ウルトラ怪獣の人気者「ゴモラ」…変遷の果ての「大出世」で、人類の味方に?
マグミクス / 2021年5月23日 7時10分
![ウルトラ怪獣の人気者「ゴモラ」…変遷の果ての「大出世」で、人類の味方に?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_54492_0-small.jpg)
■ゴモラが歩んできた苦難の道
ウルトラ怪獣の「ゴモラ」というと、まずは三日月を思わせる形状の角を思い出す人が多いと思います。この部分は黒田長政の兜がモチーフだそうで、シルエットだけでゴモラだとわかる特徴的なパーツですね。
その攻撃方法は単純明快。怪力とシッポによる攻撃のみ。火炎放射とか電撃のような飛び道具なしで、いたってシンプルなストロングスタイルです。このシッポは特殊で、切られてもしばらくの間は動き回って暴れるほどの生命力を有していました。
ゴモラはジョンスン島に生息していた古代恐竜ゴモラザウルスの生き残りで、万博に展示するため生きたまま捕獲しようという、人間の身勝手な考えで日本まで連れて来られたところを逃走した……という経緯があります。こういった事情から、ゴモラは他の怪獣のような一方的な加害者でなく、むしろ被害者だと言えるかもしれません。
ただゴモラのスゴいところは、被害者であってもウルトラマンと互角に戦うほどの強力怪獣だというところです。『ウルトラマン』(1966年)で唯一、2週続けて戦ったのはゴモラだけ。つまりウルトラマンが1話で唯一倒せなかった怪獣です。
こういった事情もあって、数ある怪獣のなかでゴモラの人気は比較的いつも上位にいました。『ウルトラマン』にあまり詳しくない人も知っているレベルの怪獣でしょう。
ただ、他の人気怪獣と同じく、良いリメイク造形に恵まれない時期もありました。映画『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』(1974年製作)では、念力を使うという設定が加えられたり、『ウルトラマン80』(1980年)では形状もだいぶ異なったせいからか、「〇代目」という肩書でなく「ゴモラII」という名前になっています。
その他にも『ウルトラマン』の怪獣がリメイクデザインされた『ウルトラマンパワード』(1993年)で、「パワードゴモラ」という個体が登場しました。
そんなゴモラが往年通りのデザインで復活したのが『ウルトラマンマックス』(2005年)です。ところが、本来は2メートルほどのサイズが巨大化したという設定で、怪獣というよりも珍獣という扱いでした。これは、あえて初代とは異なるイメージで登場させたいというスタッフの意図だったそうです。
しかし、この着ぐるみを流用した『ウルトラマンメビウス』(2006年)では、初代の出身地であるジョンスン島に出現するなど、ようやく設定とデザインが一致するゴモラが登場しました。こうして、21世紀になってゴモラはようやく完全復活したわけですが、その後、それまで歩んできた道以上の意外な出来事が待っていたのです。
■21世紀になり一躍脚光を浴びるゴモラ
2007年の『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』で、ゴモラは実質主人公怪獣の立ち位置に。画像は「ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル 1」 DVD(バンダイビジュアル)
ゴモラに起こった意外な出来事。それは、作品の主役に抜擢されたことでした。
排出されたカードで遊ぶことのできる「アーケードカードゲーム」が流行した際、ウルトラ怪獣を使った『大怪獣バトル ULTRA MONSTERS』という筐体がリリースされます。このシリーズの中心に設定された怪獣がゴモラでした。
そして、このゲームが人気となると、テレビで『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(2007年)という作品がスタートします。ゴモラの立ち位置は主人公レイの相棒ともいえる怪獣で、実質的な主役として他の怪獣たちと戦いました。
この時、ゴモラに新たな能力が加わります。それが、角から発生させる「超振動波」。もともとゴモラの角は地中を潜る時に振動するから、素早く地面を削除できる……という考察もあったので、新たに加わったというよりも新解釈という位置づけかもしれません。
さらに強化形態であるEXゴモラ。ブレイブバーストやレイオニックバーストという姿かたちは一緒でも、エフェクトや体色に変化があるバージョンに変身する能力も披露します。
ゴモラにとって幸運だったのは、「大怪獣バトル」の世界観ではウルトラマンが戦わないということ。そのことで、ウルトラ怪獣としては異例の大出世ができたわけです。その結果、ウルトラマンと並び立つ怪獣という立ち位置まで確立しました。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009年)では、ウルトラマンと一緒に怪獣軍団と戦うという活躍も見せます。
この流れで製作された『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(2010年)では、自分をもとに作られたロボット怪獣「メカゴモラ」も現れ、子供たちとってゴモラはヒーローと同じ存在となりました。
さらに『ウルトラマンX』(2015年)では、ウルトラマンエックスに変身する主人公、大空大地が持っている両親の形見のスパークドールズ(人形になった怪獣)がゴモラでした。作品中、大地とゴモラの心の触れ合いが何度か描かれたほか、エックスの鎧である「ゴモラアーマー」、防衛組織Xioが開発したサイバー怪獣「サイバーゴモラ」など、ゴモラがかなりクローズアップされています。
もちろん、ウルトラマンと敵対するゴモラもいまだに存在していました。しかし、これだけベビーフェイスの時代が長くなると、敵役として憎めなくなるものです。ゴモラが倒されると、むしろ可哀想な気持ちになるのは仕方ありません。思えば初代のゴモラも人間の被害者だったことを考えると、近年のゴモラの扱いには納得できるものを多く感じます。
(加々美利治)
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