RPG史をネタで彩る”珍装備” 「エクスカリパー」「チェーンソー」

■逃げるは恥だが、強くなる…？　”珍武器”が多く登場する『FF5』

　RPGを味わい尽くすなら、ただ物語をクリアするだけでなく、キャラクターの潜在能力を引き出してくれる「装備」収集もファンにとって欠かせない醍醐味のひとつ。最強武器・防具を手に入れることに”やり込み要素”を見出すファンも少なくありません。この記事では、発売から時が経っても語り継がれる、いっぷう変わった「装備」をゲームタイトルの垣根を越えてご紹介します。

　まず、スーパーファミコン用ソフト『ファイナルファンタジー5』（以下、FF5）は多くの”珍武器”が初登場した作品としても有名です。

　たとえば、「エクスカリバー」の偽物「エクスカリ”パー”」。数値上の攻撃力は本物と同じですが……戦闘で使用すると「1」ダメージしか与えられない衝撃の贋作です。　しかし、”ネタ”要素がファンの心を捉えたか、『FF5』で実装されてからシリーズのほかタイトルにもたびたび登場する伝統の武器として定番化しました。

　言葉遊びとしての様相の強い「エクスカリパー」以外であれば、設定に妙がある「チキンナイフ」「ブレイブブレイド」も有名です。

　物語の進行をさせていくなかで、どちらかひとつしか入手できない両武器は、性能も両極端。「チキンナイフ」は、初期の攻撃能力値こそ低いものの、戦闘の逃走回数に比例して攻撃力を上げていく設定を持つ臆病者の武器。戦闘中にランダムで「とんずら（逃げる）」コマンドが発動してしまう厄介な仕様も持っています。

「ブレイブブレイド」はその逆で初期の攻撃力が高く設定されているものの、逃げれば逃げるほど弱くなっていく“勇気の武器”として登場するのです。

　二者択一を迫られた際（その名前からも）「ブレイブブレイド」に人気が集中しそうなモノですが……戦闘から逃げ続けた「チキンナイフ」と1回も逃げることのなかった「ブレイブブレイド」では、最終的に戦闘力では前者に軍配があがります。慣れたプレイヤーほど「チキンナイフ」を選ぶ皮肉を含め、ファンの間で語り草となっているのです。

　もちろん、ロマンを求めるのも一興。『FF5』がIOS/Androidをはじめとし、さまざまな媒体に移植されている今、あえて「ブレイブブレイド」を選択し、戦闘から逃げない”縛りプレイ”を敢行してみることも面白いかもしれません。

■ラスボスすらぶった切るのは…

　1989年発売、ゲームボーイ用ソフト『魔界塔士Sa・Ga』は「サガ」シリーズの始祖となる作品。スクウェア（現：スクウェア・エニックス）初のミリオンタイトルとしても有名です。奇想天外な世界観が人気を集めた本作は、バラエティに富んだ武器が登場することでも注目を集めました。

「エクスカリバー」や「よいちのゆみ（与一の弓）」など、スクウェアの別タイトルでもお目にかかれる定番武器のほか「ビームライフル」「ひなわじゅう」「44マグナム」などなど……時代や世界を越えた、ありとあらゆる武器が用意されているのです。

　多様な武器が入り乱れるなか、ファンの間で最強にして最大の”ネタ”武器と語り継がれている武器が、劇中内のショップで販売されている「チェーンソー」です。『魔界塔士Sa・Ga』のラスボスは「神」。世界の創造主を名乗るだけあり、「ミサイル」や「はどうほう」といった、物騒な武器を使っても容易に倒すことのできない強さを誇っています。ですが……「チェーンソー」を用いることで、一撃撃破が可能です。

　これは即死効果を持つ「チェーンソー」がラスボスにも通用してしまうプログラム上のミスが原因でしたが、殺伐としたセリフ回しで展開されてきたストーリーの最後、あっけなく『かみはバラバラになった』と表示されるメッセージのインパクトから、公式も認める”ネタ”として昇華されています。

　また、“ネタ”色の強い武器でいえば、大剣「レイトウマグロ」や、熊のぬいぐるみを模したハンマー「おやすみベア」が登場する『モンスターハンター』シリーズも有名です。

　最後に挙げるのは防具です。スーパーファミコン用ソフト『スーパーマリオRPG』に登場する「スーパージャンパー」についても語るべきでしょう。フレーム単位での正確なボタン入力を100回連続成功させて初めてゲットできる幻の装備……なのですが、もはや”ネタ”といって差し支えない入手難易度の高さを誇っています。

　武器とはいわば力の象徴。無論、”強さ”こそ魅力です。しかし、ゲームにおける武器の真価は実用性だけではありません。キャラクターの魅力を引き出す「武器」「防具」は、時として製作側の遊び心まで反映させるキーアイテムとしても機能しているように思います。

（ふみくん）