『惑星ロボ ダンガードA』放送から44年。ファンの声で路線変更、知る人ぞ知る名作に…?
マグミクス / 2021年3月6日 15時10分
■ロボットアニメに革新をもたらした松本零士
本日3月6日は、44年前の1977年に『惑星ロボ ダンガードA』が放送開始した日です。本作は「マジンガーシリーズ」の後番組として放映されたロボットアニメだったことから、当時の人気、注目度はかなり高い作品でしたが、ロボットアニメの有名作品を集めたゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズに一度も参戦したことがないことからか、若年層のファンにはあまり存在を知られていません。しかし、本作がその後のアニメ作品に与えた影響は大きいものでした。
本作の原作は、当時『宇宙戦艦ヤマト』がブームの兆しを見せていたころのマンガ家・松本零士先生です。松本先生が東映動画(現在の東映アニメーション)と本格的に仕事をしたのは本作からでした。後のヒット作品である『宇宙海賊キャプテンハーロック』や『銀河鉄道999』は、この時の関係があったからこそ東映動画でアニメになったのかもしれません。そして、本作は松本先生の作品で唯一の巨大ロボット作品です。
一方で、松本先生が巨大ロボットには否定的だったのは有名な話。自らが描いたマンガ版では一度もロボットの戦闘シーンがなかったばかりか、最終回の最後のコマまで主役ロボのダンガードAが登場しないのは、ファンなら誰もが知っているエピソードです。
この影響かわかりませんが、本編アニメでもダンガードAの登場は1クールの最後という、それまでのロボットアニメではありえなかった遅さでした。なぜ、そんな展開だったのか。それは本作がロボットアニメで初めて連続ストーリーの流れを本格的に組み込んだ作品だったからです。
それまでのロボットアニメの場合、極端な言い方をしてしまうと1話と最終回、パワーアップ編などのイベント回以外の話は順番を入れ替えてもつじつまが合うものでした。その点、本作では序盤から始まる主人公・一文字タクマの訓練、後半の惑星プロメテへの航海と、物語の流れが明確になっています。
これは、それまでの「地球を侵略者から守る」というパターンから脱却し、目的である星に向かうという「旅」の要素が大きく影響していました。地球防衛という受動的なテーマから、航海をするという能動的なテーマになったことで、自然にストーリーの流れが生まれたわけです。
この「旅」という要素が松本先生の得意なパターンであることは、他の松本作品を見れば一目瞭然。巨大ロボットに否定的だった松本先生だったからこそ、ロボットアニメに革新をもたらしたのかもしれません。
■スポコン路線からライバルとの戦いへ
「【ロマンアルバム18】惑星ロボ ダンガードA」(アニメージュ増刊、1979年)の表紙に描かれた、タクマとハーケン
本作をよく「スポコンロボットアニメ」と評する人がいます。これは、主人公タクマを一人前のパイロットとして育てるため、謎のマスクマン教官のキャプテン・ダン(正体は父である断鉄)が過酷な特訓をしていたことが原因でした。
この当時、スポコンはひとつのジャンルとして認識されていましたが、それをロボットアニメのテーマに据えたのは斬新だったのかもしれません。しかも、仮面の下の断鉄の顔は、流れるような髪形、頬のサンマ傷、立派なヒゲと、いかにも松本先生のキャラという風体で父親としての威厳がありました。
しかし、この試みは途中で断念されます。その理由は、視聴者からのクレームでした。ターゲットである子供たちから「ダンの仮面が怖い」、熱狂的な女性ファンたちから「タクマをいじめるな」という投書が毎週のように寄せられたのです。
これにより、最終回までタクマを導く存在だったはずのダンは地球出発時に戦死してしまいました。そして、物語はタクマとライバルの戦いにシフトします。そのライバル役が、中盤から登場した美形キャラのトニー・ハーケンでした。
当時は、高校生や大学生の女性ファンがロボットアニメの美形キャラのファンになり、その作品の同人誌を作るようになったころです。本作のキャラデザインは、後に『聖闘士星矢』でも美形キャラを次々に生み出して女性ファンから熱い支持を得た荒木伸吾さん。ハーケンの担当声優は『ゲッターロボ』の神隼人、『大空魔竜ガイキング』のサコン・ゲンなどでも女性ファンから人気を得ていた山田俊司(現在のキートン山田)さんだったことから、ハーケンの人気はそのまま本作の評価に直結するほど高いものになりました。
ハーケンの人気の高さは、当時ファンだった人のなかには、いまだに活動を続けているという点でも、相当なものだったことはご理解いただけることと思います。
このように熱狂的なファンもいる本作ですが、その後に注目される機会も少なかったことから、若い世代のアニメファンには知らない方も多い作品となってしまいました。しかし、ロボットアニメを探求するなら絶対に見たほうがいい作品のひとつだと筆者は思います。
(加々美利治)
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