『仮面ライダーアギト』放送20周年。平成ライダーの「スタンダード」確立した意欲作
マグミクス / 2021年1月28日 17時30分
■続編として製作されながら、大胆な変革も
2001年1月28日に放送開始した『仮面ライダーアギト』は、本日で20周年を迎えました。平成ライダーシリーズの基礎を築いたとも言われる、その魅力について振り返ってみましょう。
本作は「仮面ライダー30周年記念番組」で、第1話冒頭では「30th Anniversary」と表記されていました。前作『仮面ライダークウガ』のヒットにより、続けて仮面ライダーの名前を冠する作品として誕生した本作は、当初は「前作の2年後」という設定で、企画段階ではクウガとの共演もあったそうです。
そのため、続編と思わしき設定が随所に見受けられました。しかし、結果的にクウガとは別の世界というかたちになります。ただし『仮面ライダーディケイド』など、その後に製作された複数のメディア展開で関連付けた作品が多くありました。
本作では3人の仮面ライダーが活躍します。この複数の仮面ライダーが最初から登場するという展開は今までにありません。これにより、それまでにはなかった「仮面ライダー同士の戦い」という要素が作品に加わります。そして、後番組である『仮面ライダー龍騎』では、その点をメインとして作品が作られていました。
後のシリーズでも、この仮面ライダー同士の戦いは効果的に使われ、本作が仮面ライダーシリーズに残した要素のひとつとなっています。
3人の仮面ライダーはそれぞれ、「既に仮面ライダーである男アギト」、「仮面ライダーになろうとする男G3」、「仮面ライダーになってしまった男ギルス」という異なった方向性から仮面ライダーを描いていました。
デザイン的にもクウガを踏襲した平成仮面ライダーらしいアギト、メカを前面に出した強化スーツであるG3(-X)、生物感があり野獣的なギルスと、それぞれが個性的な姿をしています。
その後のシリーズでは、番組のテーマに合わせて同じタイプの仮面ライダーが複数いるというのが主流ですから、元祖にして、まったく異なるタイプの個性的な仮面ライダーたちを配置していた意欲作だと言えるでしょう。
この仮面ライダーに変身する3人の人物も個性豊かでした。それぞれを演じた賀集利樹さん、要潤さん、友井雄亮さんは、前作から引き続いて「イケメン」と呼ばれる俳優陣だったことで、子供やファンだけでなく、一緒に見ているお母さん層の興味を引く効果もあげています。番組終了後、3人ともそれぞれ話題になっていたことからも、そのことがわかります。
同時期に放送していた戦隊シリーズ『百獣戦隊ガオレンジャー』とともに、特撮作品が新人役者の登竜門となり始めた、初期の作品と言えるかもしれません。
■『アギト』が後の平成シリーズに残したもの
物語後半で登場した新たなライダー「アナザーアギト」も、番組を大いに盛り上げた。画像は「S.H.フィギュアーツ アナザーアギト」(BANDAI SPIRITS)
本作から顕著になったことといえば、1話完結でない連続ストーリーの様相が強くなったことです。
連続ストーリーは前作『仮面ライダークウガ』から導入されていましたが、本作では多くの伏線や謎が散りばめられ、それが次第に解けていくという展開で物語が進んでいきました。
記憶喪失の主人公、目的のわからない敵・アンノウン、あかつき号事件とは? ひとつの謎が解けても新たな謎が現れるというミステリー要素が視聴者の目を釘付けにします。
また特徴的な点といえば、本作以降は4作ほど各話にサブタイトルがありません。これはチーフプロデューサーの白倉伸一郎さんが「サブタイトルが嫌い」だからだと言われています。
そしてエンディングが廃止されました。これは、後のシリーズでは『仮面ライダー響鬼』(途中からエンディングは省略)と、現在放映中の『仮面ライダーセイバー』以外には踏襲されています。この分の時間は本編に回されていました。代わりに、劇中で使われていた挿入歌がエンディングという扱いでクレジットされています。
この本編に流れる挿入歌は戦闘シーンを盛り上げる役目を存分に果たし、エンディング並みの知名度がありました。カラオケで定番曲にしている人も多いです。
その戦闘シーンも、キックでとどめを刺すという王道的な戦い方のアギト、さまざまなアタッチメント武器で戦うG3(-X)、咆哮するなど野性味あふれる戦い方のギルスと、それぞれの戦い方を見せて好評でした。
平成ライダーで、はじめて夏の劇場版が製作されたのも本作です。東映創立50周年記念作品でもありました。ここで登場したG4は、はじめての劇場版オリジナル平成ライダーです。
番組後半にはアギトは新フォーム「シャイニングフォーム」となりますが、このようにデザインが大きく異なる強化形態になるというのも前作まではなく(クウガのアルティメットフォームへの変身は1話のみだった)、以降の平成シリーズでは中盤以降の強化形態が定番になっていきました。
また、同じく後半では「アナザーアギト」という第4の仮面ライダーが登場、そのインパクトから熱烈なファンを生みます。しかし、商品化されないゲスト扱いで終わってしまいました。放送終了後の現在はバンダイなどで商品化されているようです。
こうして数々の話題と後のシリーズに引き継がれるパターンを生み出した本作の平均視聴率は、平成シリーズ最高の11.7%という、唯一の二ケタ台をたたき出します。
この数字を見ると、本作の成功がなければ平成ライダーは現在のように定番化されてシリーズとはならなかったかもしれませんね。
(加々美利治)
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