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伝説の特撮『魔人ハンターミツルギ』。時代劇と巨大ロボが融合も、現場は逼迫して…?

マグミクス / 2021年6月3日 18時10分

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■「特撮+時代劇+巨大ロボ」のアニクリエーション

 特撮番組『魔人ハンターミツルギ』(フジテレビ)は、1973(昭和48)年1月~3月まで、12話が放送されました。地方は5局ネットのみ、再放送も少ないそうで知らない人は多いかもしれません。しかしカルトなファンも多く、ビデオやLD、DVDも発売されています。

 第2次怪獣ブームで特撮が百花繚乱のなか、『魔人ハンターミツルギ』は他との差別化をはかるため、「特撮&時代劇&アニクリエーション」で勝負に出ます。

 アニクリエーションとは、番組制作会社の国際放映が名づけたもので、人形を手で動かしてコマ撮りを繰り返すストップモーションアニメのことです。映画『キングコング』(1933)に代表される手法ですが、これを怪獣との戦闘シーンに取り入れて週1回30分の放送を試みるというのは異例中の異例でした。

 物語は江戸時代、さそり座から飛来した宇宙忍者サソリ軍団が妖術と巨大怪獣を使って徳川を倒し、日本の占領を画策。徳川家康から防衛を託されたミツルギ一族の長老は、銀河、彗星、月光の忍者三兄妹に、智・仁・愛の秘刀を授け、日本の平和を守るよう命じます。兄妹が秘刀を打ち合わせると巨大神ミツルギ(身長20メートル、体重4万トン)に合体変身し、怪獣に立ち向かいます。

●着ぐるみにはない不思議な魅力?

 当時幼かった筆者も同番組を観ていました。ドラマパートでは役者たちの芝居を中心に展開しますが、やはり一番の楽しみは、アニクリエーションで描かれた巨大神ミツルギと怪獣のバトルシーンです。ミツルギはクワガタのような角が特徴の兜をした少し西洋風の甲冑姿。胸からは「火炎弾」と呼ぶミサイルが飛び出します。珍しい風貌のヒーローで、不思議な魅力を醸し出していました。

 シーンの動きはカクカクしていますが、妙に新鮮でした。コマ撮りには利点もあって、怪獣が骸骨になっても動きますし、空中でバラバラに切られても、切られた部位が単体で動くのです。着ぐるみでは難しい演出や、不自然な動きもアニクリエーションなら可能なのです。

 DVDがリリースされた際、筆者は当時を懐かしみながら観たのですが、ミツルギと怪獣のバトルは繊細で、例えばミツルギの指一本一本を折る動作がハッキリわかるシーンなどは、「ここだけ撮るのに何時間かけたのだろう?」と唸ってしまうほどです。

 他にも、動きに合わせて舞い上がる土煙や怪獣の口から飛び出る火炎の具合は困難だったでしょう。おそらく何度も撮り直しをしたのではないでしょうか。怪獣もわざと汚く見えるデザインに造って野性的にしたり、火薬も黒い煙と白い煙を調合して薄暗いセットに合わせるなど、スタッフのこだわりはかなり強かったそうです。

■やはり現場を圧迫した、アニクリエーションでの制作

(左から)彗星、銀河、月光のミツルギ忍者三兄妹。智・仁・愛の秘刀を合わせると魔人ミツルギに変身する

 そんな『魔人ハンターミツルギ』は、わずか12話で終了します。一番のネックは、やはりアニクリエーションだったようです。国際放映は専用スタジオを設け、担当班は昼夜を問わずフル活動。しかし、人形を少しずつ動かしてカメラに収める作業の繰り返しはとてつもない時間がかかるため、1日で撮影できたのは良くて20秒から30秒だったとか。

 そのため、話数が進むにつれて、人形の顔をアップにして足下を持って動かしていたり、静止画が長かったりと、目に見えてスタッフの逼迫した状況が伝わるようになります。最大の見せ場だったはずのバトルシーンは、毎週90秒ほどが限界でした。

 また、時代劇はセットや衣装も全て専用です。屋外ロケ地は寺社や城、自然が広がる山野や採石場などに限られます。制作費はかかるしロケのスケジュールもカツカツ。これで毎週30分仕上げるのは過酷すぎたのかもしれません。

 あらためて見返してみると、全体的にツッコミどころはたくさんありました。江戸時代なのに三兄弟はヘルメットをかぶり、手榴弾を使います。サソリ軍団は宇宙から来たのに、なぜか和装で武器が刀や弓矢です。特撮ファンの間では“特撮ワースト作品”とする人も多いと聞きましたが、裏を返せば、それほど印象深かったという見方もできます。

 筆者は個人的に好きでしたし、主題歌「走れ!嵐の中を」の“♪まじーんハンター まじーんハンター ミツルギ参上~!”というサビが大好きで、レコードも買ってもらったほどでした。

 もし、巨大神ミツルギが着ぐるみ撮影だったら、人気や評価はどうだっただろう……? そんなことを思う人は私だけではないかもしれません。しかし、第2次怪獣ブームの時代、アニクリエーションで巨大ヒーロー特撮に挑戦した『魔人ハンターミツルギ』は、ひとつの伝説を残した番組といってよいでしょう。

(石原久稔)

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