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「魔の1月」と呼ばれた、富野監督作品の奇妙な共通点。「打ち切り」は解消したが…

マグミクス / 2021年1月20日 18時10分

「魔の1月」と呼ばれた、富野監督作品の奇妙な共通点。「打ち切り」は解消したが…

■『ガンダム』に続き『イデオン』も…

『機動戦士ガンダム』(以下ガンダム)をはじめとする人気アニメ作品を多く手掛けた富野由悠季監督。その富野監督の作品には、一時期ひとつの「ジンクス」がありました。それは、たいへん不名誉な「1月に作品が打ち切りになる」というものです。はたして事実なのか検証してみましょう。

 富野監督の初監督作品は、1972年にTV放送された手塚治虫のマンガが原作となったアニメ『海のトリトン』です。その後、いくつものアニメ作品の監督をしていますが、打ち切りになった作品はありません。はじめて打ち切りになった作品、それが『ガンダム』でした。

『ガンダム』が打ち切りになった原因は、スポンサーが販売するオモチャの売り上げが悪かったことと言われています。その結果、本来は1年4クール全52話の予定だった『ガンダム』は1月放送分、全43話で終了することとなりました。

 ちなみに打ち切り決定後、年末商戦用に発売された「Gアーマー」の売り上げが好調で、打ち切りの撤回がスポンサーから打診されますが、すでに製作は進んでいて延長できなかったといいます。

 富野監督は『ガンダム』の時間枠で放送された後番組『無敵ロボ トライダーG7』ではメインスタッフから外れました。しかし、斧谷稔名義で絵コンテにのみ参加してします。このほかにも『ザ・ウルトラマン』、『宇宙大帝ゴッドシグマ』にも絵コンテで参加していました。

 そして3か月ほどの空白期間を経て、東京12チャンネル(現在のテレビ東京)で『伝説巨神イデオン』(以下イデオン)の総監督を担当します。

 しかし、この『イデオン』も打ち切りが決まってしまいました。その最終回放映となったのが、またしても1月だったのです。

 一部のファンから「魔の1月」と言われるのも仕方ありません。偶然とはいえ、2作品続けて1月に打ち切りだったのですから。ともに放送当時からアニメファンの注目が高かっただけに、富野監督作品にとって嫌なジンクスと頭のどこかに刻まれたのかもしれません。

 この後、1年ほど富野監督の新しい作品はTVでは見られなくなりました。その理由は、ファンの人気に応えた形で『ガンダム』と『イデオン』が劇場版として製作されることになったからです。

■やがてジンクスは解消されるが…

『戦闘メカ ザブングル』は1982年2月に放送開始、翌1983年1月に放送終了となっている。画像は「戦闘メカ ザブングル DVD-BOX PART2」(タキコーポレーション)

 富野監督が久しぶりにTVアニメに帰ってきたのは、『ガンダム』と同じ放送枠の『戦闘メカ ザブングル』でした。しかし、この作品も1月終了という展開を迎えます。

……と、先に言うと誤解を生みますが、打ち切りというわけではありません。『ガンダム』以降、この放送枠は基本的に2月開始、翌年1月終了の1年間という形になっていたからでした。

 とはいえ、「富野監督作品は1月終了」というジンクスは、「打ち切り」という文字が消えただけで、いぜん記録更新中となってしまうわけです。続いて放送された『聖戦士ダンバイン』も1月に終了。1年間放送されてはいますが、ジンクスからは抜けられていません。

 しかし、このジンクスも終わる時がやって来ました。1984年から放送された『重戦機エルガイム』は、当初の予定である50話から4話延長されて全54話、2月末に最終回を迎えたからです。この延長は打ち切り同様、急きょ決まったものでした。そして今のところ、富野監督作品としては唯一の延長されたTVアニメ作品であり、最長話数の作品です。

 これにより、「富野監督のテレビアニメ作品は1月で終わる」という記録は途切れました。これにてジンクスも終了です。

 ところが、この話にはまだ続きがありました。

 この後、放送された『機動戦士Zガンダム』は予定通り、1年間の放送で全50話製作されたのですが、その後番組であり、この放送枠で最後の富野監督作品となった『機動戦士ガンダムZZ』は、全47話の放送で1月末に最終回を迎えます。

 この放送枠では、この後にも多くのアニメ作品が放映されましたが、90年代を代表する「勇者シリーズ」など、多くの作品が2月開始、1月終了というサイクルで1年間放送されていました。

 一方、富野監督のテレビシリーズ作品は別の時間枠でいくつか放送されていますが、1年間の4クール、または半年2クールという形で、特にスケジュールの変更は行われていません。

 こうやって並べて考えると、ジンクスはいつの間にか、「放送枠」そのものに移行したのかもしれないですね。ジンクスというよりも製作側の都合かもしれません。

 ジンクスというのは特に意味はないものですが、同じことが続くとどうしても気になるもの。みなさんの周りにも、そんな偶然はありませんか?

(加々美利治)

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