『鬼滅の刃』愈史郎が“怒っていない”貴重なシーン4選 愛するがゆえに怒るのが彼流
マグミクス / 2021年4月25日 7時10分
■愈史郎の、見せたことがない貴重な表情
『鬼滅の刃』に登場する愈史郎(ゆしろう)は、珠世が鬼舞辻無惨に復讐を果たすため、鬼について研究していたなかで、唯一、鬼化に成功した青年です。
不治の病で死の床に臥せっていた愈史郎は、珠世に人でなくなっても生きたいと思うかと問われ、彼はつらい道が待っていようとも鬼として生きることを選びました。以来、珠世の助手兼ボディーガードとして行動を共にします。
通常、無惨によって鬼化された鬼は居場所を把握され、無惨の名や彼にまつわる情報を話そうとすると死に至る呪いがかけられていますが、愈史郎の場合は、珠世に鬼にされたため、無惨の呪いは発動しません。そのうえ鬼ならではの高い身体能力を発揮し、体の再生も可能で、血鬼術(目のような模様が描かれた札を使って目くらましや視覚の共有ができる)も使える一方、鬼であっても人間を食べず、少量の血を飲むだけで生きることができるという、ハイブリッドな状態と言えます。
そんな愈史郎が嫌うのは、珠世との時間を他人に邪魔されること。珠世を溺愛するあまり、他人の存在や介在を極端に嫌い、それが言葉や態度にもストレートに出がち。いえ、相手に分からせるために、あえてそういう表情や態度、言葉を選んでいるふしもあるほどです。
そのため愈史郎は、ストーリー中、ほとんどのシーンで険しい顔をしています。でも、ちゃんとあるんです。愈史郎の眉間のシワが消え、ふと素の表情を見せる瞬間が!
本稿では、愈史郎が怒っていない貴重なシーン4選をご紹介します。
※この記事では、まだアニメ化されていないシーンの記載があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。
●その1・真っ赤になってうつむく愈史郎
無惨が送り込んだ毬で攻撃する鬼、朱紗丸(すさまる)と手のひらに目を持つ鬼、矢琶羽(やはば)に襲われ、毬で頭を吹っ飛ばされた愈史郎は、メキメキと音を立てて頭を再生させながら珠世に怒りをぶつけます。
愈史郎が鬼狩りに関わるのはやめようと言ったにもかかわらず、浅草で無惨と遭遇した炭治郎らをかばい、隠れ家にまで連れて帰った珠世の行動が気に入らなかったのです。
このエピソードが始まってすぐのコミックス第2巻、第15話の「大正コソコソ噂話(うわさばなし)」では、「珠世さんのこと好きなんでしょ!」と聞かれて、真っ赤になってうつむき、黙り込む愈史郎が描かれています。
「趣味=珠世」とまで言う愈史郎ですから、珠世のことが、好きで、好きで、好きすぎて……、フリーズしてしまったのでしょうか。純情にもほどがある! と、赤く染まった頬を指でツンツンしちゃいたくなるほどカワイイ、愈史郎の意外な一面を見られます。
●その2・上弦の鬼を奈落の底に落とすダークな愈史郎
無惨との最終決戦を前に、上弦の鬼たちと鬼殺隊の剣士たちの戦いが続く中で、クールでダークな愈史郎を見ることができます。
善逸との戦いに敗れたにもかかわらず、自分の負けを認めようとしない、その上弦の鬼は、次第に崩れ、奈落に落ちていく時ですら、善逸を呪い、愚弄し、蔑み続けます。
そんな鬼の横に突然、現れたのが愈史郎でした。愈史郎は、崩れながら落下していく鬼に向かって冷静にささやきます。「人に与えない者は、いずれ人から何も貰えなくなる、欲しがってばかりの奴は、結局、何も持ってないのと同じ。自分では何も生み出せないから」と。そして、妬みそねみにまみれながら、みっともなく死にゆく鬼に顔を寄せ、ささやくのです。「独りで死ぬのは惨めだな」と……。
この時の愈史郎はいたってクールですが、言葉は限りなくダーク。死にゆく鬼に対する同情はおろか、上弦の鬼を倒して喜んでいるわけでもなく、ただ淡々としているのがかえって怖さを増幅します。
珠世は、無惨との最終決戦で生き生きと、ゾクッとするほど美しく残酷になっていきますが、一方、愈史郎は冷静な姿勢を崩しません。鬼殺隊に一隊員として潜りこみ、懸命にサポートを続けることが、無惨への復讐に命を賭ける珠世のためになると信じ、愈史郎は珠世への愛を貫くのです。
そして、愈史郎がもっとも恐れた瞬間が……。
■愈史郎は、珠世への愛を胸に永遠の時を生きる…
●その3・珠世様に祈りをささげる…
無惨との最終決戦では、鬼殺隊の隊員たちはもとより、柱たちも命を落としたり深手を負ったりと被害は甚大でした。
そんな過酷な戦いにおいても、炭治郎はけっして諦めることなく無惨を追い詰めますが、何度も命の危機に直面します。それを見守る愈史郎は、神にでも仏にでもなく、「珠世様。炭治郎を守ってやってください。何とか守ってやってください。お願いします」と、涙ながらに珠世に祈るのです。
なぜ、愈史郎は、珠世に祈ったのでしょう? 好きだから? 珠世もまた命懸けで無惨を倒そうとしているから?
愈史郎は鬼です。「死」から逃れ、神にも仏にも背を向けて生きる鬼であるため、神にも仏にも祈れなかったのかもしれません。
しかし、鬼であるがゆえに、神や仏に祈ることはできなくても、鬼としての自分の創造主である珠世になら自分の祈りを聞き届けてくれるかもしれない……。愈史郎はそんなふうに思ったのでしょうか……。
そして、鬼殺隊がついに無惨を倒し、続く最大の危機を乗り越えた時も、愈史郎が語りかけた相手はやはり珠世でした。珠世のかんざしを握りしめ、「珠世様。終わりましたよ……」と涙を流す愈史郎のことをもう、珠世は抱きしめてやることもないのです……。
●その4・最後に見せた悲しい微笑み
無惨との死闘の後、愈史郎が入院していた炭治郎を見舞った時、「本当によく頑張ったな。えらいよ、お前は」と、愈史郎は悲しげな笑顔を見せました。
そして、帰っていく愈史郎の背中に、炭治郎は「愈史郎さん、死なないでくださいね」と声をかけます。
これは、愈史郎にとっては呪縛になるであろう、なかなかにしんどい言葉です……。生真面目すぎて、ときに「KY」な面もある炭治郎だからこそ、言えた言葉だったのかもしれません。最愛の人を失い、それでも死ぬことすら許されず生きていかなくてはいけないといのは、考えただけでゾッとするものです。
コミックスの最終話を読めば、愈史郎がかなわぬ思いを意外な形で昇華させたことが分かります。怒りっぽい性格は変わらなかったようですが……。
* * *
ちょっと面倒なタイプの愈史郎ですが、愛の深さは疑いようがありません。愈史郎が毎日7~10ページも書いていたという『珠世日記』にどんなことが書かれているか、気になるところです。
(山田晃子)
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