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何度でも立ち上がる福島のヒーロー『ダルライザー』の今。震災を機に「口を開いた」

マグミクス / 2021年2月25日 18時10分

何度でも立ち上がる福島のヒーロー『ダルライザー』の今。震災を機に「口を開いた」

■白河だるまがモチーフの、ご当地ヒーロー

 みなさんは、「ダルライザー」という名のヒーローをご存知でしょうか? ダルライザーとは、福島県白河市を守るご当地ヒーローです。白河市の名産品である「白河だるま」をモチーフとし、街の活性化を目的に2008年に誕生しました。レッドカラーを基調にしたマスクとコスチュームは、なかなかのかっこよさです。

「何度転んでも、立ち上がる」という不屈の精神をモットーとするダルライザーは、考案者である和知健明(わち・たけあき)さんが主演とプロデューサーを兼ね、2017年に『ライズ ダルライザーTHE MOVIE』として映画化されています。ロケ地は白河市内で、白河市民がメインキャストを演じています。

 和知さんが自主配給した『ライズ ダルライザー THE MOVIE』は、大きな反響を呼びました。2019年には新たに編集された『ライズ ダルライザー NEW EDITION』として、東京をはじめ日本各地での劇場公開も果たしています。

■ハリウッド映画で知られる武術家も参加

 映画『ライズ ダルライザー』は、こんなストーリーです。主人公のアキヒロ(和知健明)は東京で舞台俳優をしていましたが、生活はカツカツ。妻のミオ(桃奈)が妊娠したのをきっかけに、実家のある白河市へと戻ります。警備会社で地道に働き始めるものの、アキヒロは俳優としての夢を捨てることができません。

 白河市が主催するキャラクターコンテストに応募するために、だるまをキャラクター化したダルママンを思いつきます。ダルママンという呼び名ではダサいということから、ミオの協力でダルライザーと命名されるのでした。物語前半は、和知さん自身の半自伝的なドラマとなっています。

 一方、街では天才的科学者・田村(田村論)を中心とする秘密組織「ダイス」が暗躍。パーソナルシートと称したハイテクガジェットを市民に無料配布し、人々の意識をひとつに結びつける「シャングリラ計画」を進めていました。この計画が実現すれば、街で暮らす人びとは孤独感から解放されますが、少数派の存在は認められなくなります。ダイスの暴走を阻止するため、アキヒロはダルライザーのコスチュームに着替え、過酷な闘いに挑みます。

 限られた予算で製作されたSFアクション映画ですが、全編に郷土愛があふれています。ダルライザーには、必殺技も特殊能力もありません。でも、「何度でも立ち上がる」というド根性と、「これから生まれてくる子供たちのために素晴らしい故郷を残したい」という父性愛を胸に、最後まで闘い抜きます。

 ハリウッド映画『バットマン ビギンズ』(2005年)や『アウトロー』(2012年)などのアクション大作に関わったスペインの武術家フスト・ディエゲス氏が来日し、アクション指導&出演しているのも、話題となりました。東日本大震災と福島第一原発事故で傷ついた福島の人たちを少しでも励ましたいという想いから、フスト氏は映画制作に協力したそうです。

■ダルライザーのキャラ設定が変わった「10年前」

2021年2月11日に開催された「白河オンラインだるま市」に参加したダルライザー(右)

 2011年3月11日に起きた東日本大震災から、もうすぐ10年が経ちます。大震災と原発事故は、多くの人にさまざまな影響を与えました。和知さんもそのひとりだと言えるでしょう。当時、白河市内の結婚式場に勤めていた和知さんは、原発事故から避難してきた人たちのために、職場のスタッフたちと一緒に1日2000個のおにぎりを作り、避難所へ連日届けたそうです。

 ダルライザーとしての活動は2008年から始めていたので、すぐにでもダルライザーショーを開きたかったそうですが、震災直後は控えました。震災から1週間が経過し、白河市から「避難所の子供たちを励ましてほしい」という要請を受け、派手なBGMなどはなしで、ダルライザーとして避難所を慰問することに。避難所のブルーシートに佇む子供たちに、ひとりずつ声を掛けて回りました。

 それまでダルライザーは「言葉はしゃべらない」という設定でしたが、それでは子供たちとのコミュニケーションが図れません。キャラ設定にこだわることなく、和知さんはマスク越しに「大丈夫だよ」と子供たちに話しかけました。知らない街に来たばかりだった子供たちは、一瞬でも不安を忘れることができたのではないでしょうか。

■コロナ禍でも闘い続ける、等身大のヒーロー

 震災がきっかけで、和知さんは「自分たちの街だけでなく、もっと多くの人に勇気を届けたい」と結婚式場を辞め、映画『ライズ ダルライザー』の製作に取り組むことにしました。上映時間145分あったオリジナル版の先行上映は熱狂的に受け入られましたが、119分に再編集した『ライズ ダルライザー NEW EDITION』の全国公開は、和知さんいわく「残念ながら、ヒットには至っていません。借金も残っています」とのこと。でも、和知さんはこうも語っています。

「約2時間に編集したことで日本各地の映画館で上映することができ、ダルライザーという存在を白河以外の人たちにも広く知ってもらうことができました。また、2020年には福島でのローカル枠ですが、テレビ放送もされました。テレビ局には300件も好意的な声が届いたそうです。白河は小さな街ですが、これだけのクオリティの映画を作ることができると示せました。やって、よかったですよ」

 コロナ禍で福島も大変な状況ですが、2020年の非常事態宣言の際に、ダルライザーは福島のローカルCMに出演し、ソーシャルディスタンスを呼びかけています。福島の他のご当地ヒーローたちと一緒に出演し、リモートワークを推奨するローカルCM第2弾もオンエアされました。毎年恒例となっている「白河だるま市」は2021年は中止となり、代わりに開催された「白河オンラインだるま市」にダルライザーが登場し、白河の街を紹介しています。

 また、和知さんはダルライザーと敵対するダイス側の視点から描いたTVドラマシリーズを企画し、撮影の準備を進めていたのですが、この企画はコロナ不況のためにスポンサーが集まらず、中断した状態です。それでも和知さんはへこたれず、用意した機材を使って地元企業のCMやプロモーションビデオの制作に勤しんでいます。「何度でも立ち上がる」ダルライザー精神を実践しているようです。

 和知さんはフスト氏が創設した護身術「KEYSI」のインストラクターでもあり、また地元の若者たちを対象にした「しらかわ演劇塾」の講師も務めています。2021年2月27日(土)~28日(日)は、震災をモチーフにしたドラマ・リーディング『空の村号』を白河文化交流館コミネスで上演するそうです。和知さんをはじめ福島で暮らす人たちにとって「3.11」は、人生が変わった忘れることができない1日として、今も胸に刻まれています。

●『ライズ ダルライザー NEW EDITION』は、Amazonプライムビデオ、YouTubeムービーなど各配信サイトで視聴できます。

(長野辰次)

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