ハマる人続出の『ウマ娘』は、ゲームの歴史とリアルが結実した「完成形」か?
マグミクス / 2021年3月31日 11時50分
■「育成」という行為は面白いもの
スマートフォンゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』がリリースされて以降、TPの回復など待っていられずタフネス30を飲みまくり、それでも全く足りずにジュエルをバンバン使用してプレイし続けていますが、手が止まりません。
単純に見えて丁寧に深く作りこまれた育成システム、勝利がもたらす栄光と敗北による挫折の入り混じるストーリー、勝利のウイニングライブ、育成終了後の因子確定の瞬間まで楽しさと緊張に満ちあふれたゲーム性は、現時点で育成ゲームの頂点にいると言っても良いのではないでしょうか。スペシャルウィークの「全身全霊」など、サポートカードのイベント発生時に取得可能になるスキルに一部ランダム性がある点さえ改善されれば、なお良いのですが。
それにしても、「キャラクターの育成」はなぜこんなに面白いのでしょうか。ゲームの世界では過去、多くの名作育成ゲームが誕生してプレイヤーを楽しませてきました。『ウマ娘』のようにストーリーと育成をからめながら進んでいくシステムとしては、『実況パワフルプロ野球』が真っ先に名前の挙がるタイトルかと思います。その他にも『モンスターファーム』や『ドラゴンクエストモンスターズ』、『アイドルマスター』、『ポケットモンスター』と、シリーズ化していった名作は枚挙に暇がありません。
日本のゲームの歴史は育成とともにあると言っても過言ではないのでしょう。頑張って育てたキャラクターを戦わせて勝利する快感を多くの人が知っているからこそ、いま、『ウマ娘』にハマる人が続出しているのでしょう。
さらにさかのぼれば、育成ゲームには「ときめきメモリアル」と「プリンセスメーカー」という、ふたつのシリーズが存在しています。自分を鍛えて意中の相手を射止めるゲーム、娘を鍛えてその後の人生を歩む手助けをするゲームと、多少方向性の違いはありますが、限られたスケジュールのなかでパラメータを強化し、望む結果を得るために試行錯誤を繰り返すという基本的な部分は共通しています。自分だろうと娘だろうとモンスターだろうとウマ娘だろうと、「育てる」面白さは同じなのです。
■競馬に興味がなくても、馬の名前を知っていた時代
2021年3月30日に登場した育成ウマ娘「[ビヨンド・ザ・ホライズン]トウカイテイオー」(左)と「[エンド・オブ・スカイ]メジロマックイーン」(右)。どちらも競馬ファンでなくとも知る馬がモチーフに(画像:Cygames)
そして『ウマ娘』には、ゲームの歴史だけではなく、競馬で活躍した名馬たちの歴史という、強力な要素が存在しています。
1980年代から90年代、まだインターネットが存在しないか、あってもそれほど活用されてはいなかった時代、情報源はTVや新聞に限られていました。そのためスポーツニュースなどで競馬の情報に触れる機会は多く、まったく興味がない人でも「シンボリルドルフ」や「オグリキャップ」のような有名馬の名前は知っていたのです。
学生時代の知人友人には競馬をやっている人間も多く、1998年11月1日の「サイレンススズカ」の話を聞かされたこともありました。
実際、『ウマ娘』をプレイするたびに制作陣がどれほど研究を重ねてキャラクターを作り上げていったのかを思い知らされます。例えばオグリキャップは大食いキャラとしてご飯に執着する様子をしばしば見せますが、実際のオグリも幼少時から非常に食欲旺盛で、母馬があまり乳が出ない上に授乳拒否する傾向にあったこともあり、雑草もかまわずに食べまくっていたというエピソードがあります。
また、ハルウララについてはゲームシステム上、勝たなければ進められないため、史実とは異なりダート短距離で無類の強さを見せるウマ娘になっていますが、初勝利を挙げたときの喜びようが実に良いイベントになっています(最高です)。
また、有馬記念についてはほぼ負けイベントになっていますが、実は筆者、リリース前に開発者の方に質問をする機会があり「ハルウララで勝てるんでしょうか?」と聞いたことがあります。その際「不可能ではないです。でも本当に厳しいです」との回答をいただいたので、リリースからわずか1週間ほどでハルウララが有馬を制したと聞いた時はさすがに驚かされました。
その他にも、登場するウマ娘たちはそれぞれ魅力的な個性付けがなされており、知らないウマ娘でも試しにプレイしてみると「俺、今日からこの子のファンになる」と決意するほどの愛がこめられています。諸事情あってリリースに時間はかかりましたが、その分オープニングの「やっとみんな会えたねー!」という呼びかけが、さらに感情を揺さぶります。
育成ゲームと競馬。ふたつの歴史を背負ってターフを突っ走る『ウマ娘』の勢いは、まだ当分止まることはないでしょう。
(ライター 早川清一朗)
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