す者たちとして描かれています。
彼らがグロンギ語という独自の言語で会話していたことも、作品の大きな特徴でした。本放送当時は大きな反響を巻き起こし、翻訳を試みた視聴者がたくさんいたことを思い出します。なお、筆者はバッタの能力を持つグロンギ「ズ・バヅー・バ」がエピソード6で発した「ガベザガベザ(酒だ酒だ)」だけは、直感で理解できました。
主人公であるクウガも、リント(人間)の戦士が装飾具アークルの力によって変身した姿なのですが、当初はグロンギと同一視され、白いグローイングフォームは「未確認生命体2号」、赤いクウガことマイティフォームが「未確認生命体4号」と呼ばれており、人類にとって敵か味方か分からない状態が続くなど、人類にとって仮面ライダーが未知の存在であることを強調していたのも、本作の大きな特徴と言えるでしょう。
なぜこのような設定が行われたのか。その理由は、昭和に比べて平成では義肢や人工臓器の移植が一般的に行われるようになったことが挙げられます。広義にとらえれば、改造人間ことサイボーグは、現実に存在するようになったと言えなくもないのです。そのため「クウガ」では、改造人間という名称は使わないことになり、以降のシリーズでも同様の措置が取られています。
設定以外にも『クウガ』ではさまざまな新しい試みが行われています。特に印象に残っているのは、バイクを使用したアクションシーンです。本作ではオートバイのスタントにオートバイ競技であるトライアルの元全日本チャンピオン・成田匠氏が参加し、バイクの後輪を敵に叩きつけるなど最高峰のバイクアクションを披露してくれました。また、エピソード31から33にかけては弟の成田亮氏がゴ・バダー・バを演じ、おそらく現時点でも日本の特撮史上最高峰と言えるオートバイアクションバトルを繰り広げてくれました。
今思い返しても、『クウガ』は仮面ライダーの新たな基軸を作り出した偉大な作品として存在感を発揮しているように思えます。21年にわたり新たなライダーが生み出され、日曜の朝に放送される流れを作った先駆者としての功績は、色あせることは無いでしょう。
なお、七森美江さんが演じた薔薇のタトゥーの女こと、ラ・バルバ・デは実は生き残っており、後に再びゲゲルを開始しています。この話は2013年に出版された「小説仮面ライダークウガ」で描かれていますので、興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。
(ライター 早川清一朗)
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