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海外でも“怪獣”人気高まる! 観客を魅了したのは偶然から生まれた「人間臭さ」

マグミクス / 2021年5月24日 18時50分

海外でも“怪獣”人気高まる! 観客を魅了したのは偶然から生まれた「人間臭さ」

■偶然から生まれた怪獣の持ち味

 日本での公開が待たれるハリウッド映画『ゴジラVSコング』が全米で2021年3月31日に公開されると、3週連続1位を記録。興行収入8000万ドル(約86億4000万円)を超え、コロナ禍のなかで最高記録を更新しています。さらに中国、オーストラリア、メキシコなどでも公開され、全世界興収も3億9000万ドル(約421億1200万円)を突破。前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を超える勢いを見せています。

 同作は、2014年から公開された『GODZILLA』と2017年公開『キングコング:髑髏島の巨神』からなる「モンスターバース」の4作目。日本が誇る怪獣文化が世界的なヒットを続けています。しかし、ここに来てなぜジャパニーズカルチャーである怪獣が受け入れられているのでしょうか。今回は、その理由について特撮の歴史から考えてみます。

 日本で初代『ゴジラ』が公開されたのは1954年。観客動員数は961万人を記録し、邦画初の全米公開作という大ヒットを記録しました。しかし、ゴジラは「偶然の産物」だったという事実もあります。本多猪四郎監督は1933年に制作された『キングコング』に感銘を受け、和製キングコングを作る計画をスタート。そこから円谷英二氏が提案したのは“巨大なタコ”が主人公の映画でした。

 しかし、『キングコング』の特徴であった、コマ撮り(ストップモーション・アニメ)をタコで行うと膨大な時間がかかること、コマ撮りを熟知した人材が世界に数人しかいなかったことから断念。そこで、中に人間が入る“着ぐるみ”案が浮上し、ゴジラが誕生します。着ぐるみの怪獣は今でもウルトラマンや仮面ライダーシリーズなどで健在の撮影手法となっています。

 もとは“折衷案”という背景もあるゴジラですが、この着ぐるみならではの持ち味が海外でも広まっています。日本の怪獣を扱った映画『パシフィック・リム(2013年)』のギレルモ・デル・トロ監督や、『GODZILLA(2014年)』のギャレス・エドワーズ監督が口を揃えて語っているのは「人間臭さが良い」ということ。

 海外ではモンスターやクリーチャーなど人間から遠く離れた存在たちが人気を集めるなか、“人間臭さ”が感じ取れる複雑なキャラクター像が斬新に映っているようです。両作品の怪獣は着ぐるみではなく、CGで製作されていますが、『パシフィック・リム』の怪獣は“なかに人が入れるもの”というデザイン上の制約を設けて製作されました。

 一方の『GODZILLA』では、本来は着ぐるみとミニチュアでの撮影を希望していましたが、セットは一度壊したらお終いのワンテイクしか撮れないためCGに。代わりにゴジラ本体は、直立型でゆっくり動く日本のゴジラを忠実に再現しています。

 ここで疑問に思うのは、ハリウッドではCGで製作される怪獣が増えるなか、なぜ日本では着ぐるみの怪獣が今も健在なのか? ということです。怪獣のスーツは重く、スタジオを借りる必要もあり、リアルさを追求するため良い照明も必要です。何かと苦労が多い「着ぐるみ撮影」に対し、CGの方がコストを抑えられる場合もあり、撮影上の制約も少ないという強みがあります。

 そんななか登場したのが、庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』(2016年)です。同作はゴジラの動きをつける役に野村萬斎氏を起用。やはり生身の人間が動きをつけることを追求し、話題になりました。着ぐるみが持つ日本独特の味は半世紀以上も受け継がれ、その進化版として、怪獣は着ぐるみで演じて、怪獣の皮膚などCGで加工するなどのアイデアも出ているようです。

『ゴジラVSコング』ではどのような動きを見せてくれるのか……? 公開された予告映像に期待は高まるばかり。新たな公開日の決定を楽しみに待ちたいところです。

(椎名治仁)

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