30年目を迎えた「聖剣伝説」 切なく儚いヒロインの末路に涙…
マグミクス / 2021年6月24日 7時10分
■30年続く「聖剣伝説」シリーズ第一作目
スクウェア(現スクウェア・エニックス)が手掛けたアクションRPG「聖剣伝説」シリーズは、2021年6月で生誕30周年を迎えます。同シリーズはこれまでにナンバリングタイトルを4作リリース。同一の世界観を有する派生タイトルも含めると、合計10作近いバリエーションを誇っています。
6月24日には、『聖剣伝説 Legend of Mana』(1999年/PlayStation)のリマスター版もNintendo Switch(以下、Switch)向けに発売。シリーズを総じて今もなお根強く支持されていると言って良いでしょう。
この記事では、シリーズの礎を築いた第一作目『聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-』(以下、聖剣伝説FF外伝)にフォーカス。ゲームシステムやストーリー周りの魅力を改めて振り返ります。
※本文の一部にストーリーのネタバレ記述を含みます。
●『ゼルダの伝説』に近いゲームシステムを採用
『聖剣伝説FF外伝』は、1991年6月28日に送り出されたゲームボーイ用ソフトです。「主人公」(プレイヤー)は、グランス公国の闘技場で剣を振るう奴隷剣士。と言っても本意でそうしているのではなく、国を統べる「シャドウナイト」との戦いに破れた結果、死と隣り合わせの閉鎖空間で余興の試合を強制されているのです。過酷な状況を耐え忍ぶ最中、偶然耳に入る世界の危機。かくして主人公はシャドウナイト打倒および世界を救済するため、マナの血脈を受け継いだ「ヒロイン」と一緒に各地を巡ることになります。
タイトル名に”ファイナルファンタジー外伝”とある通り、ゲーム中の各種要素を「ファイナルファンタジー」(以下、FF)シリーズから踏襲しているのが特徴。「ポーション」や「エリクサー」といった「FF」でおなじみの回復アイテムはもちろん、「ケアル」に「フレア」といった魔法も登場します。また主人公は「戦士」、冒頭から存在感を放つシャドウナイトは「魔剣士」、敵キャラクターの「黒魔道士」や「忍者」……などなど、グラフィック周りの引用も数多く見られます。
しかし、ゲームシステムは「FF」由来のコマンド選択型RPGではなく、任天堂の『ゼルダの伝説』(1986年/ファミコン)を意識した作りとなっています。プレイ中の見下ろし型視点に始まり、ダンジョン内の謎解き(ギミック)、武器やアイテムを用いるアクション性。それでいてRPG風の成長要素(レベルアップ・ジョブ選択によるステータス偏重)なども盛り込まれており、当時の開発スタッフが『ゼルダの伝説』からインスパイアされつつも、しっかりと差別化を図った上で新たな方向性を打ち出していることが見て取れました。
●切ないエンディングが心に刺さる
『聖剣伝説』における最大の魅力、それはプレイヤーの心情を大きく揺さぶるストーリー。奴隷として最底辺から這い上がる主人公、もといプレイヤーの前には、作中を通して幾度の別れが訪れます。
親友として主人公を懸命に支えるも、志半ばで散ってしまった「ウィリー」。モンスターの襲撃からヒロインを守った反面、自身が致命傷を受けて息を引き取った「ハシム」。奴隷剣士の身分から這い上がり、弟を助けるために怪物メデューサに立ち向かった「アマンダ」。いずれもストーリーの節目でプレイヤーの目に映る”死の描写”ですが、特にアマンダとの別れはまさしくトラウマ級。最終的に彼女が辿った結末は、多くのプレイヤーに心苦しさと一種の罪悪感を与えました。
その切なさはエンディングへ至るクライマックスでも健在。アマンダとの別れを経てなお、残酷な世界はプレイヤーの心境へさらなる追い打ちをかけるのです。シャドウナイトを打ち倒し、奥に控えた真の黒幕も葬った主人公とヒロイン。世界の命運を握るふたりの男女が祝福を受け、これまでの苦労が報われるハッピーエンド……かと思いきや、宿命と言うべき究極の選択がヒロインに問われます。この状況はプレイヤーの手でどうすることもできないため、覚悟を決めてヒロインの決断を見守るしかありません。主人公とヒロインの名前「自分の名前」+「好きな人の名前」と設定しているプレイヤーならなおのこと、受け入れるには気が重い結末に涙をのんだ方も多かったのではないでしょうか。
シリーズ第一作目として礎を築きながらも、後続タイトルとはまた違ったゲームシステムを採用した『聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-』。リアルタイム世代のプレイヤーは、本作がもたらした切なさと感動をこの先もきっと忘れることはないでしょう。
(龍田優貴)
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