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『ドラクエ3』の謎 勇者が頭に着けている“輪っか”って? 僧侶はなぜ全身タイツ?

マグミクス / 2021年2月10日 7時40分

『ドラクエ3』の謎 勇者が頭に着けている“輪っか”って? 僧侶はなぜ全身タイツ?

■『ドラクエIII』ファッションの背後に隠された“忘れられた”設定

 1988年2月10日は『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以下、ドラクエIII)の発売日です。日本中で「ドラクエ」ブームを巻き起こし、社会現象とまでなった本作は今なお語り継がれるまさしく伝説のRPGです。

 その影響は凄まじく、日本で「勇者」といえば本作の主人公をイメージする人も多いはず。実際、令和になった現在でもRPGのパロディではこの『ドラクエIII』の勇者デザインを踏襲したものが多数見受けられ、改めてそのデザインの普遍性に驚かされます。

 そんな日本のRPGの看板を背負い続けている『ドラクエIII』の勇者ですが、冷静に見るとなかなかどうして奇抜なファッションをしています。シリーズ前2作の主人公はぞれぞれ頭に被り物をしているのに対し『ドラクエIII』の勇者は逆立ったヘアスタイルに青い珠をはめた“輪っか”状のものを装着しています……これは一体、なんなのでしょうか?

 長年「勇者」のイメージを担ってきたこの“輪っか”ですが『ドラクエIII』の物語でも何か言及があるわけではありません。朝、目覚めたらもう着けています。他のナンバリング(例えば『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』)では「勇者のかぶと」という名称で登場するこの“輪っか”ですが、正直のところ「かぶと」と呼ぶには若干、心もとありません。あえて既存の名称をあてがうなら、小さな冠を意味する「コロネット」などが妥当かと思われます。実際、『ドラクエIII』の世界を基盤に作られたアニメ版の『ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説』ではあの“輪っか”は青い珠の台座という設定で、防具としては役割を果たしてはいませんでした。

 もしあの“輪っか”が「青い珠」の台座に過ぎないなら、そもそも「青い珠」はなんなのでしょうか。ここを突き詰めていくと、いつも間にか忘れられてしまった『ドラクエIII』におけるキャラデザインの裏設定が浮かび上がってきます。

 パッケージにズラり並んだ『ドラクエIII』のキャラクターたちをよく見てみましょう。皆、どこかに「青い珠」を身に着けていることがわかるはずです。一方、バラモスやゾーマは「赤い珠」を身につけています。つまり青い珠と赤い珠は敵対関係を表しており、ビジュアルで区別できるよう設計されたデザインでした。

 ところがこの設定も1996年に発売されたスーパーファミコン版で消失してしまいます。キャラクターたちの珠の色は職業によってバラバラで、統一されていません。これは説明書の公式イラストが鳥山明氏からアニメーターの中鶴勝祥氏に引き継がれたため、と言われています。それゆえ特にストーリーに絡まず、また記号的な意味もない「青い珠」が“輪っか”に残ったままとなったのです。

 ここまで勇者の“輪っか”と「青い珠」について述べてきましたが『ドラクエIII』最大の謎ともいえる僧侶の服装についても解説しなくてはなりません。僧侶といえばオレンジ色の全身タイツの上から貫頭エプロンを着用していることでおなじみです。「ドラクエ」シリーズは中世ファンタジー世界を舞台としているので、服飾はある程度中世ヨーロッパの気風を反映しているのですが、当時の聖職者があのような全身タイツを着用していたわけでありません。ただし、あの全身タイツをここでも敢えて既存のもので呼称するなら中世フランスで王侯貴族らが着用していた「ショース」というタイツ状の脚衣(をもとにしたデザイン)と言えるでしょう。あの貫頭式のエプロンも十字架をドット絵でわかりやすく表現するためのデザインと考えれば自然です。

「ドラクエ」シリーズの生みの親である堀井雄二氏はインタビューで「(ドラクエは)一種のテーマパークのようなイメージです。色んな『ドラクエ』の世界があって、その中で色んな遊び方があればいい。」と述べています。厳密な時代設定はないからこそ、服飾の縛りもなく、それゆえに現在まで愛され続けるダイナミックなデザインが可能だったのです。ストーリーに関係のない「青い珠」は今後とも「勇者」のイメージとともに輝き続けることでしょう。

(片野)

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