初期ウルトラ作品の「胸が張り裂ける話」3選。次世代に残したい貴重なエピソードたち
マグミクス / 2021年5月15日 7時30分
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■スーツアクターも泣いていた…ウルトラマンでしか描けない「人間の罪」
『シン・ウルトラマン』や『ウルトラマントリガー』などの新作映画やTVシリーズ、さらにはウルトラサブスクこと「TSUBURAYA IMAGINATION」のサービス開始など、コロナ禍においてもウルトラマン人気はますます高まりを見せています。
そんなウルトラシリーズですが、決して全てが明快で読後感の良い話ばかりではないところが、また大きな魅力です。なかには胸が張り裂けてしまいそうになるエピソードも存在します。そこで今回は、初期作品である『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』のなかから、特に評判の高い「胸張り裂け回」をご紹介します。
●スーツアクターも号泣……『ウルトラマン』第23話「故郷は地球」
多くの方にとっては説明不要の「胸張り裂け回」かもしれません。子供たちに最も「真似された」怪獣のひとつであるジャミラが登場するエピソードです。
宇宙開発競争の真っ只中、某国の宇宙飛行士だったジャミラが、遠い惑星に置き去りにされ祖国に隠蔽されたあげく、怪獣に姿を変えて地球へと復讐しにくる……という衝撃的なストーリーです。
ジャミラは歴史の被害者であり、科特隊からすればジャミラは排除すべき敵。いったいどうすれば良いのか。いつもは底抜けに明るいイデ隊員が自らの正義の落とし所に葛藤するなか、ウルトラ水流によってジャミラは絶命します。
「人類と夢と 科学の発展のために死んだ戦士の魂 ここに眠る」という碑文とともにジャミラは埋葬され、その死を悼んで幕引き……かと思えば、イデ隊員の「犠牲者はいつもこうだ。文句だけは美しいけれど」という強烈な言葉が発せられて終わるのです。キレイゴトにほだされ“片付いた気”になっていた視聴者の心にイデ隊員の言葉は深々と刺さります。なお、ウルトラマンのスーツアクターだった古谷敏さんはスーツのなか、ジャミラを想い泣いていたそうです。
●ウルトラ警備隊が悪魔に見える……『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」
宇宙人からの「侵略」を描いてきた『ウルトラセブン』ですが、こちらのエピソードはその立場が逆転。実は我々地球人もまた先住民であるノンマルトを海底に追いやって栄えた「侵略者」だった可能性が提示されるのです。
ノンマルトからの使者(的存在)である少年の「ノンマルトは人間より強くないんだ、攻撃をやめてよ」という悲痛な叫びも虚しく、最終的に彼らの住処であった海底都市まで破壊してしまいます。この時のキリヤマ隊長の「海底も我々人間のものだ」というセリフ……果たしてこれまでの侵略者とどこが違うというのでしょうか。満田かずほ監督、モロボシ・ダンを演じた森次晃嗣さんも印象深いエピソードとしてこの回を挙げています。
●問題作中の問題作……『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」
全ウルトラシリーズのなかでも最大の問題作にして大傑作。今なお新規ファンの心を揺さぶり続けているエピソードです。実際、脚本を担当した上原正三さんは放送後、メインライターから外されています。言葉のあやではなく、本当に“問題作”だったのです。
廃屋で暮らす身寄りのない佐久間少年。瀕死のメイツ星人を匿うも、少年自身が宇宙人だと町の人から嫌疑をかけられ、露骨な差別を受けることに。いつしかそれは暴力へとエスカレートし、堰を切ったように町中の人が佐久間少年へと襲いかかる事態に発展します。たまらずそれまで匿ってもらっていたメイツ星人が「自分こそが宇宙人だ」と姿を現し、少年を助けようとするも、警察官に射殺されてしまうのです。
これだけでもすでに心が摩耗してしまうのですが、さらにそこから「ウルトラヒーロー」の根幹を揺るがす展開が待ち受けています。明確に「差別」の恐怖を描いた同エピソードは、観終わる頃には茫然自失。なぜだか無性に吉田拓郎が聴きたくなってしまいます。
ファンからすれば有名なエピソードばかりだったかもしれませんが、このような物議を醸した回が今も『ウルトラセブン』第12話のように欠番にならず、誰でもアクセスできる状態を保ってくれている……この奇跡にまずは感謝したいと思います。このエピソードを次の子供たちのために守ってくれた人がいる。そう思うだけで、人間に希望を抱き続けることができるのです。
※今回紹介した3つのエピソードは、配信サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」または各DVD/Blu-rayソフトなどで視聴可能です。
(片野)
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