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“赤い彗星”に影を落とし続けた、シャアの恋愛観。『Z』から『逆襲のシャア』まで…

マグミクス / 2021年5月6日 17時30分

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■仮面で素顔を隠したシャア・アズナブル

“赤い彗星”こと、シャア・アズナブルといえば、SFアニメ『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)の主人公アムロ・レイのライバルキャラです。アムロとは敵対する関係にありますが、仮面で素顔を隠したシャアの存在なしでは、「ガンダム」はTV放映から40年以上も続く人気シリーズにはならなかったのではないでしょうか。

 2021年5月21日(金)より劇場公開が予定されているシリーズ最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、シャアとアムロの双方から影響を受けた若者ハサウェイ・ノアの戦いの物語となっています。『閃光のハサウェイ』の公開に先立ち、『機動戦士ガンダム』の製作局だった名古屋テレビ(メ~テレ)では5月7日(金)の深夜1時34分から『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)を放送します。また、Netflixなどでも『逆襲のシャア』は配信されています。

 宇宙世紀を生きるハサウェイのみならず、多くのファンに強烈な印象を残したシャア・アズナブル、その人生には、彼自身の「恋愛」が影を落とし続けていました。今回はシャアの恋愛観を通して、「シャアはいったい何者だったのか」を考えてみたいと思います。

■ララァのことが忘れられない…

 富野由悠季監督にとって初のオリジナル劇場アニメとなった『逆襲のシャア』は、シャアとアムロとの最後の戦いが描かれたヒット作です。『機動戦士ガンダム』の続編『機動戦士Zガンダム』(テレビ朝日系)では共闘を果たしたシャアとアムロですが、『逆襲のシャア』ではネオ・ジオンの総帥としてシャアは復活。地球に小惑星アクシズを落とし、地球を汚染し続ける人類を粛清しようとします。

 ネオ・ジオンの総帥となったシャアは、これまでのように仮面やサングラスで顔を隠すことはしません。カリスマ性を漂わせるシャアは、戦術士官のナナイ・ミゲルを公私にわたるパートナーにしています。ナナイは大人っぽいムードのセクシー美女です。さらにブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノアが想いを寄せる奔放な少女クェス・パラヤも、シャアの危険な魅力に惹かれ、ネオ・ジオン軍の一員となるのでした。

 いつも女性にモテモテのシャアですが、彼の心のなかにはポッカリと穴が空いています。1年戦争の際、アムロとの戦闘中に亡くなった女性パイロットのララァ・スンのことがずっと忘れられずにいたのです。

 志なかばで暗殺された父ジオン・ダイクンが思い描いた「人類は地球を離れ、宇宙の民となることで覚醒する」という途方もない夢の実現と、恋人ララァを奪ったアムロへの復讐心が、シャアを突き動かしています。

■ザビ家への復讐後は、迷走を続けたシャア

『逆襲のシャア』に登場したハサウェイ・ノアが主役となる、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。2021年5月21日公開予定 (C)創通・サンライズ

 シャアはいくつもの名前と顔を持っています。妹であるセイラ・マスの前では、常に優しい兄キャスバル・ダイクンであり続けました。劇場版『機動戦士ZガンダムII 恋人たち』(2005年)ではカットされていましたが、TV版『機動戦士Zガンダム』の第37話「ダカールの日」では、「ティターンズは地球に魂を引かれた人々の集まりで、地球を食いつぶそうとしている」という名演説を披露しています。キャスバルとしてのシャアは、理想家であり、とても純粋なナイスガイなのです。

 しかし、“赤い彗星”として仮面を被ったシャア・アズナブルは、別人のように冷血な男です。有能な士官を装ってジオン軍に入隊し、父親を亡き者にしたザビ家への敵討ちをクールに遂行します。士官学校時代の親友ガルマ・ザビだけでなく、シャアの正体を知りながらもニュータイプ部隊を与えたキシリア・ザビも、シャアによって葬られました。しかし、ザビ家への復讐を果たしたシャアは、その後は迷走することになります。

 1年戦争後、『Zガンダム』でのシャアはクアトロ・バジーナという偽名を使って、反地球連邦組織エゥーゴに参加します。同じくエゥーゴの女性士官だったレコア・ロンドは、シャアへの不満から敵対するティターンズの指揮官シロッコに寝返ります。シャアがキスする際にサングラスを外さなかったことが、レコアの女としてのプライドを傷つけたのです。

 同じく『Zガンダム』でジオンの残党を率いる女性指導者ハマーン・カーンも、かつてはシャアに好意を寄せていたようです。しかし、シャアが自分になびかなかったことを、ハマーンは根に持っています。また、『逆襲のシャア』では成熟した大人になったように見えるシャアですが、寝言で「ララァ・スン」とシャアがつぶやくのを多くの女性が耳にしたそうです。モビルスーツの操縦は巧みでも、女性に関しては脇が甘いとしか言いようがありません。

■アムロとの戦いだけが、残された生きがいだった

 富野監督は『逆襲のシャア』で男女間のドロドロした関係を、なかでもシャアの人間としてのかっこ悪さを容赦なく描きます。シャアは愛人であるナナイに甘える一方、13歳の少女クェスにニュータイプとしての能力があることが分かると、甘い言葉で彼女を巧みに利用します。自分に好意を抱く女性たちを、道具のように扱います。まるで、ジゴロの成れの果てのように思えてきます。

 結局、シャアはララァ以上に愛せる女性にはもう出逢うことがない、と悟ってしまっているようです。ネオ・ジオンの総帥として、本気でこれからのスペースノイドを導くつもりだったのかも疑問です。地球連邦への反乱は、悲劇のヒーローとして歴史に自分の名前を残したかっただけのようにしか思えてなりません。

 最愛の女性ララァを失ってしまったシャアは、もはやアムロと戦うことだけが生きがいだったのではないでしょうか。そう考えると、シャアは不憫な男に思えてきます。両親と離別し、大人たちの思惑に振り回された不幸な生い立ちに加え、ザビ家やアムロに対する復讐でしか、自分の存在意義を見つけることができずいます。おそらく周囲の女性たちは、そんなシャアを放っておけず、母性本能から手を差し伸べてしまうのでしょう。

 ララァ・スンというひとりの女性の深い愛に、魂を飲み込まれてしまった男。それが、シャア・アズナブルだったのではないでしょうか。

(長野辰次)

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