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誕生から半世紀!ピンチをチャンスに変えた「仮面ライダー2号」の功績とは?

マグミクス / 2021年7月3日 8時20分

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■登場のきっかけは、アクシデントが生んだ偶然から

 ちょうど半世紀前のこと、『仮面ライダー』最大のターニングポイントとなった出来事は、「仮面ライダー2号」の登場だったと思います。それは予想できないアクシデントから生まれました。

 主役である仮面ライダー/本郷猛役の藤岡弘、さんが起こした撮影中のオードバイ事故。その結果、藤岡さんは全治3か月以上の重傷を負いました。プロデューサーだった東映の平山亨さんは急いで病院に向かいましたが、思ったより元気だった藤岡さんを見て一度は安堵したそうです。

 この時、平山さんは病室で藤岡さんの上半身だけ撮影すれば、ケガの完治まで製作が続けられると考えていました。しかしそんなことをしたら藤岡さんは一生歩けなくなると医師から言われてがく然としたそうです。藤岡さんはケガを大したことがないと思わせるため、相当の痛みをこらえていたのでした。

 この時、『仮面ライダー』の放送はまだ始まっておらず、テレビ局からは番組の差し替えを提案されていたそうです。

 紆余曲折あって放送中止は何とか回避されましたが、テレビ局と脚本陣からは本郷猛の死亡案や役者の交代など、藤岡さんが二度と『仮面ライダー』に戻ってこられないような提案がなされました。

 しかし、平山さんはこの意見に真っ向から反対します。それは「主人公を殺すことで子供たちの夢を奪ってしまう」、そして「藤岡さんが戻ってこれなくなる」という理由からでした。

 そこで、まったく別な主人公である一文字隼人、すなわちもうひとりの仮面ライダーを登場させるというアイディアを導き出します。実はこのアイディアには前例がありました。平山さんが初めてテレビプロデューサーを務めた『悪魔くん』です。

『悪魔くん』も、番組途中で初代メフィスト役の吉田義夫さんの体調が悪くなって、弟のメフィスト役の潮健児さんと交代しました。後に、吉田さんのメフィスト兄と潮さんのメフィスト弟が共演するエピソードが『悪魔くん』の中で描かれています。

 こうして、新しい仮面ライダーとなる一文字隼人が誕生しました。演じるのは劇団で藤岡さんと同期だった佐々木剛さん。佐々木さんは当初、「同期の藤岡から役を奪うことはできない」と断りますが、藤岡さんが帰ってくる場所を守ってほしいと説得され、藤岡さんが戻るまでの代役なら引き受けると、出演を承諾します。

■主役交代というピンチを「路線変更」というチャンスに

藤岡弘、さん復帰後のダブルライダーの活躍に、子供たちは歓喜した。画像は「仮面ライダー VOL.16」DVD(東映ビデオ)

 新しい仮面ライダーの登場に合わせて、番組はこれまでの課題となっていた問題点を一気に改めました。

 夜間撮影で暗闇にまぎれてしまうことから、仮面ライダーの配色をより明るいものにします。実は本郷ライダーの時点から考えられていましたが、偶然にも一文字ライダーの登場に合わせる形になりました。これにより、後に1号と2号のダブルライダーが並んだ際に、デザインは一緒でも色で区別がつくことになります。

 ドラマ部分も重厚で暗いイメージのあった作品を明るくするため、改造人間の悲哀さを前面に出した本郷猛から、一文字隼人はユーモラスでヒーロー性のあるキャラクターに変更しました。

 また、ライダーガールズという女性陣レギュラー、さらに当初はシリアスなドラマ作りを目指すことから登場を見送られていた子役を起用します。

 大きな変更点は、バイクに乗ってその風圧の力で変身するのではなく、「変身」と掛け声を上げて見得を切る変身ポーズでした。それまで見得を切った変身ポーズというものはなく、その目新しさから子供たちは変身ポーズを覚え、「変身ブーム」という社会現象になります。

 この変身ポーズは以前から考えられていましたが、佐々木さんがバイク免許を持っていなかったことから正式に採用となりました。これ以降の作品では、ヒーローの変身ポーズは当たり前のものとなっていきます。

 ケガによる主役交代というピンチに直面した『仮面ライダー』は、それを逆手にとって作品イメージを一新するというチャンスに変えました。その結果、視聴率は上昇し、子供からの圧倒的な支持を得ることに成功します。その人気急上昇という功績により、番組は2クール以降の延長も決定され、4クール目開始時の元旦放送という晴れ舞台に、藤岡さんの復帰を迎えることができました。

 4クール目は藤岡さんのリハビリもかねて、佐々木さん主役のまま「ダブルライダー編」という展開が何度か製作されます。当然、子供たちはふたりの仮面ライダーに大喜びし、その人気にスタッフからは5クール目以降は、主役ふたりによる本格的な「ダブルライダー編」が検討されました。

 しかし、この申し出に佐々木さんは「藤岡の復帰までという約束」だと、番組に残ることをかたくなに拒否したそうです。そして、5クール目以降は藤岡さんによる本郷猛主役の「新1号編」が始まりました。もちろん、佐々木さんの一文字隼人もたびたび登場し、予告もなく現れる神出鬼没な新2号ライダーを見て、当時の子供たちはダブルライダーの活躍に酔いしれます。

 最近のライダーシリーズでは、当たり前のように何人もの仮面ライダーが出ていますが、仮面ライダー2号がいなければそのような発想もなく、シリーズも今まで続くこともなかったかもしれません。逆に、複数の仮面ライダーがレギュラーとして登場する可能性は、最初のシリーズからあったわけです。

 歴史にIFはつきものですが、1号と2号が常に活躍する「ダブルライダーシリーズ」を当時の子供としては見たかった。筆者はそう思うことがあります。みなさんはどうでしょうか?

(加々美利治)

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