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人間が続々登場している『ゼンカイジャー』のテコ入れ(?)が、むしろ楽しみな理由

マグミクス / 2021年6月20日 15時10分

人間が続々登場している『ゼンカイジャー』のテコ入れ(?)が、むしろ楽しみな理由

■全50話の連続ドラマだからこそ期待できる

 2021年3月から放送中の『機界戦隊ゼンカイジャー』(以下、ゼンカイジャー)の勢いが止まりません。記念すべきスーパー戦隊シリーズ第45作となる本作は、回を重ねるごとに全力全開ぶりに拍車がかかってきています。

 本作は企画発表の段階で大きな注目を集めていました。これまでの戦隊モノの常識を覆すような、人間ひとりに対しロボ(キカイノイド)4人という大胆な編成なのです。そして、『ゼンカイジャー』のモチーフはなんと「スーパー戦隊シリーズ」そのもの。キカイノイドたちもゼンカイジュラン(赤)は『恐竜戦隊ジュウレンジャー』、ゼンカイガオーン(黄)は『百獣戦隊ガオレンジャー』と、歴代スーパー戦隊のスピリットを踏襲した戦士なのです。

 文字で説明するといささかハイコンテクストに思えますが、物語は単純明快。ともすればややこしくなりがちな「並行世界」をめぐる物語を、軽快にさばいていくテンポの良さもまた魅力の一つです。

 さて、そんな前代未聞の設定の『ゼンカイジャー』ですが、バラシタラの息子「ステイシー」、『海賊戦隊ゴーカイジャー』の海賊版ことツーカイザー兄妹と、いわゆるヒューマンタイプ(顔出し)のキャラクターが続々登場してきています。

 これに対し、ネットでは「テコ入れが早いのでは」などと懸念する声が少なくありません。確かに当初打ち出されたイメージからズレが生じていることは事実ですが、戦隊シリーズファンからすれば、むしろこうした展開はワクワクを喚起するものではないでしょうか。近作を振り返りながらその理由を解説します。

●「全50話」のボリュームから考えた場合、後半の展開は…?

 まず「スーパー戦隊シリーズ」は全約50話と日本で放送されているなかで最もスパンの長い連続ドラマです。それでいてメインターゲット層は未就学児童たち。玩具展開を前提に目にも楽しい新展開が1年間で、何度も繰り返されるもの。敵キャラが仲間になったり、逆に仲間が裏切ったり、別の黒幕が登場したり、女性幹部が可愛すぎたり……こうした王道展開はもちろんのこと、近年ではさらにこうした王道をフリにした展開も多いのです。

 近作では『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019年)におけるナダの変化、少し前の作品ですと『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014年)の中盤で明かされる衝撃展開など、1年間という放送期間をフルに活用したダイナミックな構成も可能なのです。ということは……追加戦士(のような存在)を序盤で登場させた「ゼンカイジャー」は、本来なら中盤で起こりうることを前倒しせざるを得なかったくらい、怒涛の「展開」が後半に待ち受けている……そんな期待をしてしまいます。

●『ルパパト』でギャラクシー賞受賞!香村純子さん脚本に期待が集まる

 こうしたファンの期待を後押ししてくれているのが、脚本家・香村純子さんの存在です。ご自身もスーパー戦隊シリーズの大ファンであり、担当した『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年)は戦隊シリーズ初となるギャラクシー賞を受賞しています。

 彼女の持ち味は「立場が違う者同士の人間関係の描写」です。『ゼンカイジャー』はまさに人間とキカイノイドという立場の異なる者同士の交流から始まり、新たに登場したヒューマンタイプもキャラクターまた然りです。香村作品の根幹をなす「人物を掘り下げる力」は、登場人物が増えればそれだけ深化していくとも捉えられます。

 香村さんにはさらにとっておきの強みがあります。脚本家としてのキャリアの多くをヒーローもので積み重ねてきた香村さんにとって、 “新玩具の登場”といった商業的要請との兼ね合いも慣れたもの。これまで同様、違和感なくストーリーに実装してくれることでしょう。

「スーパー戦隊シリーズ」は1年間、視聴者の反応を加味しながらジャズセッションのように物語を紡いでいくもの。香村純子さんやプロデューサーである白倉伸一郎さんがいったい、どんなサプライズを子供たち(とその後ろにいる大人たち)に仕掛けてくれるのか、これからも全力で期待したいと思います。

(片野)

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