少数精鋭の戦隊『サンバルカン』放送40年。「異例」だらけだった、悪役と主役の扱い
マグミクス / 2021年2月7日 7時10分
■少数精鋭で女性メンバー不在の3人チーム
1981年2月7日に放送を開始し、本日で40周年を迎えた『太陽戦隊サンバルカン』。「戦隊シリーズ」という言葉も使われ始めた本作が、それまでのパターンを積極的に変革したことでシリーズの幅が広がったと言われています。
それまでの戦隊シリーズと大きく変更された点、それは男性だけのチーム、しかも3人組というところでした。
ちなみに、その後のシリーズ作でも女性がいない戦隊はありません。本作のように3人組でスタートした戦隊も、必ず初期メンバーに女性が加わっています。放映当時、女性メンバーがいないことで多くの苦情が寄せられたことは有名な話です。その後、女性枠がふたたび消えることなくむしろ増えていくわけですから、やはり戦隊には女性が不可欠だったということです。
3人組という人数の少なさは、「戦隊といえば5人」というセオリーを打破したかったからでした。この試みにより、本作の戦闘シーンのスピード感、テンポの良さは秀逸。全編にわたってキレのあるアクションを見せてくれました。
後の戦隊シリーズでも「スタート時は3人組」というパターンはありましたが、最後まで追加戦士が登場せず、3人で戦い抜いた戦隊は他にありません。
また、3人組の赤、青、黄色の3色というパターンも、本作から後の戦隊に受け継がれています(細かく言えば『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のパトレンジャーですが、ルパンレンジャーは赤、青、黄色の3色です)。
動物モチーフが取り入れられたのも本作が初めてでした。その際に空、海、陸という要素を加えたことで、それぞれが三軍の代表という軍事要素も加えて、説得力のある設定となっています。
しかし女性枠がまったくないというわけでなく、ヒロイン枠として嵐山長官の娘・美佐が登場していました。しかもオープニングではキャストテロップ付き映像シーンもあるという、戦隊メンバー並みの扱いです。
サンバルカンのサポートだけでなく、戦闘員としても優秀で、「白バラ仮面」と名乗って戦ったことありました。実質的には4人目のメンバーに近いポジションだったと思います。
しかし、個人的にはラスボスである全能の神をバルカンスティックで倒した嵐山長官が4人目のサンバルカンとは思っていますけど(笑)。
■異例の敵役「再登板」と主役交代
主役交代で二代目となったバルイーグルは、日本刀を使いこなして視聴者に強い印象を与えた。画像は「S.H.フィギュアーツ 太陽戦隊サンバルカン バルイーグル ABS&PVC製塗装済み可動フィギュア」(BANDAI SPIRITS)
敵勢力に目を移すと、前作『電子戦隊デンジマン』から引き続き登場しているヘドリアン女王の存在が目を引きます。作品をまたいでの登場は戦隊シリーズでは初めてで、これ以降には存在しない唯一のことでした。
他の作品を見回しても、敵側の作品をまたいでのレギュラー登場は、「マジンガーシリーズ」のゴーゴン大公、「プリキュア5シリーズ」のブンビーくらいでしょうか。とにかく異例です。
これはヘドリアン女王役の曽我町子さんをふたたび使いたかったという製作側の事情でした。過去にも宮内洋さん、大葉健二さんのように前作から続いてのレギュラー出演はありましたが、同じ役柄でしかも敵役というのは大抜擢。曽我さんがどれだけ別格だったかがわかります。
このヘドリアン女王の登場で前作との世界観がつながり、デンジ星人の末裔が出るエピソードがありました。この回のゲストで出演したのが三原順子(現在は三原じゅん子)さん。過去にも『スパイダーマン』、『バトルフィーバーJ』、『電子戦隊デンジマン』とゲスト出演していましたが、この頃は主演ドラマが製作されているほどの人気急上昇中。ゆえに、この回のサブタイトルは「エスパー」、「日見子よ」と通常よりも短くして、番組欄のキャストに名前を入れたという逸話があります。
しかし放送中、誰もがおどろいたのは主人公であるバルイーグルの交代劇でした。これまでにもメンバーの交代はありましたが、主演であるレッドの交代は前例がなく、後にも例のない異例の事態です。
これに対して、鈴木武幸プロデューサーは「毎週1話完結で敵も味方も変化がないのはもう古い」という考えでした。
二代目となったバルイーグルはそれまでのアクションに加えて、日本刀で戦うヒーローという要素が加わります。これは、演じる五代高之さんが剣道三段の腕前だったからでした。
戦隊ではじめての長剣、しかもデザイン的にはほとんど日本刀そのままを使う二代目バルイーグルは、同時期に登場した敵側の新幹部アマゾンキラーとともに番組後半を大いに盛り上げます。
本作は『スパイダーマン』以降から続くマーベル・コミックとの契約作品としては最後の作品となりました。
それとは別に、アメリカから海外版作成のオファーがあったと言われています。もしも、その時に海外版の話が実現していれば、「パワーレンジャー」の企画は10年以上前に始まっていたかもしれませんね。
(加々美利治)
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