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アニメ史を動かした劇場版『ガンダム』公開から40年。徹夜の行列で見届けた熱狂ぶり

マグミクス / 2021年3月14日 7時30分

アニメ史を動かした劇場版『ガンダム』公開から40年。徹夜の行列で見届けた熱狂ぶり

■テレビから劇場版へと歩みだした『ガンダム』

 本日3月14日は、40年前の1981年に劇場版『機動戦士ガンダム』(以下ガンダム)が公開された日です。今から振り返ると、日本のアニメ史が大きく動いた出来事でした。そこで当時の世相や製作までの経緯を、筆者の思い出も交えて解説します。

 1980年1月26日、ファンに惜しまれつつも『ガンダム』のTV放送が終了しました。しかし、予定していた本数に至る前の打ち切りということで、ファンからは終了を惜しむ声の方が大きかったのです。むしろ、本来の終わり方を望むもの、続編を望むもの、劇場版を望むものと、さらなる『ガンダム』の動きを待望する声にあふれていました。

 当然、次第に大きくなるファンの声を、スタッフも感じ取っていました。TVでの『ガンダム』は終了したものの、その直後から次なる展開へと静かに動き出していました。

 そんななか、アニメ雑誌「アニメージュ」1980年3月号の特集記事で、富野喜幸(現在は由悠季)監督が、『ガンダム』を劇場公開するなら、2時間半の枠では収まらない、TV版を四部作に構成して劇場版にしたい……と、インタビューに答えて四部作の構成案を発表しました。この記事を見たファンたちは大いに喜び、劇場版の発表を心待ちにします。

 そして、1980年10月2日発売の「日刊スポーツ」で劇場版『ガンダム』がスクープされ、翌週9日に劇場版の製作発表記者会見が行われました。この時にも、富野監督は全43話を1本の映画にできない、何本か製作すると語っていました。

 しかし、実際には最初の1本が成功しなければ2本目以降はないという厳しい状況だったことが後に明かされます。そのため、富野監督が望んだ連番の『Ⅰ』およびサブタイトルを付けることはできませんでした。このため、その後の2作目以降とはタイトルのバランスが変わってしまったわけです。

 ところが、そのような心配は杞憂でした。予想以上の前売り券の売れ行きに、1作目の公開前に2作目の製作が決まったほどです。

 こうした盛り上がりのなか、1981年2月22日に東京・新宿アルタ前で「アニメ新世紀宣言大会」というイベントが開催されました。当初は「ガンダム5000人キャンペーン」と言われていましたが、実際には1万人を超えるほどの人数が集まります。

 筆者は地方在住だったためイベントに行けませんでしたが、同年代のクリエイターの方に聞くと、ほとんどの方がイベントに参加していたと答えてくれました。当時のアニメファンにとって、それほどの一大イベントだったのです。

■セル画を求めて、公開前夜から徹夜で並んだ

劇場版『ガンダム』公開とほぼ同じタイミングで「ジオング」のプラモデルが発売、劇場の待機列にはジオングの箱を持つファンも。画像は2020年に発売された、「RG 機動戦士ガンダム ジオング 1/144 色分け済みプラモデル」(BANDAI SPIRITS)

 そして、いよいよ劇場版『ガンダム』の公開日となりました。ここからは筆者の体験談がメインとなります。

 筆者はこの時、公開日の前日から徹夜で並んでいました。その最大の理由は、先着50人までに配布されるセル画です。もともと、制作が終わったセル画は制作会社が保管または廃棄処分にしていたのですが、アニメファンの増加によって価値が見出され、アニメブームのころには販売されるようになっていたのです。

 しかし当時は、セル画を販売する店舗は限定されていました。そのため、地方では時々やってくるアニメイベントの際に販売される程度のものだったのです。こういった希少価値のあるものですから、アニメ映画の初日に来場者特典として配布して、人気を盛り上げようとすることが多くありました。

『ガンダム』を上映する映画館の一部でセル画が配布されると知った筆者はそういう理由で、公開の前日、仲間と晩御飯を食べ終わったくらいに映画館に集合しようと言っていたのですが、すでにお昼過ぎには並んでいる人が何人かいると聞き、夕方にあわてて並びに行ったことを憶えています。夜から並ぼうと思った理由は、その日に放送される『仮面ライダースーパー1』を楽しみにしていたからでした(笑)。それも普通の回でなく、話も佳境だった「緊急指令!ファイブ・ハンドを奪え!!」だったせいです。

 その回をあきらめて並んだおかげで、自分たちは何とか20番台に並べました。ところが別の人から、いきつけの模型店で新発売の「1/144ジオング」が今夜入荷するから取りに行こう……という話になります。お店は徒歩で数分の場所だったので、筆者は順番を仲間に任せて買いに行き、ふたたび待機列に戻りました。

 すると、知らない人たちから「そのジオングはどこで買ったの?!」と聞かれ、筆者は素直に答えてしまいます。それを聞いた人たちは列から離れ、本来閉店してる時間の模型店に駆け込みました。その後、待機列にはジオングの箱を持った人がいっぱいになります。そして数日後、模型店のおじさんから「翌日売る分までなくなって大変だったんだぞ」とボヤかれてしまいます(笑)。

 そうこうして夜が明けて、劇場に並んだ人数は500人近くになりました。一度の上映で入りきれない数だったので、並んだ人のなかには2回目の上映まで待つ人もいたわけです。

 筆者は徹夜明けだったにも関わらず、一度も眠くならず初めて劇場で見る『ガンダム』に終始大興奮でした。ちなみに、もらったセル画は全員、コア・ファイターに乗り込むため茂みをよけていたアムロでした。同じ場面の連番だから、ケンカにならなくてよかったと喜び、家に帰ると2日分の睡眠をとりました。

 こうして、劇場版はどこも公開初日から大賑わいで、ガンダムブームの熱は2作目への期待もあって、冷めるどころかますます盛り上がっていきます。この2作目についてのエピソードは、またの機会にお話しいたしましょう。

(加々美利治)

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