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「MILLION TAG」に参加する編集者・玉田さん「6組のバトルロイヤルは作家を急成長させる」?

マグミクス / 2021年3月11日 16時10分

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■漫画家との「宝探し」を支える、たくさんのコミュニケーション

 マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」が、次世代のスター漫画家を発掘することを目的とした新漫画賞「MILLIONTAG」を発表し、挑戦者を募集しています。漫画家と編集者がタッグを組んで課題に挑み、その様子を動画で配信。優勝者は賞金500万円を手にするほか、「少年ジャンプ+」での連載やコミックスの発売、そしてアニメ制作も確約(1話分相当がYouTube「ジャンプチャンネル」で配信)されるなど、異例づくしの企画です。

 挑戦者とタッグを組む編集者のひとりである「少年ジャンプ+」編集主任の玉田純一さんは、「ジャンプSQ.」編集部在籍時に、『双星の陰陽師』(作:助野嘉昭)、『大正処女御伽話』(作:桐丘さな)を担当し、現在おもに『生者の行進 Revenge』(作:みつちよ丸・佐藤祐紀)などの作品を担当しています。漫画家との企画づくりを「宝探し」と表現する玉田さんにお話を聞きました。

* * *

ーー玉田さんは面白い作品を生み出すために、担当の漫画家どのようなやりとりを心がけていますか?

玉田さん(以下、玉田) 漫画家さんによって異なりますが、共通するのは彼らの強みを知ることです。漫画家さんが「やりたいこと」を聞くのはもちろん、それ以上に「その漫画家ができること」「他の漫画家より優れているもの」は何かを、真剣に考えます。しかし、僕ひとりで考えても意味がありません。そのため漫画家さんには、「漫画家になるきっかけ」や、「どんなことに興味を持って、マンガを作ろうとしているのか」など、ありとあらゆることを聞いて、相手の「人間そのもの」を知ろうとします。そのため、編集者というのはインタビュー力が高い人が向いていると思いますね。

ーー「MILLION TAG」では、漫画家を目指す方々とどう向き合っていきたいですか?

玉田 普段新人漫画家さんと接するよりも、かなり短い時間でしっかりコミュニケーションを取らないとな……と感じます。相手への質問で人となりを知るにしても、僕の思いを伝えるにしても、ものすごく密なコミュニケーションが必須になるでしょうね。

ーー普段だと、どれくらい時間をかけて作品を世に出していますか?

玉田 たとえば連載のネームを作り、連載企画を形にして編集部に回すだけでも、最短で3か月、長いと半年かかります。読切から数えると、ここだけで1年かかることも珍しくありません。「週刊少年ジャンプ」で『ミタマセキュ霊ティ』を連載していた鳩胸つるん先生も、連載までに6、7年かかっています。

ーーかなり時間をかけて作品を作り上げていくんですね。

玉田 どの漫画家さんも、力をつける時間が必要だと思います。仮に力をつけた後も、ハマる企画やアイデアを探す時間が必要です。逆にこの部分をすぐに生み出せた場合は、半年で連載が始まることもあります。

 これを、僕は「宝探し」と表現しています。企画・アイデアというのは、画力があれば順当に見つかるというものではありませんから。

ーー玉田さんは「MILLION TAG」にどのような期待をされていますか?

玉田 やったことがないので、シンプルに面白そうですよね。あとは、編集者がどういう仕事をしているのかを見せることで、世の漫画家を目指す方々が作品を生み出すヒントになればいいと思います。「あ、そういう作り方もあるんだな」みたいに。

 僕自身、自分の担当外の企画や作品からしょっちゅう刺激をもらっています。同じことを僕自身はできないので、「この作品のなにが面白いのか?」を探って、そのエッセンスを担当の漫画家さんとの打ち合わせで話してみることもあります。「こういう切り口をやってみるのはどう?」といった感じで。

ーーやはり、マンガを読むときは編集者目線で分析しているんですね。

玉田 はい。ただ、普通にマンガを読んでいるときは、いち読者として楽しんでいますよ。そのなかでこれは面白い!と感じたら、編集者として持ち帰るようにします。はじめから編集者としてあれこれ考えながら読むと楽しくないですから(笑)。

■「閉ざされた空間」でこそ漫画家は成長する

玉田さんの担当作品のひとつ『生者の行進 Revenge』第1巻(集英社)。生者と死者の怨念が巻き起こす事件に、除霊の力を持つ神原省吾が挑む (C)みつちよ丸・佐藤祐紀/集英社

ーー今回、「MILLION TAG」に挑戦する人にとっては、どんなメリットがあると思いますか?

玉田 ひとつは優勝者への特典の豪華さですよね。でも、仮に参加するだけでも、急速に成長できるという大きな可能性を秘めていると思います。漫画家さんには、通常のサイクルよりも、大きな負荷がかかるとは思いますが、そのなかでの頑張りが大きな経験値となるので、「変わりたい」と強く願う方にとってはきっと大きなきっかけになるでしょう。

 あと、6人の編集者が6人の漫画家と組むことで「ライバル心」が生まれるのも、僕はプラスに働くと思っています。

ーー「ライバル心」について、詳しくお聞かせ下さい。

玉田 「MILLION TAG」では6組のタッグが複数の課題をこなしながら優勝を目指していきます。結果として、お互いに「他のタッグには負けたくない」という気持ちが生まれることでしょう。

 現在は紙の雑誌に加えてマンガアプリの利用が進み、以前よりはるかに多くの作品が世に出ています。それでいて、個人で発信がしやすくなった分、同じ雑誌の特定のライバルの存在を意識する場面はあまり多くない。そのような状況のなかで、「6組によるバトルロイヤル」という、ライバルが集う場所はとても貴重だと思うんです。

 もちろん、他人を意識することで自分のマンガが変わることもあるでしょう。ライバルのネームを読んで「この人にはアクションでは勝てない」と敗北感を覚えることも、あるかもしれません。しかし、そのなかで「彼らに勝つには、自分の強みをどう活かせばいい?」と考える。そうやって狭い空間で自分と向き合うことで、何をすべきかが見つかると思います。

ーーあえて閉じた空間でマンガを作ることに良さがあるんですね。

玉田 作品のクオリティ上げるには、閉ざされた空間での時間も必要だと思うんですよね。その上で、作品を売るためにどんどん世界を広げていく。そうした漫画家が通るべき“育つ空間”を、「MILLION TAG」で再現できると思います。

ーー先ほど、玉田さんは漫画家を知るためにたくさん質問をするとおっしゃっていました。逆に作品に対して意見やアドバイスをするとき、意識していることはありますか?

玉田 基本的には聞き手に回りますし、アイデアを出す時も単なるダメ出しや「こうしなさい」という命令ではなく、「こうした方がいいと思う」と伝えますね。あと、基本的に僕はアイデアを出す時、「これはあなたのアイデアですよ」と伝えるんです。

 僕は、自分のことを漫画家さんの「セカンドブレイン(第二の脳)」であると思っていて、僕の出す意見も、漫画家作家さんとのさまざまな会話を通じて生まれたものです。それはある意味、漫画家さんがまだ言葉にできていない思いを形にしたものなので、僕の意見ではないと考えています。

ーー「MILLION TAG」では漫画家だけでなく、編集者の仕事ぶりも配信されます。マンガ編集者の仕事で、注目してほしい点はありますか?

玉田 そうですね……正直、あまり「編集者を見て!」とは思っていませんが、強いて言えば、これから組む漫画家さんとどういう関係性を築いていくのかを見てほしいです。そして、漫画家の皆さんには僕を「第二の脳」として、存分に使ってほしいと思います。

ーーどんな方とタッグを組みたいですか?

玉田 僕は少年マンガを作りたいと考えています。少年マンガにはアクションや強い感情の要素が強いので、バトルや感情表現に興味がある方がいいですね。資質の面では、スピード感のある方がいいですね。なにせ、短期間のチャレンジですので、試行錯誤を早いサイクルで回せる方が、有利ではないかと思います。

ーーありがとうございます。最後に「MILLION TAG」に注目する読者の方々へひとことお願いできますでしょうか?

玉田 「MILLION TAG」は、新しいタイプの作品の楽しみ方だと思います。今回の企画で、皆さんのなかで「推し」のタッグ生まれることでしょう。ふたりが作品の裏側でどういうふうに頑張っているのか、そして産みの苦しみを経てマンガが生まれるまでの過程を見て、楽しんでもらえれば嬉しいです。

※「MILLION TAG」は、2021 年 3 月 21 日(日)まで挑戦者を募集しています。詳細情報は公式サイト(https://sp.shonenjump.com/p/sp/million-tag/)に掲載。マグミクスでは、引き続き「MILLION TAG」に参加予定の編集者の声を紹介していきます。

(サトートモロー)

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