歴代仮面ライダーで賛否が分かれたデザイン…「カッコいい」の価値観は平成で変化?
マグミクス / 2021年3月7日 16時20分
■個性が爆発した、平成二期ライダー
仮面ライダーといえば、バッタをモチーフにしたデザインが有名です。生みの親・石ノ森章太郎氏が本当に描きたかったのはドクロモチーフのキャラクターでしたが、子供受けが悪いとの理由でボツになり、同じような雰囲気を持たせることができるバッタが選ばれたという裏事情があります。
石森プロの公式サイトでは、「パンチが欲しい」ためバッタが選ばれたと書かれていますが、近年の仮面ライダーシリーズではパンチがありすぎて、ファンの間で賛否が分かれるデザインが多くあります。
仮面ライダーシリーズ放送50年の歴史のなかで、デザインが特異なライダーは度々登場していましたが、顕著になったのは2009年放送『仮面ライダーW(ダブル)』から2018年放送『仮面ライダージオウ』の、「平成二期」シリーズです。それ以前は、各ライダーに虫以外のコンセプトが採用されながらも、デザインは時代に合わせた正統進化と言えるような、万人受けする印象でした。
「平成二期」シリーズの始まり『仮面ライダーW』では、先行してシルエットだけが公開されると、その仮面ライダー然としたシンプルなスタイルから好評でしたが、その後、色つきの全身を見たファンたちは、体の左右で色が違う姿に度肝を抜かれました。
さらに、続いて放送された『仮面ライダーフォーゼ』では頭部が大きな話題に。宇宙がテーマのため、頭はロケットをイメージさせる尖ったデザインとなっており、SNS上では“イカ頭”や“座薬”と揶揄されてしまいました。しかし、はじめはダサイ派だった視聴者でも回を重ねるごとに見慣れてしまい、最終的にカッコイイ派に転向する人も多かった印象です。そして『フォーゼ』のおかげで、その後に奇抜なライダーが登場しても抵抗なく見られる……という効果もあったようです。
そして『フォーゼ』から5年後…再び物議を醸したのが『仮面ライダーエグゼイド』です。フォーゼは「頭」が賛否の焦点でしたが、エグゼイドは「目」で勝負してきました。
仮面ライダーといえば、虫のような「複眼」が通例でしたが、エグゼイドはゴーグルの中にしっかりと「瞳」が描かれ、まるでゲームキャラのようなデザインに。派手でポップなカラーリングや三頭身スタイルの「レベル1」フォームなど、常識を打ち破る同作には「大きなお友達を切り捨てたのか」といった声まで……。
仮面ライダーらしくないユニークなデザインを結局カッコいいとするのかは、個人差が大きいところですが、シリアスなストーリーが作品人気を引っ張り、『仮面ライダーエグゼイド』を評価する声は非常に多く聞こえます。
■今の子供にとって、むしろ「バッタ」は斬新?
平成仮面ライダー第20作『仮面ライダージオウ』は、頭部にさまざまな「文字」が盛り込まれた (C)2018 石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
そして2018年にも「目」が話題になったデザインが登場。平成最後の作品として放送された『仮面ライダージオウ』のモチーフは時計です。仮面のデザインも時計の“針”で触覚を表し、額には「カメン」という文字、目は複眼の代わりに「ライダー」という文字で再現されました。さらにサブライダーの目も、平仮名で「らいだー」の文字が。斬新すぎるデザインに、ネット上では「字王」という愛称までつけられます。
昆虫の複眼デザインから大きくかけ離れ、賛否両論を巻き起こした「目」のデザインは、ここ最近のトレンドかと思いきや、すでに2002年にこうした革命が起きていました。同年放送の『仮面ライダー龍騎』は、西洋の騎士がモチーフとなり、メッシュの鉄仮面の奥に複眼が覗いているデザインです。「平成1期」シリーズで育った筆者にとっては、なんの抵抗もなく、初めから“カッコいい”と思っていました。
しかし、昭和ライダー世代の話では、当時これが“とんでもデザイン”だったと聞き、軽く衝撃を受けました。個性的すぎる平成二期のライダーたちも、メインターゲットの子供たちにとっては「インパクト強すぎ!」などということはなく、むしろスタンダードでしょう。仮面ライダー50年の歴史を見たときに「バッタのデザインって斬新すぎでしょ」なんてこともあるのかもしれません。
令和のライダーも、『仮面ライダーゼロワン』で“シンプル”に原点回帰したかと思いきや、現在放送中の『仮面ライダーセイバー』はなかなかに個性的な仕上がりです。また、2009年放送の『仮面ライダーディケイド』で登場したライダーの最強フォームが「遺影フォーム」と呼ばれたように、物語の途中で賛否が分かれるデザインが登場する可能性もあるため、やはり今後も目が離せません。
(椎名治仁)
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