『FF』シリーズの「ダーク」な要素3選 仲間の裏切り、世界の崩壊…
マグミクス / 2021年6月8日 17時10分
■ダークな要素を随所に取り入れた「ファイナルファンタジー」シリーズ
2021年5月27日の公式番組中に発表された『ドラゴンクエストXII』について、ネット上では”「ドラゴンクエスト」(以下、ドラクエ)シリーズの作風の変化”について注目が集まっています。より具体的には、製作者の堀井雄二氏が「ダークな感じで大人向け」とコメントしたこともあり、ファンの間では「ファイナルファンタジー(以下、FF)にテイストが近くなるのでは?」といった声もあがっているようです。
「FF」と「ドラクエ」と言えば、ともに国産ゲームを代表する人気RPGシリーズ。しかし同じカテゴリに属しているとはいえ、その作風は異なる部分も多々あります。そこでこの記事では、参考として「FF」シリーズが持つダークな要素を3つピックアップ。スーパーファミコン期の過去タイトルを具体例に取り上げつつ、世界観を形作るポイントをご紹介します。
●闇の力を抱える異色の主人公(FFIV)
「FF」シリーズ第4作目『ファイナルファンタジーIV』(1991年)に登場する「セシル・ハーヴィ」(以下、セシル)は、特殊な経歴を持つ主人公。彼はストーリー最序盤、紛うことなき正義の味方ではなく、”軍事国家バロンのエリート部隊長”としてプレイヤーの前に姿を表します。その外見は漆黒の鎧に包まれた暗黒騎士。同名の専用ジョブを最初期から習得しており、戦闘時には自身の体力を減少させて放つ固有アビリティ「あんこく」で全体攻撃が行える稀有なキャラクターでした。
ただし、心が闇に飲まれたから暗黒騎士になっているわけではなく、あくまでも”セシルが持ち前の精神力で闇の力を制御している”という設定。本来の彼は心優しく思慮深い性格で、巨大な軍事力を有するバロンの暴挙に疑念を抱いています。事実、オープニングでは水のクリスタル奪取任務に赴く道中で部下の批判(略奪行為をするべきではないなど)をたしなめつつ、国家に仕えるセシル自身もバロン王(育ての親)に対する戸惑いを吐露しているのです。
結果としてセシルは部隊長を解任された後、バロンを離反して世界の運命を左右する旅へ出発。ストーリー中盤に差し掛かる頃には暗黒騎士を脱ぎ捨て、光の力を身に宿す「パラディン」へとジョブチェンジを果たします。単純明快に悪を打ち倒す正義のヒーローではありませんが、セシルは苦悩と葛藤を抱えてなお歩み続ける、影を持ったダークヒーローと言えるのではないでしょうか。
●主人公への嫉妬心が招いてしまった裏切り(FFIV)
続けて取り上げたいのが「仲間の裏切り」。それもちょっとした利己心から来るものではなく、友情や愛情が引き金になったヘビーな裏切り行為です。
『FFIV』でセシルと共に戦う「カイン・ハイウインド」(以下、カイン)は、「FF」シリーズ屈指の”裏切りキャラ”として定着しています。やや不名誉な通り名に聞こえるかもしれませんが、かえってファンの間で長く語り継がれる要因となっているのも事実。実際に本編内で宿敵「ゴルベーザ」に2回も洗脳されてしまい、そのたびにセシル一行とコントローラーを握るプレイヤーに衝撃を与えました。
洗脳の原因となったのは、カインがセシルに向けた嫉妬心、そしてセシルの恋人である白魔道士「ローザ・ファレル」(以下、ローザ)におぼえた恋心。特に恋心の方は既にセシルとローザが相思相愛のため、カインの内なる好意は届きそうにないことが第三者の目から見てもハッキリと分かります。そんな”心の隙間”をゴルベーザに利用されてしまい、(外部の圧力があったとは言え)1度のみならず2度も仲間を裏切ってしまったカイン。とりわけ2度目の裏切り時に発するセリフ「だいじょうぶだ…おれは しょうきに もどった!」のインパクトは相当なもので、「結局どっち側!?」と大勢のプレイヤーがツッコミを入れるキッカケとなりました。
●人々を絶望の淵に沈めた世界崩壊(FFVI)
最後は「FF」シリーズ6作目『ファイナルファンタジーVI』(1994年)で描かれた”世界崩壊”。世界が崩れ去る前に主人公たちが寸出のところで食い止める……なんて奇跡は起こることなく、狂気の魔導士「ケフカ・パラッツォ」(以下、ケフカ)の暗躍により、本当に世界が崩れていきます。
その様相はまさしく地獄絵図。地面の隆起に合わせて生じた地割れと、裂け目に飲まれて無念に散っていく多数の命。未曾有の地殻変動によって海中に沈んでいった人々の住まう大地。惑星レベルで災害に見舞われている危機を示した象徴的なイベントシーン。そのラストで黒背景に白文字で浮かび上がる「その日 世界は引き裂かれた」というメッセージ……。この文言通り、プレイヤーがキャラクターを操作する「1年後の世界」(BGMも変化)では、気に入らない人間を遊び半分で粛清するケフカの悪行、荒れ果てた大地で耐え忍ぶ住民たちの生活が生々しく描かれています。
起こってはならない事態が実際に起きてしまう。その経過で大量の生命が奪われ、「ここから挽回するのはとうてい難しいのでは……」と思わせるほどに深刻なダメージが主人公サイドに及ぶ。トリガーを直接引いたケフカの残忍なキャラクター性も合わさっており、この世界崩壊は何年経っても絶望的なシーンとして後世に語り継がれていくことでしょう。
今回はスーパーファミコン期の「FF」シリーズにおけるダークな要素をご紹介しましたが、その他のシリーズ作品にも押さえるべき見どころは盛りだくさん。また「FF」だけでなく、「ドラクエ」シリーズ作品にも暗くて重い、ゆえにファンを惹きつけるダークな部分は存在します。両シリーズの最新作(ファイナルファンタジーXVI・ドラゴンクエストXII)が発表された今だからこそ、「FF」と「ドラクエ」が持つ独自のテイストに思いを馳せてみるのも良いのではないでしょうか。
(龍田優貴)
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