90年代「勇者シリーズ」築いた『エクスカイザー』の最終回。“宝”の意味を問いかける
マグミクス / 2021年1月26日 7時10分
![90年代「勇者シリーズ」築いた『エクスカイザー』の最終回。“宝”の意味を問いかける](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_45475_0-small.jpg)
■勇者誕生の陰には「トランスフォーマー」があった
本日1月26日は、30年前の1991年に『勇者エクスカイザー』が最終回を迎えた日です。後に「勇者シリーズ」として、90年代を代表するロボットアニメシリーズとなった記念すべき第1作について振り返ってみましょう。
本作の放送枠は長年、名古屋テレビとサンライズが製作したアニメを放送していました。ただし、1988年2月6日から4月23日までは日本とフランスの合作としてアニメファンには話題で、国内ではOVAとして販売された『宇宙伝説ユリシーズ31』が一時的に放送されています。ちなみに国内での制作は東京ムービー新社でした。
もともとは『機動戦士ガンダム』(1979年)以降、サンライズ制作のロボットアニメを放送していた枠でしたが、『機甲戦記ドラグナー』(1987年)以降は前述の『宇宙伝説ユリシーズ31』を挟んだのち、主人公たちが鎧を装着して戦うバトルスーツものであった『鎧伝サムライトルーパー』(1988年)、永井豪原作で実際のプロレスラーも現れた異色作『獣神ライガー』(1989年)と、バラエティに富んだラインナップになります。この時、メインスポンサーがバンダイからタカラ(現在のタカラトミー)に変わっていました。
『機甲戦記ドラグナー』までは主にプラモデルがメインスポンサーの主力商品でしたが、それがオモチャに変わったことで視聴する年齢層の引き下げを積極的に考慮したのが本作です。「純粋な子供番組に回帰するため複雑な設定は排除する」という姿勢で本作の企画はスタートしました。
そして、スポンサーであるタカラの人気シリーズ『トランスフォーマー』のアニメ放送が終了したこともあり、実在する乗り物がロボットに変形するオモチャを主力商品とすることになります。この時に「地球外から来た生命体が乗り物に姿を変える」という要素も引き継いで本作は誕生しました。
また、『トランスフォーマー』からは意志を持った巨大ロボと主人公の少年が友情をむすぶという要素も取り入れられ、後の勇者シリーズにも引き継がれる基本コンセプトというべきものは最初から完成します。
こうして後に「リアルロボットもの」と呼ばれることになった作風から、原点回帰ともいうべき「スーパーロボットもの」へと、この放送枠の方向性は変わることになりました。
■心に残る『エクスカイザー』最終回のセリフ
『勇者エクスカイザー』に登場したグレートエクスカイザー。最終決戦で見せた「マスク割れ」の演出はのちの勇者シリーズにも引き継がれる。画像は「グレートエクスカイザー 全高約180mmプラモデル」(壽屋)
こうして1990年2月3日から放送開始した『勇者エクスカイザー』は、早い段階から子供たちに受け入れられ、注目を集める人気作品となります。その理由はいくつか考えられますが、やはりスタッフの目指した方向性、すなわち「勧善懲悪で一話完結」というわかりやすいストーリーが受け入れられたからでしょう。
長い間、『機動戦士ガンダム』以降のリアルロボット系の作品がロボットアニメの王道だったせいで、子供たちには直球であるヒーロー然としたロボットアニメが新鮮に映ったのかもしれません。また、アニメファンのなかにも一周回って昔懐かしい雰囲気を持った作品に魅力を感じた人も多くいました。
オモチャの売り上げも好調で、年末のクリスマス商戦では「スーパーファミコン」に一歩譲りましたが、この年のキャラクター玩具ではもっとも売れた商品になります。
物語は、敵である宇宙海賊ガイスターが地球にあるさまざまな「宝」を狙い、それをエクスカイザーたち宇宙警察カイザーズが阻止するという単純明快な展開で毎回繰り広げられました。
しかし、この「宝」とはあくまで人間がそう思うもの。中には宇宙人であるカイザーズやガイスターには理解できないもの、手に入れることが不可能なものがありました。そのギャップが笑いになる時もあることが作品全体の明るさにつながり、結果的に視聴者が肩の力を抜いて見る娯楽作となったわけです。
この「宝」というキーワード、当然スポンサーのタカラに引っかけていることは言うまでもありません。
そしてこの「宝」が、最終回となった48話「本当の宝物」で重要な意味を持ちます。エクスカイザーの「この宇宙に生きるすべての命が宝だ!」という言葉を聞いたガイスターのボスであるダイノガイストの行動は、まだ作品を見たことのない人には、絶対に見てほしい名シーンでした。
最終回と言えば、勇者シリーズでは定番となる主役ロボのマスクが壊れて口元が出るというシーンが、本作から描かれています。後にオマージュされることも多い名シーンですね。
こうして本作の放送は終わりましたが、好評だったことからシリーズ化が決まり、次なる勇者にバトンが渡されることになるのでした。そして、連続放送されたロボットアニメシリーズとしては異例の8年の長きにわたって製作され、多くの子供たちとファンに愛されることになるのです。
(加々美利治)
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