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バトル作品では異色すぎ? 『シャーマンキング』主人公・麻倉葉の生き方と影響力とは

マグミクス / 2021年3月18日 17時10分

バトル作品では異色すぎ? 『シャーマンキング』主人公・麻倉葉の生き方と影響力とは

■現代の私たちにも響く、生き方とメッセージ

『シャーマンキング』完全新作TVアニメの放送が、いよいよ2021年4月1日(木)に迫ってきました。そこで改めて『シャーマンキング』の魅力に迫りたいと思います。まず何よりも、バトルマンガとして一風変わった主人公・麻倉葉を紐解いてみましょう。

 麻倉葉は、とにかくマイペースで、熱血ではない人物ですが、逆にやる気がないわけでもありません。そして、目の前の状況に一喜一憂することもほとんどありません。言うなれば、徳の高いお坊さんのような……少年にしては何かを悟っているような性格です。

 本作は、世界中のシャーマンがその頂点であるシャーマンキングを目指して戦う過程で、葉が人間として成長していく……という、バトルマンガの王道に乗った作品ですが、彼は、「シャーマンキングになる」という壮大な目標に対し、そこに至る道筋はひとつではないから「なんとかなる」と考えています。そんな言動は周りから「ユルい」と言われますが、そのユルさが敵も味方もなく交流を生んでいく……という流れを生んでいきます。

 こうした主人公像は、20年以上前の連載当時も現在も、他にあまり類を見ません。ただ、葉の想いを掘り下げていくと、私たちの心に響くメッセージが込められていることに気づくでしょう。それが、この風変わりな主人公が支持されてきた理由なのです。

 葉が言う「なんとかなる」は、「やるべきことをやったのなら結果はついてくる」という意味で、奇跡が起きるということではありません。「望む結果が欲しければ努力はしなければならない」と言っているのです。

 しかし一方で「無理をしない」とも言っています。ファウストVIII世との戦いで珍しく感情を露わにして無理をした結果、窮地に立たされたことへの反省がそれでした。

 これらに込められたメッセージは、「目標を明確にすること」「それを叶えるためには努力が必要だが、方法はひとつではないこと」「ひとつずつ着実に歩んでいくこと」「焦って無理をしても辛いだけで結果は出ないこと」といえるでしょう。

 私たちは日々の生活のなかで、「何かをしなければならない」状態にいることが多いと思います。しかし、すべきことに気づけていない、あるいは背を向けている、頑張っているが焦って空回りしている……など、上手くいっている人ばかりではありません。葉のスタイルは、そのような人にとって、ひとつの道しるべになるのではないでしょうか?

■バトル作品では異質でも、物語の中心にいるべき存在

葉の仲間として、ライバルとして行動をともにする道蓮は、作中で戦意をむき出しにして緊張感を高める場面が多い。画像は道蓮が描かれた『SHAMAN KING KC完結版』9巻(講談社)

 ではここからは、麻倉葉についてさらに掘り下げて考えてみようと思います。

 麻倉葉のようなキャラクターは『シャーマンキング』でなければ生まれてこなかっただろうと筆者は思います。「シャーマン」とひと口に言ってもその定義は広いのですが、基本的には自分の身体に「何か」を憑依させるところから始まります。自分を「器」としてそれを迎え入れるためには、余計な自我は不要です。するとシャーマンに求められるのは、落ち着いた静かな心や、何ごとにも動じない精神力ということになるでしょう。

 これはバトルマンガに通常求められる主人公像とは反対で、むしろ師匠やライバルの位置付けでしょう。主人公はそういう人物と接することで成長することになる……というパターンです。しかし『シャーマンキング』であれば、これこそが主人公像ということになるため、逆にライバルの道蓮(タオ・レン)やホロホロなどに熱血要素が割り当てられていると見ることができます。

 このように、麻倉葉は一見すると風変わりな主人公ですが、作品のテーマに沿った最適な存在であることがわかります。そして『シャーマンキング』は構造的には、「無私無欲で悟りを求める修行僧が、さまざまな人や出来事を通じて道を究めていく話」……わかりやすい例えでは、仏陀(ブッダ)の人生を描いた物語に近いものがあり、武井先生が前作『仏ゾーン』以来描いてきたテーマとも合致した、一貫性のある作品と言うことができるのです。

 こうした構造から生み出された主人公の言葉や生き様が、現代に生きる私たちに響くのは納得です。またそのメッセージが単純ではなく、「解釈」が必要というのもわかります。例えばお坊さんは、人の生き方を上から決めつけたような言葉で説くことはまずありませんし、他人を蹴落として自分が上がることも良しとしません。人には上も下もなく、成長はともに行うものだと言うでしょう。これは、葉の言動に通じるものがあると筆者は思うのです。

 さて、読み説こうと思えばいくらでも深掘りできる「強度」を持った『シャーマンキング』ですが、それもこれもまずは皆さんに楽しんでいただかなければ意味がありません。「入り口は広く、中は深く」ですね!

 テレビアニメの放送開始まで、あと半月を切りました。広く皆さんに届き、多くの方が深みにはまることを願っています!

(タシロハヤト)

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