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『鎧伝サムライトルーパー』声優が音楽ユニットを組む“ブーム”の先駆けに

マグミクス / 2021年4月30日 8時10分

『鎧伝サムライトルーパー』声優が音楽ユニットを組む“ブーム”の先駆けに

■『鎧伝サムライトルーパー』登場キャラは、今年で48歳

 1988年4月30日から1989年にかけてテレビ朝日系列で放送されたアニメ『鎧伝サムライトルーパー』の登場キャラクターの多くには、生年月日が設定されています。主人公である烈火のリョウは1973年8月15日生まれ。天空のトウマは10月10日生まれ。光輪のセイジは6月9日生まれ、水滸のシンは3月14日生まれ、金剛のシュウは9月1日生まれと、全員が2021年で48歳を迎えます。心のなかの彼らはいつまでも若々しい姿のままですが、実は一緒に歳をとっていて、どこかで密かに暮らしているのではないかと想像を膨らませることができるのはなんとなく楽しいものです。

 さて、『サムライトルーパー』を語るには、当時のアニメの状況をまず書かなければいけません。1980年代半ば以降のTVアニメは、1986年から放送された『聖闘士星矢』の成功により、美少年たちが鎧をまとって戦う作品が次々と登場し人気を集めていました。『サムライトルーパー』もその流れで作られた作品であり、最大の成功作とされています。

 烈火のリョウたち5人の少年たちは、先祖が戦いの中で手に入れたバトルスーツ「鎧擬亜(よろいぎあ)」を身にまとい、突如人間界に現れた妖邪帝王・阿羅醐(あらご)が率いる妖邪の軍団との戦いに身を投じます。5人にはそれぞれ仁・義・礼・智・信と儒教の五常の教えから取られた文字が込められており、キャラクター性もそれぞれ文字に準じたものとなっていました。

 鎧擬亜の装着も、印象的な作りとなっているのが本作の特徴です。「武装ぉー!」と叫ぶと反物が画面を飛び交い、桜の花びらに変化して舞い散る中で武装が完了するという、和的な強さと美しさを兼ね備えたシーンとなっていたのです。それにしても、なんでトウマだけ本編で単独の武装シーンがなかったのでしょうか?

 また、敵である妖邪にも同じように忠・孝・悌・忍の文字が込められた鎧を身にまとう四魔将がおり、トルーパーたちは苦戦を強いられます。中盤以降は鬼魔将・朱天が離脱するものの、入れ替わるように現れた女妖邪・迦遊羅(かゆら)との戦いは熾烈を極め、シン・セイジ・シュウの3人が捕らえられてしまうという衝撃的な展開に突入していきます。

■男性声優ユニット「NG5」

 ただふたり、残されたリョウとトウマによる決死の救出作戦。もし負ければそれで終わりという緊張感に満たされた後半のストーリーは、実に見ごたえのあるものでした。

 特に謎の白い鎧「輝煌帝」の存在感は強烈なものがあり、リョウ役の草尾毅氏が必殺技を放つ時に叫ぶ「超~弾~道」のセリフの力強さは、今も簡単に思い出せるほど強烈に脳へ刻み込まれています。なお、草尾氏にとっては本作が初の主役でのレギュラー作品であり、その後多くの役を演じていく上での礎となりました

 そして『サムライトルーパー』で最も重要なのは、キャラクターの人気がそのまま声優に波及し、烈火のリョウ役の草尾毅氏、天空のトウマ役の竹村拓氏、光輪のセイジ役の中村大樹氏、水滸のシン役の佐々木望氏、金剛のシュウ役の西村智博氏による音楽ユニット「NG5」が結成されたことでしょう。

「NG5」のステージには女性ファンが大挙して押し寄せ、熱狂の渦を巻き起こしました。酸欠で倒れた女性が運び出される光景がTVで流れるほど強烈なムーブメントであり、声優の音楽活動には大きな価値があることを、多くの人が理解したのです。コロナ禍以前は声優がライブ活動を行うのは当たり前の状況でしたが、その流れを作り出したのが「NG5」だと言っても過言ではないでしょう。またあの熱狂が戻ることを切に願います。

 本作は楽曲も優れており、特に後半のオープニングテーマ『サムライハート』とエンディングテーマ『BE FREE』はバラドルとしてブレイク寸前の森口博子氏が担当しています。森口氏と言えば『機動戦士Zガンダム』の『水の星へ愛を込めて』が有名ですが、こちらの2曲も実力派シンガーとしての力が存分に発揮された名曲です。

 放送終了後もOVA『輝煌帝伝説』が作られるなど強い存在感を示していた『サムライトルーパー』。17話が一部地域で2回放送されてしまうといったトラブルにも見舞われましたが、TVアニメ『ケロロ軍曹』では草尾毅氏演じるドロロ兵長がトルーパーパロディの武装シーンを披露し、近年に至っても輝煌帝のフィギュアが発売されるなど、いまだに根強い人気があります。2023年にはリョウたちもちょうど50歳になりますので、そこでなにか新しい企画が出てくることを個人的に期待しております。

(ライター 早川清一朗)

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