映画『ライアー×ライアー』に原作ファンも納得? 「ありえない」設定を見事に再現
マグミクス / 2021年3月26日 19時40分
■嘘に嘘を重ねていく二重恋愛
「私×義弟×女子高生姿の私=2人なのに三角関係……?」という、トンデモな設定が目に飛び込んでくる映画『ライアー×ライアー』が2021年2月から公開され、全国映画動員ランキングで2位の好スタートを切り、3月3週目に入っても10位以内をキープしています。
『ライアー×ライアー』は、金田一蓮十郎先生の作品で、講談社「デザート」で2010年から2017年まで連載されていました。単行本は全10巻で累計発行部数は190万部を突破しています。
金田一蓮十郎先生は、1996年『ジャングルはいつもハレのちグゥ』でデビュー後、少年誌、青年誌、女性誌と幅広く活躍され、扱う題材も多岐にわたっています。なかでも、青年誌や女性誌に登場するのは、なかなかの複雑な事情を持った人物たちです。
あるときは、大学時代に事故死した恋人の子供を引き取り、会社では男装、家庭では女装という、二重生活のなかで子育てに取り組む主人公の話。またあるときは、会社をリストラされ、バーでヤケ酒をしていると、謎の美女に「うちで働かないか」と言われ、サインするといつの間にかその美女と入籍していたことを知らされる主人公の話。
金田一先生の作品では、そこに巻き起こる家族や人生の問題を、細かな心理描写で解いていく様子が丁寧に描かれています。そして今回の『ライアー×ライアー』も、ひと筋縄ではいかない恋愛模様が描かれているのです。
女子大生の湊(みなと)は、両親の再婚で義理の弟になった同い年の透(とおる)と同居中。同じ大学に通うも、透の中学時代からの女癖の悪さが原因で、ふたりの仲は冷戦状態です。
ある日、友達の頼みで高校時代の制服を着てギャルメイクで渋谷の街に出た湊は、偶然にも透に遭遇! 別人だと言い張る湊を信じた透だが、透はその「女子高生姿」の湊=「みな」に惚れてしまう……その透の一途さに押され、一度付き合うことになってしまったふたりの、二重恋愛コメディ!
透の、恋人である「みな」を前にした時の一途さと、家に帰ってきたときの姉・湊に対する冷たさのギャップに、読む側は湊と一緒に深みにハマっていってしまいます。最初についた「嘘」を隠すためにどんどん増えていく「嘘」たちは、本人たちの真剣さとは裏腹に、笑えるコメディシーンともなっています。
そして物語が進むにつれてわかってくる、もうひとつの「嘘」。映画でも、この物語の軸と、すれ違いから生まれるコメディが見事に再現されています。
■演技の力で、設定が「本物」に
原作マンガ『ライアー×ライアー』第10巻(講談社)
「女の子が男のフリして男子校に潜入」
「実はあのアイドルが変装してクラスメートだった」
「家では姉として、外では女子高生姿で義理の弟と付き合う」
少女マンガのなかで時々起こる、「変装して潜んでいたけど、周りは気付かない」という展開は、実際の生活で起きたら「いやさすがに気付くだろ!」と思ってしまうことでしょう。
マンガならではの展開を、実写でどのように表現するんだろう? と思っていましたが、映画『ライアー×ライアー』の本編が始まると、そんな危惧はどこかへ飛んで行ってしまいました。
松村北斗さん演じる無表情な透が、湊と「みな」に見せるわずかな表情の緩みの違い。森七菜さん演じる「みな」が、透に心を許していく様子。また、湊を演じる際の嘘を重ねなければならない心境の表現。
そこには、ふたりで「三角関係」になってしまっていく湊と透が見事に生きていました。今作では、透が「湊が『みな』であることに気付かない」というのも大きなポイントになっていきます。
実際、原作でも描かれているのですが、湊の変装は完璧なわけではなく、他の登場人物には簡単にバレてしまっています。しかし、肝心の透には一向にバレない。
嫌っている姉とは、イメージが結びつかないから…?
何が「嘘」で何が「本当」か、スクリーンにかじりついたまま、原作を知っていようと知ってなかろうと、ドキドキしながらラストへと向かっていきます。
原作10巻を約2時間の映画にする大変さに思いを馳せますが、「こんなに盛り沢山入れれたのか!」と、原作の「外せない」シーンは存分に楽しめます。
映画を見終わった周囲の女の子たちが口々に、「烏丸…烏丸ってさ…」と、小関裕太さん演じる烏丸(からすま)の名前を口々にしていたのが印象的でした。烏丸くんが気になる人は、ぜひ劇場へ……。
また、『ライアー×ライアー』の原作はもちろん、現在金田一先生が『デザート』にて連載している『NとS』(既刊4巻)もオススメです。付き合い始めた男性が自分の高校の担任として転任してきたことにより、付き合いを「なかった」ことにするも、何かと引き合ってしまうふたり……という、これまた複雑な設定に、新感覚なドキドキとキュンキュンをもらえること請け合いです!
金田一先生作品、そしてまだまだ続く映画『ライアー×ライアー』をぜひお楽しみ下さい!
(別冊なかむらりょうこ)
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