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『エリア88』の新谷かおる氏が語る…魅惑の「機体」描写が生まれたワケ

マグミクス / 2021年1月22日 17時10分

『エリア88』の新谷かおる氏が語る…魅惑の「機体」描写が生まれたワケ

■松本零士先生のひと言が転換点に

『エリア88』や『ファントム無頼』(原作/史村 翔)など、航空戦記マンガの名作を描いたマンガ家の新谷かおるさんは、デビューから40年余にわたって少年マンガの最前線で活躍してきました。2021年4月26日(金)に、70歳の誕生日を迎えるのを記念し、画集『新谷かおるARTWORKS 戦闘機から美少女まで』(玄光社)が1月29日(金)に全国発売されます。航空戦記マンガから、バイクや車のレース物、美少女を主役に描いた作品など、多岐にわたる新谷作品について、ご自身に語ってもらいました。

* * *

――長年、少年マンガ誌で活躍されてきた新谷先生ですが、デビューは少女マンガ誌の「りぼん」(集英社)ですね。

新谷かおる(以下、新谷) 僕が高校生の頃は劇画全盛期でしたが、筋肉隆々の男が活躍する世界が不自然に思えて、ついて行けなかったんです。次第に、少女マンガの世界に傾倒していくようになりました。

 高校卒業後、アニメーターを目指そうと考えて上京したんですが、虫プロダクションに行くと倒産していて、東映動画(現・東映アニメーション)は労働争議の最中。「雇ってくれ」とは言えず、生活のためマンガの道へと切り替えることにしたんです。

『吸血鬼はおいや?』という少女マンガ作品を描いて、「りぼん」(集英社)の新人漫画賞佳作に入選しました。昭和48(1973)年の「りぼん」4月大増刊号に掲載されて以来、単行本化されたことがない幻の作品でしたが、今回画集に初めて収録しています。

――その後、少女マンガから少年マンガへ方向転換したきっかけをお聞かせください。

新谷 松本零士先生のアシスタントをしていた頃、ある日突然「少女マンガを描き続けるか、少年マンガに切り替えるか決めろ」と松本先生に言われました。締め切り前で忙しいにも関わらず「ただちに決めろ!!」と言われ、僕はとっさに「少年マンガに決めます」と答えていました。

 絵柄は少女マンガ風でも、ストーリーの展開は少年マンガのハードなもの……デビュー作を描いて以降、少女マンガに行きづまっていた僕に、少年マンガを描くきっかけを作ってくれたと感謝しています。

 松本零士先生には、プロとしての仕事のこなし方をたくさん教わりました。松本先生は、飛行機を「キャラクターとして描け」と言うんです。戦闘機も痛みを感じるし、悲鳴を上げる。被弾痕からは、鮮血のようにオイルが流れる様子を描けと言われました。この時学ばせてもらったことは、後に『エリア88』などの作品で戦闘機を描く時に生かしていますね。

■レースさながらの執筆だった『ふたり鷹』。競った相手は…?

『新谷かおるARTWORKS 戦闘機から美少女まで』(玄光社)より。『ファントム無頼』(原作/史村 翔)カラーイラスト。

――松本零士先生の元を独立後、「月刊プレイコミック」(秋田書店)に『戦場ロマン・シリーズ』の執筆をスタート。本格的な連載デビュー作となりました。

新谷 『戦場ロマン・シリーズ』は、半年に2本ぐらい描いて、様子を見ながら自分の方向を決めて行こうと思ってスタートしました。それがあっという間に、めちゃくちゃ忙しくなった。そのうちに『ファントム無頼』(原作/史村 翔)連載の話が舞い込みます。

 航空自衛隊で「F-4ファントムEJを主役に描いて欲しい」という依頼でした。今回の画集では、原作の史村先生に特別インタビューで連載時のことを語っていただきました。大変うれしいですね。

 そのうちに、『エリア88』と『ふたり鷹』も連載がスタート。ピーク時には月産200~300枚の原稿を描いていたし、睡眠時間は1週間に10時間ほどしか取れなかった。今回の画集に収録されたカラー原画を見ると、よくやっていたなあと改めて思いますね。画集に掲載している『エリア88』のカラー原画では、主人公/風間 真が乗るF-20タイガーシャークの操縦席を細かく描きたくて、違う会社のものを組み合わせて描いているものがあります。マンガだからこそつける「ウソ」というものですね。多忙な時期でしたが、そうやって楽しみながらカラー原画を描いていました。

『ふたり鷹』では、耐久二輪レースの世界を描いていますが、僕の執筆もレースさながらの展開でした。「週刊少年サンデー」(小学館)の人気投票で最下位からスタートしましたが、次第に高橋留美子先生の『うる星やつら』、あだち充先生の『タッチ』と上位を競うようになります。『うる星やつら』は抜けませんでしたが、『タッチ』は何回か抜いています。向こうの試合が終わったタイミングで、こっちが山場に持って行くのがコツなんです(笑)。

■「いつか女の子が主役を取る時代がきっと来る」と…

『新谷かおるARTWORKS 戦闘機から美少女まで』(玄光社)より。『砂の薔薇 デザート・ローズ』カラーイラスト

――今日、マンガだけでなくサブカルチャー全般で、ミリタリーと美少女の要素を掛け合わせたテーマが隆盛しています。その源流には、新谷先生が描いてこられた作品群があるような気がしています。少年マンガ誌で、可愛い女の子を主人公に描くようになったきっかけをお聞かせください。

新谷 『エリア88』や『ふたり鷹』などの作品では、少年を主人公に描きましたが、「これからの時代は女の子を主人公にした作品が増える」と感じていました。あと、松本零士先生との問答で少年マンガを選んだ僕ですが、やっぱり可愛らしい少女を描きたいという思いがくすぶっていたんです。

『クレオパトラD.C.』では、黒人の少女/クレオパトラを主人公にしました。ミニスカート姿の女の子が巨大コングロマリットの頂点に立ち、アメリカ海軍の第七艦隊や戦闘機まで自在に操る姿にインパクトを感じた読者も多いようです。それでも、私が少女マンガでデビューしたことを知っているファンは、意外に感じなかったと思います。

 これからの時代は、マンガのテーマが日本だけにとどまらず、世界を舞台にした作品が増えると言う目論見がありました。『砂の薔薇 デザート・ローズ』では、対テロを目指して活躍する美女の傭兵チームを描いています。国際色豊かなメンバーを描くため、セリフ回しなどで工夫をしました。また、女の子たちのキャラクターに合った拳銃を選んで描いていましたが、今回の画集にそれについてのコメントを寄せていますので、ぜひ読んでもらえればと思います。

――最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

新谷 画集に掲載された作品を見ていると、実に多くのジャンルに挑戦し、たくさんの作品を描いて来たなと、感慨深いものがあります。毎回、少しでも面白いストーリーを描きたいと思い、不眠不休で命を削るような思いをしてアイディアをひねり出していました。少年マンガ誌の部数が低迷し、大変な時代ではありますが、僕の作品を集めた画集がいま一度マンガ界に元気を取り戻すヒントになってくれればと思います。

※文中一部敬称略

(c)新谷かおる

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