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声優・立木文彦さんが還暦を迎える 碇ゲンドウ、マダオ…声の歴史をたどる

マグミクス / 2021年4月29日 7時10分

声優・立木文彦さんが還暦を迎える 碇ゲンドウ、マダオ…声の歴史をたどる

■立木文彦、声優だけでなく歌手としても評価のある魅惑の声

 4月29日は声優の立木文彦(たちき・ふみひこ)さんのお誕生日です。しかも節目の60歳、還暦になられるそうで、誠におめでとうございます。

 立木さんといえば、その渋くて深みのある声をみなさんも聞いたことがあるでしょう。デビュー作は『戦闘メカ ザブングル』(1982年)ですが、筆者が最初に名前と声を認識したのは翌年に放送された『聖戦士ダンバイン』(1983年)のゼット・ライトになります。立木さんが初めてレギュラーで演じたキャラでした。

 この縁からか、富野由悠季監督作品の出演が多く、これ以降の20世紀中に製作された地上波テレビアニメ作品にはすべて出演しています。

 また、「ガンダム」関係というわけではありませんが、OVA『機動戦士SDガンダム』(1988~93年)のイメージソング『SDガンダム・パラダイス』という曲を、声優の西村智博さんと一緒に歌っていました。最近では歌手としての活動は少ない立木さんですが、当時は歌手としての才能にも注目されていたのです。

 立木さんが歌っていた有名な曲といえば、テレビアニメ『BLUE SEED』(1994年)のオープニングテーマ『CARNIVAL・BABEL ~カルナバル・バベル~』でしょうか。三松亜美さんと「TAKADA BAND」の名義で歌っていました。

 このTAKADA BANDという名前の由来は、原作者の高田裕三さんからだそうです。もともとは『3×3EYES』のイメージアルバム制作の際に結成したユニットで、その流れから『BLUE SEED』のオープニングを歌うことになりました。

 その歌声の響き方は、いつも聞いている声優としての声とはまた違う良さがあって、筆者的には楽曲が少ないことが残念でありません。

 この当時の代表的な作品といえば、『疾風!アイアンリーガー』(1993年)のゴールドフット、『勇者警察ジェイデッカー』(1994年)のシャドウ丸ですが、翌年の1995年に立木さんを代表するキャラと巡り合いました。それが『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)の碇ゲンドウです。

 碇ゲンドウの少ない言葉のなかに重みを込めた演技は、立木さんがそれまで担当してきたキャラとは違った魅力がありました。演じてきた年数と回数を考えると、もはや立木さんの一部ともいえるキャラなのかもしれません。

 先日『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021年)で完結を迎えたので今後の新作はないと思いますが、最後に見せた立木さんの迫真の演技はいつまでも記憶に残ることでしょう。

■いじめる側からいじられる側まで、テンション高めの演技力の妙

 立木さんの代表作はもちろん他にいくつもあります。

 年代順に追うと、まずは『名探偵コナン』(1996年~)のウォッカ。「黒の組織」の一員で作品に深くかかわっていますから最後まで登場しそうな感じですよね。ひょっとしたら立木さんの演じたキャラの最長記録となるかもしれません。

 その最長記録と並ぶキャラが、『クレヨンしんちゃん』(1992年~)の黒磯。作品への登場は1999年からですが、セミレギュラーで出番が意外に多いキャラです。

『ONE PIECE』(2000年~)では初期に出ていた海賊の首領(ドン)・クリークを演じていたほか、作品途中から登場して海軍元帥になったサカズキ(赤犬)を演じていました。作品内での因縁を考えるとサカズキも最後まで登場するでしょうから、立木さんの声で当分活躍が見込めますね。

『BLEACH』(2004~12年)の更木剣八は立木さんらしい骨太で豪快なキャラでした。近々、未アニメ化された部分を映像化するという話も出ているので、新作での活躍も期待できます。

 そして、忘れてはいけない立木さんのイメージキャラともいえるのが、『銀魂』(2006年~)のマダオこと長谷川泰三でしょう。何しろ声だけでなく、実写版の『銀魂』でも役者として演じているなど、間違いなく立木さんの一部、というかシンクロ率400%のレベルです。

 作品は完結したということで演じる機会はないかもしれませんが、『銀魂』のことですからいつ再開してもおかしくないでしょう(笑)。

 振り返ってみると代表的なキャラとはどれも長い付き合いで、いつでも変わらぬ声で演じるということは声優として大変だと思います。しかしそれを演じ続けているのですから、立木さんの声優としての演技力の高さをあらためて感じずにはいられません。

 キャラに命を吹き込む立木さんの演技力も好きですが、個人的にはナレーションも大好きです。『逆境無頼カイジ』(2007、2011年)の高めのテンションで視聴者を煽るような口調が最高でした。格闘技イベント「PRIDE」、「DREAM」でも同様で、立木さん独特のナレーション技術は芸術的だと思います。お寿司屋さんのCMも毎日聞いても飽きないレベル。というか、CMで声を聞くと流しでかけていたテレビを思わず見てしまいます。

 最近ではテレビでの顔出しのお仕事もあるのがうれしい限り。

 あとは『アンジェリーク』つながりで森川智之さんと結成したヴォーカルユニット「2HEARTS」での活躍も期待しています。

(加々美利治)

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