動く実物大ガンダムは「本能」を呼び起こす! 巨大ロボットが感じさせた“畏れ”とは
マグミクス / 2021年1月19日 18時10分
■人類の「生存競争」思い起こさせた、巨大な存在への畏敬
ただ、圧倒されました。
巨大な物が動く。それだけのことに、ただ圧倒されたのです。
ガンダムが前に歩き、膝をつき、立ち上がり、天を指す。たったそれだけの動作をしただけなのに、筆者の体はあとからあとから湧き出してくる、畏れに震えていました。
横浜の「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」に設置されたドック内に鎮座している、全高18メートルの「RX-78F00 ガンダム」の威容は、静止しているときも強烈な存在感を放っていたのです。本当にこんなものが動くとは、実際に見るまではとても信じられませんでした。
初代『機動戦士ガンダム』14話「時間よ、とまれ」でジオンの若者たちは、こんな巨大な相手に、爆弾片手にワッパで突っ込んで行ったのか。OVA『機動戦士ガンダム第08MS小隊』で、シロー・アマダは相手がザクとはいえ人間など一瞬で踏みつぶせる存在に、生身で待ち伏せをかけたのか。TVアニメ『機動戦士Vガンダム』のネネカ隊は、V2アサルトバスターガンダムにどんな気持ちで消し飛ばされていったのか……とても想像ができません。「痛かったらごめんなさい」じゃあ済まないでしょウッソ。
ガンダム以外でも、巨大ロボットが登場する作品では、生身の人間がわずかな武器で勇敢に立ち向かうシーンがしばしば登場します。しかしそんなことは不可能です。一瞬で自分を粉々にできる武器をいくつも備え、分厚い装甲に身を包み、必要とあればジャンプも可能な存在が目の前にいたら、立ち向かう勇気など一瞬で吹き飛んでしまうでしょう。
人類の歴史とは戦いの歴史です。いまこの世に存在しているすべての人びとは、生存競争に勝ち残った人間の子孫なのです。しかし目の前にそびえ立つガンダムを見ているだけで、魂の奥底に刻まれた戦いの本能が「何をやったって勝てない」とささやいてきます。
もし、この巨大な存在の目がこちらを向いたら、次の瞬間にザクの装甲すら撃ち抜く砲弾が飛んでくるかもしれないのです。人にできるのは、畏れ敬うことだけなのかもしれません。
■ありったけの情熱と技術が注ぎこまれた機体
5G通信技術を利用し、「動く実物大ガンダム」のコクピットの視点を体験できる「GUNDAM Pilot View SoftBank 5G EXPERIENCE」 (C) 創通・サンライズ
「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」のメインコンテンツは間違いなく等身大ガンダムです。しかしそれ以外にも、見どころはいくつも存在しています。
特にお勧めしたいのが、動くガンダムの開発プロセスについての解説を見ることができる「ACADEMY」です。どうやって動くガンダムを作ったのか、どんな仕組みで動いているのか、投入されたさまざまな技術や建造の過程が、技術者の方々の言葉で語られています。「ガンダム」を愛する人たちがどれだけの情熱を注ぎ込んでここまでたどり着いたのかを知ることができる、貴重な展示なのです。
おそらく、「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」でガンダムを見て感動した子供たちのなかから、次世代を担う開発者が出てくるでしょう。「ACADEMY」の展示はその子たちにとって、貴重な道しるべになる。そう思えるのです。
そして見逃してはならないのが、実物大のパイロット目線を体験できるシミュレーターです。等身大ガンダムは動く際にある程度のストーリー付けがなされているのですが、ガンダムの動作を見ているだけでは内容が分かりづらくなっています。
その内容が、このシミュレーターで補完される形になっており、起動の際に発生したトラブルがなんなのかを理解できるようになっています。こちらを体験しないと片手落ちになってしまいますので、もしガンダムを見に行かれた方は、忘れずにチェックしておいたほうがいいでしょう。どこかで聞いたことがある声のAIとともに、ガンダムの視点から横浜の街を見るのは、なかなかに楽しいものです。
お台場・潮風公園に等身大ガンダムが初めて登場したのが2009年。ユニコーンガンダムがデストロイモードに変形できるようになったのが2017年。そして動くガンダムが登場したのは2020年と、巨大なガンダムの世界は着実に進歩を遂げています。自立歩行可能なガンダムがいつ登場するかは見当もつきませんが、40年前は人の心の中にしか存在しなかったものが、少しずつ現実になっているのは事実です。筆者の世代が間に合うかはわかりませんが、次の世代、そのまた次の世代の目が黒い内には、実現して欲しいと願っています。
※「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」は2022年3月31日(木)まで公開予定。申し込み・問い合わせは公式サイトの情報をご確認下さい。
(早川清一朗)
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