『ちびまる子ちゃん』友蔵 心の俳句5選 泣ける…心にしみる名作ぞろい！

■友蔵の悲しい気持ちが込められた、哀愁漂う傑作

『ちびまる子ちゃん』には、数々の定番シーンがあり、なかでもまる子の祖父・友蔵（ともぞう）が詠む「心の俳句」は印象的です。友蔵は、うれしいことがあったときや、悲しいことがあったとき、その時の心情を密かに俳句にしたため、気持ちを整理しています。この記事では、友蔵が詠んだ俳句のなかで、心にしみる名作を厳選して紹介します。

●だまされる 老いぼれじじい ここにあり

　まずは、『まる子 ウソをつくの巻』で詠んだ俳句です。まる子は、そろばんを買うからと嘘をついて友蔵からお金をもらいますが、それがお母さんにバレて、叱られてしまいます。その様子をふすまの陰から見つめる友蔵は、「まる子や、だまされ役はこのワシがひきうけた。フフフ、嘘をついて反省して大きくなってゆくがよい」と、自分の役割を肝に銘じつつ、この俳句を詠みました。自分がだまされたことを怒るのではなく、自分をだました経験を機に成長してほしいという、孫への優しい思いが込められた一句です。

●くさきあし じっとたえてる まごあわれ

　次は、『まる子、靴磨きにはまるの巻』での俳句です。町で靴磨きのおじさんに出会ったまる子は、靴を見れば、その人の性格が分かるという話を聞き、早速、家にある靴を磨こうとします。まる子は、友蔵の靴を磨こうとしますが、臭いがキツイのを我慢していました。そのことに友蔵が気付いた時に、この俳句を詠みます。自分の足の臭さのせいで、孫に気を遣わせている様子を表現しており、そのうまさに笑ってしまう一句です。

●まごはいう ジジイにロマンは ふようだと

　続いては、『クリスマスは手作りでの巻』での俳句です。クリスマスに、「とし子ちゃんの家でロマンチックなクリスマスパーティーをする」と言うまる子に、どうしてもまる子と一緒にクリスマスを過ごしたい友蔵は、家でもロマンチックなクリスマスを計画しようと提案します。しかし、まる子は「おじいちゃんはロマンチックを求める歳じゃないでしょ」と痛烈なひと言を浴びせます。その言葉に、友蔵は大きなショックを受け、俳句で悲しみを表現します。友蔵の心の悲しみが伝わってきて同情もしますが、それよりも、友蔵の悲しげな姿に笑ってしまいます。

■楽観的な友蔵の心情を表した、長生きの秘訣が刻まれた名作

●七十を 過ぎてもわしは まだおじちゃん

　続いては、『アートでしあわせの巻』での俳句です。まる子は、オムライスにケチャップで家族それぞれの名前を書きますが、急いだたため、「おじいちゃん」とするつもりが「おじちゃん」と書いてしまいました。まる子は、「おじいちゃんは若々しいから、おじちゃんでぴったりだよ」と友蔵に言い、友蔵はうれしさを噛み締めて、この俳句を詠みます。友蔵はうれしさのあまり、この俳句は「友蔵 心の俳句」ではなく、「友蔵 若返ってウフフの心の俳句」として詠みました。こういう楽観的なところが、友蔵の長生きにつながっているのかもしれません。

●好奇心 これが長生きの 秘訣です

　最後は、『キャッチフレーズを作ろうの巻』での俳句です。まる子が今年の目標を立てるための参考資料として、お姉ちゃんが雑誌を持ってきます。ですが、それでもまる子は目標を立てられません。お姉ちゃんは、「そんな向上心のなさだと時代に遅れるよ」とまる子に忠告しますが、その言葉に友蔵が反応します。友蔵は「時代に乗り遅れるわけにはいかないから、ワシに見せてくれ」と言い出すも、まる子に「おじいちゃんの目標は長生きでしょ。もう決まってるんだからいいじゃん」と言われます。それでも友蔵は、「へへ、でもチト興味があるんじゃ……」と照れ笑いを浮かべながら詠みました。友蔵の長生きの秘訣が刻まれており、その姿勢を見習いたくなる一句です。

＊　＊　＊

　我々も、日常生活で自分の気持ちを整理したいときは、心の俳句を詠んでみると、友蔵のように明るく生きることができるかもしれません。現在、アニメ『ちびまる子ちゃん』では、「友蔵 心の俳句募集企画」を実施しています。この機会に、自分の思いを俳句にしたためてみてはいかがでしょうか。

（稲福竜生）