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福井晴敏・皆川ゆか氏が語る、映画『宇宙戦艦ヤマト』再構成の狙いとは?

マグミクス / 2021年6月10日 18時10分

福井晴敏・皆川ゆか氏が語る、映画『宇宙戦艦ヤマト』再構成の狙いとは?

■まだファンではない人の入り口に

「宇宙戦艦ヤマト」のリメイクシリーズをドキュメンタリー視点で再構成したアニメ『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』が2021年6月11日(金)から上映されます。先立って展開された『宇宙戦艦ヤマト2199』と『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』両シリーズを再構成した作品ですが、人類による宇宙開発の歩みなど、新規に制作された映像も加えつつ、ナレーションと真田のインタビュー音声を軸として物語が語られます。

 構成・監修・脚本は小説のほか映像作品も数多く手掛ける福井晴敏氏、脚本は小説・マンガ原作などを幅広く手掛ける皆川ゆか氏です。シリーズ最新作となる『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』(2021年上映予定)も控えるなか、今作でどのような映像体験を見せてくれるのか、おふたりに話を聞きました。

* * *

――本作は『宇宙戦艦ヤマト2199』と『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を再構成した作品ですが、その狙いはどのようなものでしょうか?

福井晴敏(以下、福井) 昔、『宇宙戦艦ヤマト』(以下、ヤマト)が社会的ブームになった大きな理由は、総集編を劇場で公開したからなんです。とはいえ今の時代はブルーレイも配信もあります。総集編を作ることにどれだけの意味があるのかと考えたときに、どうせ作るならまだファンではない人の入り口になるようなものを作りたいと思ったんです。もちろんすでにファンの方も、過去の作品をつないでいるだけだと思って観たら、目を回すような作りになっています。

――皆川さんは本作で初めて「ヤマト」シリーズの映像作品の脚本を担当されます。参加の経緯を教えて下さい。

皆川ゆか(以下、皆川) 元々『ヤマト』が好きなんで、福井さんが『2202』をやると聞いた時に「チーム福井に入れてよ」とお願いしていたんです。それで続編の『2205』の脚本チームに参加することになったんですが、その前に総集編を作ることになって、「『2199』と『2202』の真田さんの資料をまとめてくれ」と頼まれたんですよ。

「脚本大変そうだなあ、誰がやるんだろう」と思っていたんですが、福井さんに「脚本やってよ」と言われて、自分が書くことになりました(笑)。

――ドキュメンタリーという形式にしたのはなぜでしょうか?

福井 『2199』と『2202』を合わせるとTVで52話、劇場版1本という膨大な量になるので、ドラマをつないで1本の映画にするのはそもそも不可能です。この量をまとめるならドキュメンタリーだなと、何も悩まないで決まりました。

――使用するエピソードはどのようにして決めたのでしょうか?

福井 『2199』パートに関しては真田(志郎)と古代守の関係をベースにして、ストーリーの流れを肉付けしていきました。『2202』のパートは逆に、「人間として大きく成長した真田から見る古代進」という視点で構成されています。

皆川 真田という男を変えた、古代兄弟の話が軸になっています。

■「音楽」を軸に映像を編集

ヤマトの乗組員のひとり、真田志郎のインタビューを軸に物語が進行する。『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』より

――制作で苦労したことを教えて下さい。

福井 やはり量が多いので、一番最初は切りに切っても2時間半くらいになってしまったんです。

皆川 これ以上はフィルムを縦に切るしかない(笑)。

福井 そこで音楽を基準に据えました。ディレクターの佐藤(敦紀)さんに「ここからここまでのシーンは1曲で乗り切って」とお願いしたんです。こうすれば音楽の尺のなかに映像も収まってきます。佐藤さんはもともと予告編を作るプロなので、映像は動きっぱなしでナレーションと音楽も鳴りっぱなしのまま、合間合間に決めの一言を入れるのが絶対的に上手いんですよ。

皆川 佐藤マジックで乗り切れると最初の段階で思っていました。すごく気持ちのいい映像に仕上がりましたね。最初はラストの真田の演説に合わせて本線のストーリーを入れるアイデアもあったんですが、ちょっとわかりづらいという話になったんです。しかも、とんでもない量になることがわかったので無しになりました。ある程度進んだところで佐藤さんが試験的に映像を繋いでくださったので、それを受けて続きを書くといった形で、脚本と映像の進行はキャッチボールみたいなところがありましたね。

福井 2019年末に脚本があがって、ベースはそれほど動いてはいません。あとは微調整しながらちょっとずつ詰めていきました。

皆川 福井さんは軸がぶれない人なので安心感はありました。ただ、最初は90分に収めると言われて、どうすればいいんだという気持ちはありました(笑)。

福井 収まらなかったね(笑)。

皆川 自分は映像の段取りがよく分かっていなかったので、とりあえず自分でシーンを繋いでみたんです。そうしたらどうしても3時間とか2時間半になっちゃうんですよ。なので途中から1分1ページのムック本で、90ページあるんだと考えるようにしたのですが、その前は難しかったですね。

――それだけ物量に苦労したにも関わらず、新規映像も入っています。

福井 『ヤマト』は我々の世代からすれば伝説ですけど、若い人にはまったく縁がないんです。元々『ヤマト』は戦後日本の総括や批評性を含んだ作品ですが、リメイクシリーズもその精神を受け継いでいます。絵空事では無いことを伝えるために、現実の歴史であるアポロ計画のシーンを最初に入れました。

皆川 今回の総集編では『2199』と『2202』を別の形から見た新しい魅力を出せていると思います。この作品を見て気になるところがあったら、ぜひこれまでの作品を見て欲しいですね。新しく『ヤマト』に触れた人もそうですし、1974年の初代『ヤマト』以来のファンも、もう一度見てみようという気持ちになってくれたら嬉しいです。

※アニメ『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』は、2021年6月11日(金)より、期間限定で全国の映画館にて上映予定です。

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会 (C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202 製作委員会

(早川清一朗)

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