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『カウボーイビバップ』のTV最終回「よせあつめブルース」でわかった、真のエンディング

マグミクス / 2021年6月26日 13時10分

『カウボーイビバップ』のTV最終回「よせあつめブルース」でわかった、真のエンディング

■90年代アニメーションの最高傑作『カウボーイビバップ』

 1998年6月26日は、アニメ『カウボーイビバップ』の地上波放送版最終回「よせあつめブルース」が放送された日です。『新世紀エヴァンゲリオン』がもたらした1990年代半ば以降のアニメブームの熱冷めやらぬ時期に放送された本作は、主人公スパイク・スピーゲルを山寺宏一氏、相棒のジェット・ブラックを故・石塚運昇氏、不慮の事故により過去と切り離されてしまった女イカサマ師、フェイ・バレンタインを林原めぐみ氏が演じ、実力派声優が顔を揃えた作品です。

 ひと癖もふた癖もあるキャラクターたちによるクールな台詞回し、ドタバタコメディでありながら根底に秘められたシリアスなストーリー、華麗なメカアクションなど、非常に見どころが多い作品です。

 オープニングテーマの「TANK!」は、作曲を菅野よう子氏が担当し、シルエットを多用した映像と相まってアニメミュージックの世界に大きなインパクトをもたらしました。また、エンディングテーマの「THE REAL FOLK BLUES」も、ウェットな雰囲気を前面に押し出した名曲として知られています。

 キャラクター・ストーリー・作画・設定・音楽などアニメを構成するすべての要素が高度なレベルで結実した本作は日本国内のみならず海外からも高い評価を得ており、90年代を代表するアニメ作品といっても過言ではないでしょう。

 さて、そんな『カウボーイビバップ』ですが、1998年の4月から6月にかけてテレビ東京系列で最初の放送が行われました。

 しかしながらこのとき、全26話で構成されていたはずの『カウボーイビバップ』は13話分しか放送されていません。その理由は、この作品が非常に「渋い」雰囲気に満たされていたことにありました。今から考えると信じられないことですが、「この作品は売れない」と判断され、放送枠を確保できなかったのです。

 約2年をかけてどうにか放送にこぎつけたものの、当初制作が予定されていた別作品が間に合わなかったための代打起用であり、枠は13話分しかありませんでした。しかもこの時期はアニメ『ポケットモンスター』で視聴者が光過敏性発作を起こしたいわゆる「ポケモンショック」などの理由によって非常に放送基準が厳しくなり、地上波での全話放送は叶わない状況となっていたのです。

■TV版最終回で初めてわかった、「真の終わり」の存在

『カウボーイビバップ』は音楽も高く評価されている。菅野よう子氏が率いるバンド「シートベルツ」は、圧倒的な演奏内容でファンを魅了した。画像は「カウボーイビバップ サントラ1」(JVCエンタテインメント)

 ただ、このあたりの情報は今だからこそ分かる話で、当時の視聴者は知りません。もちろん筆者も何も知らず、スタイリッシュなオープニングとウェットなエンディングテーマ、超一流の作画とアクション、そして声優陣の達人的な演技を楽しんでいました。

 そう、このときの筆者は『カウボーイビバップ』をギャグとシリアスを織り交ぜた、1話完結のスペースオペラ作品としか思っていなかったのです。TVで放送された1話は本来の2話である「野良犬のストラット」でしたが、後に真の1話である「アステロイド・ブルース」を見て、ラストの「アディオス」の声の後に起こった出来事を見て絶句したことを思い出します。最初に「アステロイド・ブルース」を見ていたら、『カウボーイビバップ』という作品を誤解することもなかったでしょう。

 そのような誤解をしながらもずっと見続けていた理由は、不完全な状態でも非常に素晴らしい作品だったからに他なりません。しかし、おそらく本作の全体像を理解している製作スタッフはさぞかし無念だったことでしょう。その思いが、13話「よせあつめブルース」へとつながっていったように思えます。

「よせあつめブルース」は、作中の映像を切りとりつなぎ合わせた、総集編として作られているように見える作品でした。しかし作品を彩った声優陣が語るセリフはどこか作為的につなぎ合わせられたような言葉が並び、「これはただの最終回ではないな」と感じさせる作りとなっていたのです。

 やがてエンディングを迎えようとしたときに、画面にはふたつの文が映し出されました。

「THIS IS NOT THE END」
「YOU WILL SEE THE REAL”COWBOY BEBOP”SOMEDAY!」

 このときはじめて、視聴者はこれが真の終わりではないことを知らされたのです。

 言葉の意味を知るのはそれから4か月後。WOWOWでの放送がスタートし、真の『カウボーイビバップ』を目にしたときとなりました。

(ライター 早川清一朗)

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