3月15日は『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』の放送開始日。声優の「登竜門」の功績も…
マグミクス / 2021年3月15日 19時10分
■「急いで行くから もう心配しないで」
TVアニメ『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』は、ちょうど30年前の1991年3月15日から放送を開始し、12月20日まで日本テレビ系列で放送された、近未来を舞台にしたレースアニメです。1980年代後半から1990年代半ばにかけて世界を席巻したF1ブームの流れをくんだ作品であり、本作に登場するフォーミュラマシンはF1をはるかにしのぐスピードと性能、そしてAIによるサポートなど、最先端テクノロジーが取り込まれている……という設定でした。
主人公・風見ハヤトが、父親の残したサイバーフォーミュラマシン「アスラーダ」ととともに挫折と勝利を繰り返しながら成長していく物語です。オープニングテーマ前に入る速水奨氏の語り、「コンピュータによるナビゲートシステムを搭載したレースマシン、サイバーフォーミュラの登場は、F1に代わる21世紀のニューレースマシンとして世界中の人びとを熱狂させた」は、作品の世界観を簡潔に伝える名セリフと言えるでしょう。
この語りでは、舞台設定は21世紀とされていますが、より正確には、TV版の設定年代は西暦2015年となっています。近未来だったはずの世界は、現実ではすでに過去のものとなってしまい、まだ私たちの世界にアスラーダは存在してはいませんが、自動車の自動運転はすでに実用化が始まっています。いずれ本物のアスラーダが誕生する日が来るのかもしれません。
なお作中での「2021年」は、後年発売されたOVA版の最終シリーズ『新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN』の時期に当たります。ひとつ前のシリーズ『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』で起きたアルザード事件により関俊彦さん演じるブリード・加賀が所属するアオイZIPレーシングは出場停止処分を受けており、主人公の風見ハヤトが圧倒的な成績を残して第16回ワールドグランプリを制覇しています。
指をくわえてライバルの活躍を眺めているしかなかったブリード加賀は、翌2022年の第17回ワールドグランプリに復帰叶ったアオイのドライバーとして参戦し、ニューマシン「凰呀(オーガ) AN-21」を駆り、ハヤトの「ν-アスラーダ AKF-0/G」と激闘を繰り広げ、映像作品の「サイバーフォーミュラ」シリーズの最後を飾るのです。
■若手声優の登竜門となった作品
『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』に参加した声優陣は、あとから振り返れば「豪華キャスト」だった。画像は「新世紀GPXサイバーフォーミュラ Blu-ray BOX」(バップ)
本作を語る際によく挙げられるのが、出演声優の豪華さです。風見ハヤト役で初主演を果たした金丸淳一さんはその後も『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』の藤山起目粒ことフーミン役や、セガの代表的キャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」役を長年務めるなど活躍されています。ハヤトについては収録前日に役が決まったことを伝えられ、慌てて旅行先から帰って収録に臨んだことを後に明かしています。
また、新条直輝役を演じた緑川光さんにとっては、本作がメイン級キャラクターとしてのデビュー作になります。その後『SLAM DUNK』の流川楓や『新機動戦記ガンダムW』のヒイロ・ユイなど、多くの大作でメインキャラを演じた緑川光さんにとって、同作が飛躍のきっかけとなったと言っても過言ではないでしょう。
そして、本作のヒロインである菅生あすかを演じたのが、三石琴乃さんです。翌1992年には『美少女戦士セーラームーン』で月野うさぎ役を演じ一般層にまで名前が浸透するほどの人気声優となり、1995年には『新世紀エヴァンゲリオン』で葛城ミサト役を演じ、今年2021年公開の劇場版『シン・エヴァンゲリオン』まで無事に完走を果たしてくれました。
新人声優という枠には含められませんが、ブリード加賀こと加賀城太郎を演じた関俊彦さんも、ハヤトに立ちふさがるライバルとして大きな存在感を発揮しています。ラストシリーズである『SIN』は、ブリード加賀が主役として抜擢されたのも、関さんの力なくしては語れない出来事と言えるでしょう。
『SIN』で一旦幕を閉じた「サイバーフォーミュラ」シリーズではありますが、今も人気は根強いものがあります。2021年2月21日に開催された「声優紅白サンライズ ONLINE LIVE」では、金丸さんと関さんがエンディング・テーマ「Winners」をデュエット。3月にはプラモデル「ヴァリアブルアクションキット」としてアスラーダG.S.X、スタンピードRS、サイレントスクリーマーβが発売されています。
本放送から今年で30年となりますが、きっと『サイバーフォーミュラ』の世界は、これからも続いていくのでしょう。
(ライター 早川清一朗)
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