自粛生活で再びブームの「リリアン」 昭和女子が熱中、でも「遊び方」がちょっと違う?
マグミクス / 2021年1月23日 16時50分
■手芸初心者でも簡単にできるのが魅力
「コロナ禍」でステイホームが求められる今、おうち時間を少しでも楽しく過ごそうと、手芸を始める人が増えています。もともと、ハンドメイド作品を扱う通販サイトは、あたたかみのあるオンリーワンの品を求める人たちに大人気でしたが、自宅で過ごす時間が増えた今だからこそ、自分の手でも作ってみたいという気持ちが高まってきたのでしょう。
とはいえ、手芸初心者にとって、いきなり細かなテクニックが必要とされるものでは敷居が高く感じてしまいます。ということでビギナーに人気なのが「リリアン」です。
編み機に糸をかけて編み棒ですくうという簡単な作業で、ひも状の編み物ができるもので、手芸入門にはピッタリ。編みあげた紐をアレンジすれば、あみぐるみやアクセサリーなども作れて、簡単なのに達成感も十分です。道具は、手芸店はもちろん100円ショップでも手に入るため、気軽に試せてハマる人が急増中。最近では「リリアン」専門の手芸本も出版されています。
この「リリアン」、実は1970年代に女の子たちの間で大流行した玩具だったこと、ご存じですか?
そもそもこの編み物玩具(現在は大人にも楽しみが広がっていますが、当時は少女たちの玩具でした)、「リリアン」という名前で覚えていたものの、「リリヤン」とも呼ばれていたような……?
どちらが正しいのか調べてみたところ、「リリヤン」とは、人造絹糸(レーヨン)を細く編み込んだ手芸用の紐のことで、大正12年に京都のメリヤス職人さんが発明したものなのだそうです。そして、このリリヤン糸を筒状の編み機(編み機自体は「ニッチング」と呼ばれます)で編む手芸が「リリアン」だそうです。糸が「リリヤン」、手芸が「リリアン」。もっとも最近ではリリアン糸だけでなく、毛糸などを使って編むことも多いようですね。
現在のリリアンはさまざまな作品が作れるように、編み機も楕円形だったり、直径が手の平サイズよりも大きかったりと、選ぶのに迷うほどの種類が出ています。一方1970年代、女の子たちの間で爆発的に流行った当時は、縄跳びの持ち手のような筒状のもののみだったと記憶しています。玩具屋さんだけでなく、駄菓子屋さんやお祭りの屋台でも売られていたものです。
■昭和少女たちは、ただひたすら紐を編んでいた
現在発売されている「ワンダーリリアン」(クローバー)。親指だけで回せるディスクや糸をすくいやすい編み棒など、使いやすく進化したイマドキのリリアン
1970年代、女の子たちはヒマさえあればリリアンの糸をすくっていました。あまり手先が器用でなくてもできるため、リリアンには仲間はずれはなし。小学校の休み時間になると、女の子たちは仲良しグループで集まってリリアンを編んでいました。一緒に編んでいるからとはいえおしゃべりをするわけでもなく、それぞれが無心に糸をすくう様子はちょっと不思議な光景かもしれませんが、みんな“誰よりも一番長い紐を編んでやるぞ”と静かに心を燃やしていたのです。
編み機に糸をかけてすくうという単純な作業なのに、なぜかそれが楽しくて、やめられない止まらない。気づけばリリアンの編み機から、何に使うでもない紐が、どんどん伸びていきました。
そう、いまどきのリリアンは、編み上げた紐であみぐるみやアクセサリーを作るという“その先”がありますが、70年代当時はただひたすら“長い紐を編む”だけのものだったのです。ですから、編みあげた紐には使い道がなく、せっかく編んだのにほどいてまた編み直したり、なぜかお母さんにプレゼントしてみたり、意味もなく何かを縛ってみたり……。編み上げた紐にはあまり魅力はなかったものの、純粋に“編む”という行為の楽しさを感じた遊びだったのです。
ステイホームのなかで初めてリリアンを手に取った方たちもきっと、ひたすら“編む”喜びにハマっているのではないでしょうか? そして、かつてリリアンに夢中になった少女たちにも、人生で2度目のリリアンブームが来ているかも? あなたも幸せなおうち時間のために、リリアン・タイムを過ごしてみませんか?
(古屋啓子)
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