2月7日はアニメ『夢戦士ウイングマン』の放映開始日。心に残ったラストシーンの違い
マグミクス / 2021年2月7日 9時40分
![2月7日はアニメ『夢戦士ウイングマン』の放映開始日。心に残ったラストシーンの違い](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_46563_0-small.jpg)
■「コスプレ」要素をいち早く盛り込んだマンガ作品
37年前の今日、1984年2月7日にTVアニメ『夢戦士ウイングマン』の放送が始まりました。筆者が初めて『夢戦士ウイングマン』を見たのは小学生の頃だったのですが、オープニングで登場したビキニ姿のアオイさんの姿に、思わず目が釘付けになったのを思い出します。
第1話のタイトルが「空からどっきりビキニの娘」なので、そこを見て欲しかったというのはよくわかりますが、間もなく思春期を迎える少年に対して、これは卑怯と言うものでしょう。抵抗できるわけがないのですから。
『夢戦士ウイングマン』は1984年2月7日から1985年2月26日にかけて放送されたTVアニメです。原作は「週刊少年ジャンプ」に桂正和氏が連載した『ウイングマン』で、アニメ化に際して改題されています。
本作の主人公である広野健太は、学校の平和を守るために日夜ヒーロー活動に勤しんでいる中学一年生の少年です。ある日、そんな健太のもとに空からビキニ姿の少女・アオイが現れ、それまでの日常は一変します。書き込んだ内容を現実にできる「ドリムノート」の力により、本物のヒーロー「ウイングマン」への変身能力を手に入れた健太は、ヒーローへ向けての第一歩を踏み出すことになったのです。
現代であればコスプレイヤーが登場する作品は珍しくはありませんが、原作の連載が開始された1983年は、コスプレの存在が認知されるようになった初期の時代に当たります。『ウイングマン』はおそらくコスプレイヤーを主人公としたマンガとして、最初期の作品になるのではないでしょうか。
当時、桂氏の担当編集者を務めていたのは、鳥山明氏を見い出し『Dr.スランプ アラレちゃん』や『ドラゴンボール』といった大ヒット作を飛ばした鳥嶋和彦氏です。鳥嶋氏は桂氏が新人の登竜門であった「フレッシュジャンプ賞」に投稿した作品が選外だったにも関わらず、その才能に着目し、後に『電影少女』など多くの作品をともに作り上げています。
桂氏と鳥嶋氏、時代の最先端を行くことをまるで恐れないふたりの傑出した才能が、『ウイングマン』という異色の傑作を生み出したことは間違いないでしょう。
■シリアスな原作、ギャグテイスト多めのアニメ
さて、原作の『ウイングマン』の序盤では、異次元「ポドリムス」を支配する悪の帝王リメルと、その部下との戦いが繰り広げられます。ろくに戦闘力を持たないただの中学生だった健太は当然のごとく苦戦を余儀なくされ、敗北し傷つきながらも宿敵となったキータクラーや怪人的な存在である「シードマン」たちとの激闘を戦い抜いていきます。
それに対し、アニメはもちろん強敵との戦いはありますが、どちらかというと学園ギャグアニメとしてのテイストが強く、アオイと並ぶ2大ヒロインである小川美紅との三角関係が描かれていきます。好みの問題はありますが、どちらかというと筆者は原作版の方に惹かれているのは確かです。
とはいえ、アニメにはアニメならではの良さも存在しています。主人公の健太を演じていたのは、本作が初主演となった堀川亮氏(現:堀川りょう)です。後に同じ「週刊少年ジャンプ」原作作品である『聖闘士星矢』のアンドロメダ瞬や、『ドラゴンボール』シリーズのベジータなど、重要な役を務めた堀川氏の、ひときわ若々しい演技を楽しめるのも、本作の大きな魅力です。
また、オープニングテーマの「異次元ストーリー」は、「現実と異次元の狭間での戦い」という本作のエッセンスを十分に抽出しきり、テクノの要素を含みながらも幻想的な雰囲気を併せ持った名曲です。
エンディングテーマの「WING LOVE」も、本作が持つ青春ラブコメと変身ヒーローの両要素をうまくかみ合わせた、その日の終わりを締めくくるにふさわしい爽やかな曲に仕上がっています。この両曲に恵まれたことが、TVアニメ『ウイングマン』の価値を大きく高めていると筆者は感じています。
そして『ウイングマン』といえば、どうしてもラストシーンを外すことは出来ません。『ウイングマン』はマンガよりも先にアニメが最終回を迎えており、どちらも健太は記憶を失い日常に戻っていくのですが、そこまでの過程は大きく異なっています。
原作のラスト前で健太がドリムノートに書き込んだ悲痛な願いと、最終回で願いが叶いながらも、ともにいられなかったアオイとの関係は、少年少女が過ごした淡い青春の物語として、印象深いラストを迎えています。当時の筆者にはアニメの最終回はなんとなく受け入れられたのですが、原作のラストは心のなかのかすかな傷として、たまに痛みを感じることがあるのです。今でも。
(早川清一朗)
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