押井守監督が恋のキューピッド役に? 実写映画に出演するアニメ監督たち
マグミクス / 2021年2月5日 11時40分
■終電後のカフェから始まる恋愛物語
劇場アニメ『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)や『イノセンス』(2004年)などで知られるアニメ界の巨匠・押井守監督が、現在公開中の映画『花束みたいな恋をした』に出演しています。人気俳優の菅田将暉さんと有村架純さんがW主演した恋愛映画です。気になる押井監督の役ですが、なんと本人役としての出演。主人公たちが交際を始めるきっかけとなる、恋のキューピッドを演じています。
脚本家の坂元裕二氏と土井裕泰監督の人気ドラマ『カルテット』(TBS系)以来となるタッグ作『花束みたいな恋をした』は、こんな出逢いから始まる物語です。大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)は、その夜が初対面。ふたりは京王線明大前駅で終電に乗りそびれたことから、深夜営業していたカフェでたまたま一緒に過ごすことになります。
カフェの一席には、ニット帽をかぶった押井監督がいるではありませんか。でも、絹と麦のふたり以外は、誰も押井監督がいることに気づいていません。
■押井監督で盛り上がる主人公たち
「あっちの席に神がいます」
「犬が好きな人ですよ。あと、立ち食い蕎麦」
「好き嫌いは別にして、押井守を認知していることは広く一般常識であるべきです」
押井監督がきっかけで、ふたりは会話が弾み、お互いの趣味や考え方がよく似ていることが分かります。マンガ『宝石の国』や『ゴールデンカムイ』を愛読し、お気に入りの映画館は「早稲田松竹」「下高井戸シネマ」といった名画座。芥川賞作家・今村夏子さんの短編小説『ピクニック』が好きだというのも一緒でした。
意気投合した麦と絹はデートを重ね、恋愛関係へと発展します。文化系女子と文化系男子との恋愛模様が、若手演技派俳優であるふたりによって、リアリティーたっぷりに描かれていきます。好きなものがぴったり一致する主人公たちのラブラブぶりは、観客が思わず照れてしまうほど赤裸々さです。
押井監督の出演は1シーンだけですが、麦と絹の人生に至福の5年間をもたらすことになる重要な役どころとなっています。ただし、押井監督本人はそのことにはまったく気づいていません。劇団「山の手事情社」出身である土井監督の遊び心のある演出にも、ほっこりさせられます。
■俳優としても引っ張りだこな庵野監督
『ラストレター』DVD通常版(東宝)。出演している庵野秀明監督もジャケットに登場
アニメ界の人気監督が実写映画に俳優として起用されているケースは、今回の押井監督だけではありません。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開が待たれる庵野秀明監督は、岩井俊二監督の『ラストレター』(2020年)で、松たか子さんの夫である漫画家役を実にユーモラスに演じてみせています。
アマチュア時代には自主映画『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』(1983年)に主演したこともある庵野監督は、俳優としての存在感もなかなかなものがあります。
松尾スズキ監督のコメディ映画『恋の門』(2004年)には、奥さまである漫画家・安野モヨコさんと夫婦役で共演しているほか、宮崎駿監督の長編アニメ『風立ちぬ』(2013年)では声優として航空技術者・堀越二郎を演じています。自分の理想を追求し続ける堀越の苦悩は、庵野監督自身と重なる部分があったのではでしょうか。
また、庵野監督は実写映画『シン・ゴジラ』(2016年)では、ゴジラの謎の鍵を握る学者・牧悟郎として、敬愛する岡本喜八監督を写真で登場させています。庵野監督は岡本監督の戦争映画を繰り返し観ることで、カット割りや台詞回しのテンポなどを学んだそうです。
『シン・ゴジラ』には他にも塚本晋也監督、犬童一心監督、緒方明監督、原一男監督、松尾スズキ監督らが出演し、限られた出番ながらそれぞれ個性的な印象を残しています。
■戦中生まれの貫禄を感じさせる富野監督
押井守監督が本人役で出演している、公開中の映画『花束みたいな恋をした』。画像は主演の菅田将暉と有村架純のシーン
アニメ界の巨匠といえば、『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)の富野由悠季監督も忘れるわけにはいきません。樋口真嗣監督のSFパニック映画『日本沈没』(2006年)に、海外へ運び出される国宝級の仏像を神妙な顔で見送る京都の高僧役でカメオ出演しています。
ノンフィクション映画『日本のいちばん長い夏』(2010年)では、元陸軍大将・今村均として終戦時の記憶を振り返っています。戦中生まれのベテラン監督ならではの貫禄を感じさせます。『日本のいちばん長い夏』のDVDには、富野監督が参加したトークショーも特典として収録されているので必見です。太平洋戦争が『機動戦士ガンダム』に与えた影響を語っています。
普段は声優やアニメーターたちをディレクションする立場にあるアニメーション監督にとって、他の監督からの演出を受けるのは新鮮な体験のようです。アニメスタジオにずっと篭っての作業が多いので、実写映画の撮影現場を楽しみながら演じているように感じられます。
体全身を使う俳優としての体験が刺激となって、新作の創作意欲が湧くこともあるかもしれません。アニメーション監督たちの意外な俳優ぶりにも、一度注目してみてください。
(長野辰次)
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