『ガンダム』世界の恋愛模様 “三角関係”は悲劇を呼ぶのか?
マグミクス / 2021年6月10日 7時10分
■「ガンダム」で悲劇を生みだす三角関係
「ガンダム」シリーズに数多く登場する三角関係のなかでも、最も重要な意味を持つのが、アムロ・レイ、ララァ・スン、シャア・アズナブルの3人によるものでしょう。初代『機動戦士ガンダム』の最終盤、ニュータイプとして覚醒したアムロと、ララァが心でつながり互いを理解しようとしたとき、ふたりのやりとりに気づいたシャアは「ララァ、奴との戯言はやめろ!」とあからさまな嫉妬を見せて割り込んでいきました。
TV版の描写だけでは少々分かりにくい点もあるのですが、富野由悠季監督が手掛けた小説『密会―アムロとララァ』では、ララァはシャアの庇護下にありながらも、アムロに強く惹かれていたことが描写されています。後に「ニュータイプのなり損ない」とパプテマス・シロッコに痛罵されたシャアも、少なくともこのときはニュータイプとして最高の状態にあったアムロとララァが作り上げた世界についていけたのです。
しかし結果、ララァは死亡しアムロとシャアの間には拭い難い溝が生まれ、後の「シャアの反乱」での最終対決へとつながる道が舗装されてしまいました。
「シャアの反乱」でアムロのνガンダムがシャアのサザビーを撃破し、サイコ・フレームの光がアクシズの落下を食い止めた後、両者がどうなったのかは不明とされています。しかしTV版『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』の21話「この世の果てへ」において、シャアの再来と呼ばれるフル・フロンタルの元を訪れた赤と黄色の光、そのふたつの光と共に溶け合った青の光の描写から見るに、既に彼らは肉体という楔(くさび)から解き放たれているのでしょう。エンディングテロップに刻まれた「古谷徹」「潘恵子」の名前の横にキャラクター名が存在しなかったのは、個の存在から離れ、より高位の意志となった証かもしれません(池田秀一氏はフル・フロンタルとしてクレジット)。この3人の関係は、このような形になってようやく完結し、安らぎを得ることができたのでしょう。
■『0083』『NT』の三角関係
ヨナが伸ばす手の先は、リタ?『機動戦士ガンダムNT』 (C)創通・サンライズ
他にも、ガンダム世界には数多くの三角関係が存在しています。
しばしば話題となるのがOVA『機動戦士ガンダム 0083 STARDUST MEMORY』のコウ・ウラキ、ニナ・パープルトン、アナベル・ガトーによるものでしょう。
ニナはコウといい感じになっておきながら、実は昔ガトーと付き合っていたという設定は正直驚かされました。挙句の果てにギリギリの局面でニナはガトーを選択しコウに銃を向けるという選択肢を選んだ時、あまりのことに目を見開いた視聴者は多いでしょう。筆者は高校生の時にこのシーンを見て、「ニナって何考えてるんだ!?」と困惑したのをよく覚えています。しかも最終回になって、笑顔でコウの前に姿を現したときは「……どういう神経してるんだこいつ」と、心底恐れを抱いたものです。
近年では、2018年に公開された劇場版『機動戦士ガンダム NT(ナラティブ)』も三角関係が大きな意味を持つ作品となっていました。
本作の3人の主人公であるヨナ・バシュタ、ミシェル・ルオ、リタ・ベルナルはかつてコロニー落としを予言して多くの人を救った「奇跡の子供」として称賛されました。しかし結果、ニュータイプとしての素養があるとされて『機動戦士Zガンダム』でロザミア・バダムが強化を受けた「オーガスタ研究所」で過酷な人体実験を受けることになります。このときヨナはリタに思いを寄せ、ミシェルはヨナに好意を示していましたが、ある出来事がきっかけで3人は離れ離れになってしまいます。
リタはユニコーンガンダム3号機フェネクスの実験中に暴走し行方不明となり、再会したミシェルとヨナの関係は冷え切っていました。ストーリーが進むにつれ3人のそれぞれの気持ちが少しずつ明らかになっていくのですが、その結末は果たして皆が望んだものだったのか、それは今の筆者には分からないままです。ガンダム作品に登場する三角関係は、悲劇を誘発せずにはいられないのでしょうか。
2021年6月11日(金)に公開が予定されている劇場版『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』でもおそらくハサウェイ・ノア、ギギ・アンダルシア、ケネス・スレッグによる三角関係が描かれるでしょう。原作ではその関係に明確な決着が付けられていますがやはり悲劇を避けられずにいます。
果たして劇場版ではどのようなエンディングが待っているのか。三角関係の形に変化は生まれているのか楽しみでたまりません。
(ライター 早川清一朗)
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