リメイク決定の『仮面ライダーBLACK』、注目したい「シャドームーン」との対決
マグミクス / 2021年4月18日 9時10分
■50周年記念企画『仮面ライダーBLACK SUN』
激しくせめぎ合う、光と闇の物語。1987年~88年にTV放映された『仮面ライダーBLACK』(TBS系)が、2022年春に『仮面ライダーBLACK SUN』としてリブートされます。
発表されたのは、2021年4月3日に行なわれた「仮面ライダー生誕50周年」企画の記者会見において。劇場アニメ『シン・エヴァンゲリオン 劇場版』が大ヒット中の庵野秀明監督が務める『シン・仮面ライダー』(2023年3月公開予定)、『仮面ライダーW』の続編『風都探偵』のアニメ化(2022年夏配信予定)とともに話題を呼んでいます。
『仮面ライダーBLACK』は、『仮面ライダースーパー1』(TBS系)から6年ぶりとなるTVシリーズだっただけに、ライダーファンからの期待度が高い特撮ドラマでした。原作者である石ノ森章太郎氏をはじめ、スタッフも原点回帰を目指し、アイデアと情熱をたっぷりと注いでいます。
物語を大いに盛り上げたのは、主人公である仮面ライダーBLACKの宿敵となる「シャドームーン」の存在です。黒いシックなデザインの仮面ライダーBLACKに対し、シャドームーンはシルバーメタリックなデザインがとても印象的でした。ライバルキャラが人気を博した『仮面ライダーBLACK』の魅力を振り返ります。
■平成ライダーに引き継がれた新設定
19歳の誕生日を迎えた南光太郎(倉田てつを)と秋月信彦(堀内孝人)は、同じ年の同じ日に生まれた親友同士でした。しかし、暗黒結社「ゴルゴム」に光太郎と信彦は拉致され、改造人間になる手術を施されるのでした。
脳の記憶まで奪われる寸前に光太郎は逃げ出し、仮面ライダーBLACKとして「ゴルゴム」と戦います。一方、残された信彦は“悪の王子”シャドームーンとなり、光太郎の前に立ちはだかることになるのです。
手術中の光太郎をギリギリのところで救ったのは、光太郎の養父であり、信彦の実の父親である秋月総一郎(菅貫太郎)でした。ほんのわずかな差で、光太郎は正義のヒーローに、信彦は悪の幹部となってしまうのです。
シャドームーンは敵とはいえ、見た目は仮面ライダーBLACKによく似ています。メカっぽい分だけ、よりかっこよく映りました。実力は伯仲。ライダー同士が生き残りを賭けて戦うという設定は、2002年~2003年に放映された『仮面ライダー龍騎』(テレビ朝日系)などの後の平成ライダーへと受け継がれることになっていきます。
■テレビ画面に反応した、今や幻の変身ベルト
『仮面ライダーBLACK』を象徴するライバル、シャドームーンは銀色の身体が特徴。画像は「S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーBLACK RX シャドームーン 塗装済み可動フィギュア」(BANDAI SPIRITS)
全51話が放映された『仮面ライダーBLACK』のベースとなる第1話の演出を務めたのは、元東映の小林義明監督です。『宇宙刑事ギャバン』(テレビ朝日系)などのメタルヒーローものをヒットさせ、大人向けの刑事ドラマ『Gメン’75』(TBS系)の渋いオープニングタイトルの演出を手掛けたことでも知られています。
親友同士が敵味方に分かれる『仮面ライダーBLACK』もハードタッチに描き、ライダーシリーズにシリアスさをもたらしました。続編『仮面ライダーBLACK RX』の第1話も、小林監督が担当しています。
当時の視聴者は、番組放映時に発売された「仮面ライダーBLACKテレビパワーDX変身ベルト」も記憶に残っているのではないでしょうか。この変身ベルトは仮面ライダーBLACKの変身シーンや必殺技を炸裂させる瞬間、テレビ画面に反応して自動的に動き始めるという、優れもののアイデア商品でした。
仮面ライダーBLACKの変身シーンや必殺技を決めるシーンでは画面がまぶしく光り、変身ベルトは画面の点滅を感知して作動するというシステムでした。1997年に起きた「ポケモンショック」以降、テレビ画面の過剰な点滅は制限されるようになったので、このシステムは使えなくなりました。時代性を感じさせるギミックだったと言えるでしょう。
■悪にも正義にもなりうる人間の「二面性」
リブートされる『仮面ライダーBLACK SUN』を手掛けるのは、1974年生まれの白石和彌監督です。山田孝之主演作『凶悪』(2013年)や綾野剛主演作『日本で一番悪い奴ら』(2016年)などの実録犯罪映画で注目を集め、往年のヤクザ映画を現代によみがえらせた『孤狼の血』(2018年)をスマッシュヒットさせています。人間のダークサイドをたくみに描く、今もっとも勢いのある映画監督です。
「仮面ライダー50年の歴史の重さに押しつぶされないように才能の全てを注ぎ込みます。南光太郎と秋月信彦の二人の悲しみの物語が、日本のヒーロー史に新たな爪痕を残せるように頑張ります」と白石監督はコメントしています。宿命のライバルである仮面ライダーBLACKとシャドームーンとの対決を、白石監督はディープな人間ドラマとして描くことでしょう。
ボタンひとつの掛け違いで、また置かれた立場の違いによって、人間は悪にも正義にもなってしまうことが『仮面ライダーBLACK 』では描かれました。もともと人間のなかには、悪にも正義にもなりうる要素があるのかもしれません。善と悪、光と影、愛と憎しみ、生と死……、異なるふたつの概念がせめぎ合うことで、人類は歴史を刻んできました。白石監督がライダー史上に残るライバル対決を、現代にどうリブートするのか、期待したいと思います。
(長野辰次)
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