「MILLION TAG」で、新たな才能とたくさん出会いたい…「ジャンプ+」編集部・岡本さん
マグミクス / 2021年3月18日 11時50分
![「MILLION TAG」で、新たな才能とたくさん出会いたい…「ジャンプ+」編集部・岡本さん](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_49056_0-small.jpg)
■これ以上ない「緊張感」で挑戦できる企画
マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」が、次世代のスター漫画家を発掘することを目的とした新漫画賞「MILLION TAG」を実施しています。漫画家と編集者がタッグを組んで課題に挑み、作品づくりの過程もYouTubeで配信、優勝者は賞金500万円を手にするほか、「少年ジャンプ+」での連載やコミックスの発売、アニメ版の制作・配信(1話分相当がYouTube「ジャンプチャンネル」で配信)が確約されるなど、異例づくしの取り組みです。
今回の企画に参加する集英社の編集者のなかでは最も若手ながら、「少年ジャンプ+」編集部に所属し、『終末のハーレム』『デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い』『オトメの帝国』などの作品を担当する岡本拓也さんにお話を聞きました。
* * *
――「MILLION TAG」は編集者と参加する漫画家でタッグを組んで、他の参加者と作品づくりを競い合いながら優勝を目指すという、マンガのコンクールとしては珍しい形式です。参加する漫画家にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
岡本拓也さん(以下、岡本) まず、「これ以上ない緊張感がある企画」という点だと思います。普通の漫画賞は落ちたら落ちたで「じゃあ次」と、改めて挑戦できるシステムだと思うんですが、「MILLION TAG」では課題や〆切が何段階もあるという厳しい環境に身を置くことになります。編集者もいて、提出先もあるという環境をひと足先に体験できるのは、大きなメリットじゃないかなと思います。
賞自体の話になると、賞金はもちろんですが、アニメ化に連載化、コミックス確約と、本来はそれぞれの特典ごとに1本の賞ができてしまうほどの気合が入っています。今回参加された方にとっては、「MILLION TAG」の一期生であり、企画から出てきた漫画家であるということがブランディングになってくれればいいなと思っています。
――通常の漫画賞に比べると、編集部や編集者にはかなりの負担がかかると思います。参加を決めた理由は?
岡本 注目度が高い企画だったので、色々なところから才能を持つ漫画家さんが来てくれると思ったんです。「新たな才能と出会いたい」というのが一番の理由ですね。負担に関しては、仕方がないと割り切っています。
また、編集者が漫画家に対してどういうことをサポートしてくれるのかを知らない方も多いと思うので、そういう人たちに向けて「こういう編集者が見てくれるよ」「こういうバックアップ体制があるよ」といった、編集者のさまざまな関わり方を示すことができるのは、新たな層を取り込むために非常に有意義だと思います。
――編集者の仕事を広く知ってもらう機会でもあるわけですね。
岡本 これまで、編集者は作品のなかでいじられて名前が出るくらいの存在だったと思いますが、最近の編集者はプロデューサー的な役割が増していて、作品に寄与する割合が大きくなっていると感じています。もちろん、作品は漫画家さんに最終決定権があるんですが、そういった流れのなかでどういう人が担当するのか、どういう実績がある人なのかを、まず知ってもらいたいという思いもあります。
■どんどん次の作品を出していける人は強い
岡本さんの担当作品のひとつ『終末のハーレム』(原作・LINK/作画・宵野コタロー)。難病を治すためのコールドスリープから目覚めた主人公が、女性50億人に対し男性5人に変わり果てた世界で人類を救うために奮闘する
――「MILLION TAG」に限りませんが、新人漫画家の作品のどのようなところに注目しますか?
岡本 「狙いがあるかないか」ですね。新人漫画家さんにありがちなのが、いかにもありそうな展開を描いてしまうことなんです。たとえばラブコメを描くときにヒロインが「ちこくちこくー!」と、食パンをくわえて走っていると、すごく違和感があります。でも今でもラブコメらしい展開だからと描いてしまう人がいます。
バトル作品の主人公だと、昼間は教室の中で顔を伏せて寝ていて、夜になると真の姿を現す……というパターンが多いです。もちろんそのようなキャラクターにも魅力はありますが、「どうしてこれを描いたんですか?」と尋ねたら「なんかこういうのかなと思って」といった答えが返ってくるケースも少なくありません。
ひとつひとつの展開についての考え方や、キャラクターの行動の理由などが明確でないと、描かれたキャラクターが自分の意志で動いておらず、不自然に感じられたり、嘘っぽくなってしまいます。それぞれのシーンについて描きたい意志さえあれば、絵が拙くてもストーリーが荒くても印象に残る作品になるので、そこが一番のポイントではないかと考えています。
――漫画家になるために必要な才能とは、どのようなものなのでしょうか?
岡本 あえて言うなら、「悩まずに数を描けること」だと思います。ルールとか常識は一旦置いておいて、とにかく挑戦できる人。たとえ没になろうと賞に落ちようと、次々と「これどうですか?」と、どんどん出していける人は強いなと思っています。
――漫画家さんの才能が伸びた瞬間を間近で体験されたこともあるかと思います。具体的にはどのようなことが起こっていましたか?
岡本 明らかにネームの質が上がったり、絵のレベルが高まったりする場面を何度か体験しています。ネームやストーリーについては、「読者はここまでのことを理解できるんだ」「情報を渡しすぎると混乱してしまうんだ」というキーポイントを理解できるかどうかが大きいですね。
絵に関しては、ひたすらに研鑽(けんさん)を積むしかないのかなと思います。変化はゆっくりかもしれませんが、試行錯誤を重ねていって、ある日何かハマる絵柄や描き方を見つけた時に、水があふれるように変わっていくこともあります。
――逆に、なかなか伸びない……という方に共通点は見られますか?
岡本 手数が少ない人です。悩みすぎて、ひとつの題材にこだわり過ぎて停滞するパターンですね。他に、インプットが少ない人も難しいです。いま自分のなかにあるものでやろうとすると、どうしても手癖になってしまいますし、そもそも似たようなものを作り続けてしまいます。
ネームが通らず賞も取れない状況では、やはり何か足りないものがあるということなので、外から何かを取り入れないとどうしようもありません。アスリートにとっての食事のように、新しいものをインプットして、きちんとかみ砕いて昇華していく過程がどうしても必要なのだと思います。
――最後に、「MILLION TAG」に注目している方や参加を考えている方へのメッセージをお願いします。
岡本 参加してみたいと考えている方は、ぜひ遠慮せずに応募してみてください。やってみないことには始まりませんし、もしかしたら今回参加する編集者のうち、誰かのストライクゾーンに刺さるのはあなたの作品かもしれません。作品や才能を誰にも見せずに眠らせておくのはあまりにももったいないので、ぜひ見せて欲しいと思っています。
動画で企画をご覧になる方には、「編集者はこんな仕事をしているのだ」ということを、リアルに感じていただきたいです。マンガの編集者は原稿があがるのを待って、印刷所に駆け込むというイメージがあると思います。確かにそういう面もあるのですが、実際にはマンガづくりにさまざまな形で関わっているというところに注目していただければと思っています。
「MILLION TAG」は僕たちにとっても新しい試みで、まだこれから何があるのかはわかりません。嬉しいことや楽しいこと、逆に苦しいこともあるかもしれないですが、僕たちもしっかりと楽しみながらチャレンジしていけたらと思っていますので、みなさんもぜひワクワクしながら見てください。
※「MILLION TAG」は、2021 年 3 月 21 日(日)まで挑戦者を募集しています。詳細情報は公式サイト(https://sp.shonenjump.com/p/sp/million-tag/)に掲載。マグミクスでは、岡本さんのほかに4人の編集者の声を紹介しています。
(C) LINK・宵野コタロー/集英社
(早川清一朗)
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